「万引き家族」2018/07/15 18:07

Shoplifter
是枝監督の作品は何本か観たことあるけど、自分の中では、「誰も知らない」を越えるものが出ない。
タイトルで損しているというか、まるで万引きをメインにしているような印象。この言葉を拡大解釈するとすれば、彼らが万引きした最大の獲物は「心地よい裏街道人生」。
家族と言う群像劇ですが、いろんな要素を詰め込んでいて、でも一つ一つの要素はどこかで観たような聞いたような。年寄の年金頼みの貧困世帯とか、疑似家族とか、風俗嬢と客がちょっと純愛しているとか、虐待する肉親と普通ではないけど温かい庇護者。 
万引き家族たちは虐待された女の子に愛情を注いで救うのだけど、皆がもう一つの名を持ち後ろ暗く生きている中にいて、彼女にどんな未来があるだろうか。
その矛盾に気づいて、現状を打破したのが祥太くん11才。真の主演男優はリリー・フランキーじゃなくて城桧吏君だよなー。ここが、この作品中で最もドラマチックであり、同時に最もファンタジックと言うか。
周りの大人たちが当り前のように万引き生活していて、それで楽しくやれていたら、それを当り前に思う大人になっていってもおかしくない。駄菓子屋の親父にちょっと諭されたくらいでちゃんと考える、彼のマトモさは奇跡。 
祥太くんは、学校には行ってないけど本をよく読むという設定でした。
皆がもう一つの名を持ち後ろ暗く生きている中(インターネットとか?)だからといって、それを偽りと言い切れるだろうか、愛や真実はないのか。
最後に、祥太くんか、りんちゃんかが、「お父さん」「お母さん」と呼ぶのだろうと思って観ていた。
しかしそれはなかった。
母親になれなかった安藤サクラや父親になれなかったリリー・フランキーは色々しゃべるのに、無言でリアルを見つめる子供たち。そのまなざしが、是枝監督上手いなーと思わせる。