「天竺熱風録」2021/08/13 15:39

田中芳樹という作家、なんだかんだ言ってアルスラーンもドラゴン兄弟のシリーズも完結させ(最後まで読んでないけど)、その一方でライフワークの中華歴史ものも、派手さはなくとも十分評価されるべき仕事ぶり、凄いなあって思います。
かの有名な三蔵法師もちょっとだけ出演するけど、主人公は中国史でもほぼ無名の文官・王玄策。一外交員だったはずの彼が、二度目の天竺行が王様死去による政情変化のタイミングに重なってしまったがために、チベットやネパールの軍隊を率いて(借りて)戦闘の采配をすることになってしまう。他の国の歴史ものと比べて特徴的なのが、インドでの冒険は象(強大)と牛(神聖)の存在が欠かせないことでしょう。
彼が寡兵を以てインドの大軍を打ち破るのが見所で、この作者らしいお茶目でトボケたキャラクターも登場しますが、どちらかというと、当時のアジアの社会的文化的背景を披露することに力が入っている気もします。
巻末の年表をみれば、日本ではちょうど大化の改新あたり。七世紀は大陸でも列島でも社会がダイナミックに変化していく時期だったのです。