「親指さがし」2013/09/01 09:33

 夏の終わりに、軽く読めるホラー小説を、と思ったのですが。
 本気で軽かった!
 なんというか。状況的には怖いハズなのに、描写が全然こわくない。
 お話の展開がさらっとして、なおかつリアリティーがない。
 苦いばっかりで救いのない読後感。
 本当に、これ若者に多くの支持を得ている作家さんなんだろうか・・・・・
 バラバラ殺人の被害者の失われた親指を、子供たちが幽体離脱!して探しに行くゲーム。
そこから、帰ってこられなくなってしまった少女。それから7年後に、惨劇の幕が開く・・・・
 なんか、粗探しみたいな感想になってしまいますが、致命的なのは、クライマックスシーンで幽霊がベラベラ喋るところかなあ、やっぱり。

「コードギアス 亡国のアキト」2013/09/03 01:21

 このシリーズって、なんか呼称名称に仰々しさが付き物なんですが、それにしてもサブタイトルにある「翼竜」の意味が全然不明です。舞い降りるって言われても、空中戦なんてなかったもん。
 人気TVアニメシリーズと世界観を同じくして、でも登場人物や舞台は全然違う劇場版作品。
欧州における共和国と帝国との争いなのに、なんだって日本人の少年たちが戦うのか謎でしたが、帝国に負けて国を失った日本人たちは「イレブン」と呼ばれてナチス政権下のユダヤ人のごとく差別の対象にされ、しかも戦争の捨て駒扱いされていたのでした。
私利私欲優先の無責任な共和政治と。
特権階級ゆえの誇り高さを持つ貴族社会と。
国を失い居場所を失くし寄る辺を失くした日本人。
一時間足らずの「第一章」で、まだほんの導入部。
それにしても、主人公のアキト少年が、何考えて戦っているのかさっぱり説明なくて、ちょっと、感情移入しにくいんですよね。彼だけではなくて、全体的に嫌な発言する人物が多くて、なんか、暗い。
そのかわり、もう一人の主人公である貴族の女の子は、その立場についての説明もあり、考え方もきっぱりしています。まっすぐな性格で、彼女だけが好感を持てる存在です。
そんなレイラちゃんを演じる、坂本真綾の歌。エンディング曲が、切なくてステキ。

18U野球ワールドカップ2013、決勝2013/09/08 23:32

 高校生の野球ワールドカップを、ナイターでやって、日曜日のゴールデンタイムに地上波で放送してくれるなんて!(それも、バレーの日韓戦の裏で!)
 監督インタビューは尻切れになってしまいましたが、ちゃんと試合終了まで放送延長してくれましたし。
 いい時代になったもんです。私的には、五輪開催地決定よりもよほど重要事項でした。
 残念ながら、準優勝に終わってしまいましたが。
 好ゲーム、だったんじゃないでしょうか。
 両チーム本塁打0、投手戦で、地味といえば地味でしたが、緊張感はありました。
 米国も、先発投手にいい選手を起用してきましたし、緻密でコンパクトな、ニッポンの「野球」のお株を奪うような、上手さがありました。
 前半は、日本優勢でした。22.奪三振で昨年盛り上がった松井が、アメリカの打者相手でも三振を量産していきましたし、好守備もあり、先制点も奪った。
 しかし、日本、連打が出ませんでした。中盤に松井が捕まりだしてからは、米国ペース。八回に一点差まで追い上げたんですが。結局、3-2。
 試合後、主将の森友哉の泣く姿がありました。今チームでただ一人、昨年もこの大会で米国戦を戦い、本塁で吹っ飛ばされ、敗戦を経験した。
 決勝の相手が因縁のチーム、ってシチュエーション、燃えますよね。
 まあ、ぶっちゃけ、この試合の敗因は、二度の好機で打てなかった彼にあるようにも見えました。主将として、中軸打者として、昨年の悔しさを味わった者として、森君が納得できるような活躍が観られなかったことが、残念。

第8回大阪クラシック―クラシック、タンゴ、ジャズ2013/09/09 00:05

 毎年、大阪クラシックは「残暑との戦い」みたいなところがあるのですが、一週遅らせて始まった今年は、涼しくなった代わりに秋雨前線に捕まりました。
 
第二公演 12:00~  大阪富国生命ビル フコク生命の森
 雑踏のすぐわきでの演奏は、「街にあふれる音楽」というテーマには合っているのですが、やっぱり、座席無しで直に床に座るのはお尻が痛いなあ。最前列に陣取って座るより、後方で立ち見の方がまだ楽だったかもしれません。
 早朝からオープニング公演の整理券を並ぶことも考えたのですが、野津さんのフルートの方を取りました。今回は、19年大フィルで共に演奏してきたオーボエ・浅川さんとデュオ。
 テレマン:無伴奏二つのフルートのための無伴奏ソナタ 第3番ニ長調
 ヒナステラ:フルートとオーボエのための二重奏曲

 オーボエの音色も、生で聴くととっても素敵です。テレマンはバッハと同時代の人で、今年は6月に日本テレマン協会の演奏も聴いたのですが、端正でありながらあんまり堅苦しくない感じが好きです。
 アンコールは「魔笛」より、夜の女王のアリア。

第6公演 14:00~  中央公会堂中集会室
 まったくの偶然ですが、今朝ブエノスアイレスにて、東京五輪開催が決まりました(目出度いですが、今日のニュースそればっかりって、どうなんでしょう・・・・)。
ピアソラ:ブエノスアイレスの春 
ブエノスアイレスの夏
オブリビオン

 昨年「秋」「冬」を聴いて、とても良かったのですよね、情熱的で。アルゼンチンの、タンゴを取り入れた曲。有料公演でしたが、当日券買っちゃいました。
 チェロの近藤さんのピアソラ・ソロコンサートの方は、今年もチケット完売だそうですが、大フィルコンマスの田野倉さんとの、レベルの高い演奏を聴けて、満足です。
 アンコール「サマー トライアングル」はピアノの永野沙織さんの作曲を世界初公演。美しいメロディー。あまりにも拍手が鳴りやまず、マエストロ(今年の大植さんの御衣裳は、つぎはぎ模様のジャケット)が「来年はこの曲をオーケストラでやります」・・・・・サービス精神満点すぎます。

第10公演 16:30~  大阪市役所 正面玄関ホール
ボリング:フルートとジャズピアノトリオのための組曲 より
 哀愁を帯びた端正なフルートのメロディーと、軽快なジャズメロディーが組み合わされる。
 普段クラシックを演奏している方々による、ジャズ。パーカッションの中村さんはティンパニをドラムに変え、コントラバスの新さんはピチカートだらけの演奏で指の皮をめくりめくり練習したそうですが。
 彼らの奏でる低音が、フルートとピアノの裏側で心地よいリズムを刻みます。ジャズの生演奏も、イイなあ。

第8回大阪クラシック―チェロアンサンブル2013/09/13 23:54

 演奏後にマエストロ・大植がサインと写真撮影の輪ができるのは、もうお馴染みの光景ですが、近藤さんもサインの列が増えてきたなあ。

第86公演  大フィル チェロアンサンブル
 テレマン:四本のヴァイオリンのための協奏曲
 フォーレ:夢のあとに
 クランゲル:賛歌
 アンコール・・・・・G線上のアリア

 グランフロント大阪北館。脇を通り過ぎるだけだったそこに、初めて入りました。仕事帰りで、それでも25分前には到着したのですが、予想通り座席はなし。
 どうせ立ち見なら、と思って、二階に上がって聴こうとしたのですが。
 失敗でした。
 広大な吹き抜け空間には、各階からの物音がモロ届いてきます。雑踏ならマシなのです。しかし、ピンピン言う電子音によるアナウンスやメロディーは、どうしても耳につきます。
 チェロ8本による演奏って、結構な音量があると思うんですが。
 集中できませんでした。楽しみにしていたのに。
 オフィスビルでの公演はこんなことなかったのに、商業ビルは、クラシック演奏には全然向かないと思いました。
 せめて一階で、近くで聴く体制を整えるべきでした。

第8回大阪クラシック―切ない音色2013/09/15 01:07

 完売になる前に、最終公演のチケットを予約しておけば良かったかなあ。今年から、最終公演は壮絶な整理券争奪戦(早起き争い。もう、私にはとても太刀打ちできない)を廃して、有料公演になっていたのでした。

第87公演 11:00~  大阪市役所正面玄関ホール
 ポッパー:マズルカ ニ短調
 クレンゲル:二つのチェロとピアノのための小品
 ロッシーニ:「老年のいたずら」よりウネラルメ

 昨日期待外れだった、チェロのリベンジ。石田聖子さんカワイイです。ベテランの織田さんと、チェロ二本に、ピアノ演奏。
 クレンゲルさんって昨日も取り上げられていましたが、今年没後何周年かの記念イヤーなんだそうです。でもなんかスローな曲で、ちょっと眠たい。
 ウネラルメは「涙」という意味なんだそうですが、決して湿っぽい涙じゃないあたりが、明るい天才肌のロッシーニらしいです。

第90公演 12:30~ 中央公会堂大集会室
 カメラを構える人は多いけど、信号や道路標識が邪魔で、なかなかイイ写真が難しい中央公会堂。その大集会室は、コンサートホールとしては今一つ音が響かない感じなのですが。
 しかし、当日券の列に並び、千円支払った価値は十分ありました。
 サン=サーンスの「動物の謝肉祭」動物をテーマにした小曲14編あるのですが、演出と皮肉を楽しむ作品です。
 「象」ではコントラバスがソロで主旋律を奏で、「森の奥に住むカッコウ」ではクラリネットが観客席を歩き回りながらひたすら「カッコウ(ポソッと)」と繰り返し、「耳の長い登場人物」(何者?)では大フィルコンマスが二人そろって謎の戦い(?)を繰り広げ、「ピアニスト」(動物?)では、いわばスマップのリーダーの歌唱力のような腕前でもってピアノ経験者にはお馴染みの練習曲を二重奏する趣向です。
 近藤さんの解説を交えながら、笑って鑑賞する舞台。その近藤さんの「白鳥」。大阪クラシックではお馴染みの曲ですが、さすがの、美しさでした。

第93公演 14:00~ 京阪電車なにわ橋駅アートエリアB1
ロッシーニ:弦楽のためのソナタ第一番&二番
 本日の本命で、明るい曲。残念ながら立ち見でしたが、アンコールのウィリアム・テル序曲もノリノリで、しかも大植指揮付と、二本立て。
 今年はテルマンやロッシーニが多いですが、やっぱり記念イヤーなんでしょうか。
 中央公会堂に引き続き、チェロの近藤さんにコンバスの新さん。それにヴァイオリンの田中さんに三瀬さんの、おなじみの四人。
 弦楽ソナタなのに、なぜヴィオラが無いのか。
 その点について、なぜかまったく別の説が述べられました。
 プログラムを見ると、この日は、同じ弦楽ソナタ2番をセンチュリーのメンバーでも演奏することになっていて、しかもこれはヴィオラ有りです。
 ものすごく気になったのですが、時間の都合で断念しました。

第96公演 15:30~ 中之島ダイビル
 シューマン:弦楽四重奏曲 第二番へ長調
 この時点で私はまだ昼食を取っておらず、堅い床の上に直座りの会場で、けっこう疲れていました。もったいないことした自分。
 何かお腹に入れるべきだったか。それでもかえって、眠たくなるかもしれません。
 ヴァイオリンの男の子がエラク若くて可愛らしいかったのが印象的。

17:30~ 
 肥後橋のコンビニで軽食をとってから、再び大阪市役所へ。
 ここの玄関ホールは音が響きすぎてちょっと籠ったようになるのですが、「バロック音楽が教会で演奏されていた当時の状況」と言われてみれば、なんかいい感じに思えてきます。
 恒例の野津さんのフルートソロ。センチュリーのロッシーニを諦めたのは、ちゃんと早く並んで座って聴きたかったからです。立ち見が続くとしんどくて。年ですね。
 野津さんも、なんかシンドイのかなあ。初日の時も思いましたが、シャベリが年々聞き取りにくくなってきているようです。大植さんを笑えないですよ。
 C.P.Eバッハ。そしてJ.Sバッハの無伴奏チェロと、これもお馴染みになってきました。
 チェロ組曲をフルートで演るのでブレスに違和感があるのですが、それもやがて気にならなくなる。アンコールの「アルルの女」を、観客席を歩きながら演奏するのも恒例。
 祭りの終わりは、美しくて切ない調べでした。

「魔法少女 まどか☆マギカ The Biginning Story」2013/09/16 17:03

 TVアニメ30分の脚本って、こんなに短いんですね。
 2011年に話題になった名作アニメの脚本集。キャラクターのカラーに、脚本家と監督との対談もついていますが、自分の目当ては、TV放送前の0稿。原案が作品として世に出るまでに、どのように変わっていくのかに、興味があったのですが。
 ほとんど、変わってないんです。
 脚本家の中に最初っからいい感じで出来上がっていて、それをみんなで形にしていったのですね。
 なので、ちょっと期待外れでした。
 でも、改めてシナリオを読み返すと、やっぱり上手くできているって思いました。
 ストーリーの運び方、演出の巧み、各キャラクターの立ち位置の明確さ。
 それに、可愛らしい絵柄や独特の戦闘シーン、勢いも合わさって。
 完成度、高い作品。

「あの女」2013/09/22 16:19

 舞台は大阪―三宮が中心で、時代は1994年から1995年初頭。
 当然、1・17に向けて物語は動いていくのですが、その辺は、ついでみたいな感じがしました。主人公のツキのなさをイメージさせるくらいの意味しかないっていうか。蛇足な感じすらしました。
 初版の発刊日からして、3・11の影響もあんまりないと思われます。
 メインは、今新しくオシャレに生まれ変わりつつある阿倍野・天王寺・新世界界隈。
 の、すぐ傍にある暗い闇、釜ヶ崎。
 社会派作家としての道を歩みつつある森絵都が、行き場の無い弱い者たちのギリギリの生き方を描く。
 この日本におけるスラム。住む家もなく凍死者が出るのが珍しくも無い影の世界について、良く調べて取材されたことと思います。とても興味深かったです。
 ただ、お話自体は、あんまり面白くない。
 まだ若いのになぜか釜ヶ崎で生活している男が、ある金持ちに依頼されて彼の妻を主人公とした小説を書くことになる。
 という発端もなんかしっくりこないし、そして「この女」が、私個人的に、あんまり好きになれませんでした。独特の存在感で、男たちを虜にし翻弄する。その自由奔放さ・価値観は、彼女の辿ってきた特異な人生によって築き上げられたモノだってことも、やがて分かってくるのですが。
 これに、財政界の裏側での策謀、なんかが絡んでくると、もう、リアリティがどこかに飛んでしまう。
 ハードボイルド路線では、この作家の良さは出ないのでしょう。あくまでも、一般小市民の目線によって、世界の光と影を描いていってほしかったです。

「大統領の料理人」2013/09/30 09:36

残念なことに、歌うように流麗なフランス語でレシピを唱えれれているのを聴いていると、眠たくなってきてしまいます。
もっと、小気味の良い映画化と思っていました。
主演のカトリーヌ・フロのチャーミングな笑顔に騙されてしまいそうですが、結構、しょっぱいお話だと思います。
男社会のフランス料理界で、エリゼ宮でミッテラン大統領のプライベートキッチンを預かる身となったヒロイン。オルタンスは素材の味を生かした素朴な家庭料理で大統領の心をつかんでいくのですが。
しかし、ニッポンの料理漫画のような華々しい展開にはなりませんでした。
熱心に、自分の最高の仕事をしようとするオルタンスですが、制約の多いエリゼ宮で、ストレスがたまっていきます。気苦労が多く、報われることの少ない職場。
過酷な環境でこそ、やりがいがある。なんて大統領は言っていましたが。
結局、二年で、彼女はエリゼ宮から去っていきます。
で、その後の再就職先が、「南極料理人」!
同じ男ばかりの職場でも、エリゼ宮よりもっと過酷なイメージです。しかしそこでのオルタンスはイキイキした表情で、基地の男たちからはオフクロさんって感じで慕われています。
むしろそっちの方をメインに描いた方が面白かったんじゃないかと思うんですが。
でも、描かれていなくても、なんとなく、分かります。
彼女は持ち前の明るさと、熱心さと、美味しい料理で、自分の居場所を確立していったんだろうなあ。