「ハンチバック」2023/12/03 21:42

導入部は苦手、最後の締めも唐突で置いてきぼり感が残る。
でも、本筋はとても面白かった。
社会学からネットエロ小説まで語れるインテリ系重度障害者。親から受け継いだ莫大な財産も信頼できるヘルパーさんもいる。充足しているようで、でも介助無しでお風呂には入れないしちょっとしたアクシデントでも死にかける。
主人公・釈華の表の顔は温和で善良な障害者、裏の本音は捻れて屈折して知識人っぽい難しい単語を使いたがる皮肉屋。
不平不満愚痴が中心、とも言えるだろうか。共感は薄い、でも不快感も薄い。
彼女の言葉に説得力とエネルギー、そしてユーモアも漂う。力強い弱者だ。
著者の市川沙央さんは私と同年代の中年女性。かつてコバルトを愛読していた読書好きの少女だったと思うと、なんとなく、趣味の方向性が理解できる気もする。