「茜色に焼かれる」2021/07/11 21:45

映画の後、お昼に喫茶店でカレーを食べる。尾野真千子演じるヒロイン・田中良子が、コロナで経営していたカフェを閉店させたって設定で。

石井裕也監督のオリジナル脚本で、自粛の嵐吹き荒れる20年に撮影した嵐のような逆境映画。スマートな作品ではないし、希望とか清々しさとかも感じられませんでした。ポスターでは美しい夕暮れのシーンが、スクリーンで観ると嘘っぽくて、美しいのはヴァーチャルだけだと言わんばかり。
登場人物の一人(風俗)が、「ナメられてる」と繰り返す。そうだ、男たちは立場の弱い女をナメている。政治家たちは日本国民をナメている、IOCや欧米は日本やアジアをナメている。ないがしろに扱われる屈辱の現実を、田中良子は薄ら笑いで受け止める。受け止めきれなくなったとき、凶暴に爆発する。
昨年観た「MOTHER」も異様な母親と息子との絆の物語でしたが、今回のヒロインは、逆の方向にエキセントリックでした。信念に純粋で頑なすぎてみんなから「理解できない」と言われちゃう。自分のルールを貫いて負担を背負う。不本意だけど○○だから仕方がない……ああ、コロナの社会っぽい。彼女の繰り返す「がんばりましょう」が、虚しすぎる。
たった一つ残された灯は、息子が将来楽しみないい男であること。読書家中学生(設定)とは思えないスタイリッシュな身のこなしを見せてくれた和田庵くんは今後も俳優業(スケボーも)がんばって活躍ほしい。