「木」2024/03/16 22:17

年末に観た「PERFECT DAYS」で読書と樹木好きの主人公が読んでいたのが本書。以前、小川洋子のラジオ番組でも紹介されていた。71年から84年にかけて「學鐙」に掲載されたエッセイ、新潮社。
著者の幸田文が木に心を寄せるようになったのは、父親の露伴の教育による。自然と、生命に親しむ形の情操教育。その心根は財産だと言い切れるって、素敵だ。
木に対する敬意故に、お目当ての木に会いに、エゾマツの森や世界遺産登録以前の屋久島まで出向いていく。
生命として。
木材として。
ふたつの見方がある。なんとなく人間の、私人としての在り方と、職業人としての在り方、のような感じがする。
エッセイは、「えぞ松の更新」「藤」など最初の方の作品が神秘的な情緒と哲学があって印象的。他には、「灰」で火山灰の被害にあって死んでいく木々の描写が大変痛ましい。
もの言わぬ、でも美しく密やかに日々を生きる彼らが、とても愛おしい。

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