「のぼうの城」2012/12/08 21:36

 映画の帰りにギョーザ屋へ行くと、偶然、萬斎ファンの御嬢さんと隣席に。

 男たちが戦うことを決意し、愛刀を左側から右側へ持ちかえていく。圧倒的大軍の前に降伏ムードで暗かったのが、一転してテンションが高まっていく。
 そんな昂揚感に騙されそうになるが、実はこの戦、勝った方も負けた方も犠牲は大きく得るものは少なかったと思う。田圃は水没、お城もメチャメチャ、お姫さまも……
 エンタテイメント色の強い映画ですが、死の冷たさもモチロン描かれます。
 だからこそ、エンドロールがよかった。現在の忍城跡、かつて戦のあった土地が、長閑な田園風景となっている風景。ここから三成たちは城を眺めていたのか、なんて、現代につながる歴史情緒をも感じさせて。

 ベストセラー小説を映画化、というのは良くある話ですが、映画化するために脚本を小説化、ベストセラーになってしまう。メディアミックス万歳です。
 主役ののぼう様、野村萬斎がハマりすぎでした。あのカエルの陣羽織と兜。言動が不審人物チックでぶっちゃけ「バカ殿」とイメージがかぶります。そして超イキイキと田楽を踊る姿。
 ものすごく存在感のあるキャラクターの傍らで、一歩もヒケを取らず、騎馬武者の格好よさを示したのが佐藤浩市でした。序盤、城下を馬で疾駆するする姿の凛々しさに目を奪われます。
 のぼう様の幼馴染役である彼は、でくのぼうと呼ばれる男を「しようのない奴」と呆れているのですが、しかし、のぼう様の決定や行動や存在感によって、事態がすすすっと好転していく様に驚きの表情を見せてくれるわけです。
 男勝りのお姫様や「相棒」のカイト君とキャラのかぶる酒巻なんかは、時代劇っていうより漫画チックでしたね。
 登場人物の描き分けが上手い作品です。敵方もしかりで、石田三成なんてのぼう様とは別の意味で「バカ殿」でした。お目付け役の大谷君が「ダメだよ、止めとけ」と言ってくれていること全部やっちゃう。アホの子です。秀吉の真似をしたいばっかりに小勢の城相手に水攻めなんて大がかりなことを始めて。やがて大谷君も「しゃあないなあ勝手にしろよ」てな感じになります。
 しまいには「自分には軍才がない」と認めながら「でも大戦を指揮したい」などとはた迷惑なことをのたまい、実際、後に関ヶ原で大軍率いて木端微塵に負けちゃうわけです。学習しろよ。アホやなあ、でもなんか憎めない。
 ホンマに、彼らは一体何のために戦ったのか。
 損得を算盤勘定して、割り切りたくなかった。
 ただ、力を尽くして戦うために戦った。男のロマンってことなんでしょう。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://mimikaki.asablo.jp/blog/2012/12/08/6654995/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。