「ひらいて」2021/12/26 23:03

わたしのモノになってよ。
先週は、夢に向かって苦しみながらもがんばる高校生たちの物語に感動して。
今週は、がんじがらめになって迷走暴走三角関係な高校生たち。
綿矢りさの小説はたびたび映画化されていて、テーマ的には興味深く感じるのだけど、タイミングが合わないのと視覚的には地味なイメージで、これまで観に行くことはありませんでした。
今回の作品は、ハイスペック美少女の分かり易い闇落ちビジュアル変化とか、夜の校舎の高さとか、華やかで軽い折り紙展示とか、女子高生同士のベッドシーンとか、映像的な気合の入れドコロあり。首藤凛監督は、まさに高校生の頃、原作に出会って感銘を受けたという。
ヒロインの愛ちゃんは、優等生で可愛くてコミュニケーション能力も高くて、しかしその感じの良さは、打算的な仮面。遠方に住む父親相手には、お義理でも気の利いた言葉なんて出てこない。彼女の行動を一つずつ具体的に並べていくと、かなり痛々しい。それでも完全に突き放して見られないのは、彼女が美少女だからというだけではないでしょう。
三角関係の残りの二辺は、愛ちゃんとは別の意味で、一歩引いた、閉じた立ち位置で世界と対峙する。持病やモラハラ親に縛られる二人と、おのれの渇望に突き動かされるままなりふり構わぬ愛ちゃん。ピュアと、エゴ。静と動。どこまでも相容れない、踏み込めない。しかし、それらがぶつかり合うことで、化学反応が起こります。
そうして、閉じていた何かが、ひらかれるのです。