「紺碧の果てを見よ」2023/10/14 22:45

「どこか行ったら厭だよ」
「行くもんか」
須賀しのぶが描く、日本近現代史青春ストーリー。
「君たちはどう生きるか」も含め、三作続けて、日本の戦時中が舞台の物語です。
始まりは、今から100年前、暑い夏、関東大震災。混乱の中、一度は家族を守ろうと決めたのに、鷹志少年は軍人になるために親戚の家に養子に。
彼はまっすぐな男の子で、みんなを守る人間になりたいという気持ちは本物なのですが、その後の歴史を知る読者の立場としては、まったく、複雑な思いです。兵学校に行かずとも、若く健康な男子が戦場に送られるのは変わらないのでしょうが。
戦闘描写は、なじみの薄い用語が多くて、なかなか難しい。
ただ、戦争のお話である以上に、これは、妹萌えの世界でした。もしくは、兄貴萌え。それに激しく心を掴まれてしまったのが、兄貴の兵学校時代の友人。
芸術家肌で、孤独で、一途な妹、雪子。
物語が進むにつれ、願わずにはいられない。「終戦まであと少し、なんとか生き延びて、妹の元へ帰ってあげて!」
離れていても、紺碧の海を通してつながっている。守られているのは、鷹志の方だったのかもしれません。