「細雪」2016/02/21 22:20

谷崎没後50年だった昨年中に読むつもりが、文庫本で上中下巻思ったより長くてお正月休みもナンダカンダで読めなくって時間がかかってしまいました。
鶴子:子だくさんお母さん
幸子:華やかで感情的奥さん
雪子:めんどくさい系内弁慶お嬢さん
妙子:活動的で強か不良娘
の、4姉妹物語で、主に次女の幸子さんの視点で描かれますが、物語の主な内容は雪子(たぶん、この子の名がタイトルの由来なのでしょう)さんが何度もお見合いしては縁談がまとまらないのと、妙子さんのトラブルメーカーっぷりです。
時代は昭和10年代、戦局が徐々に厳しくなっていくのですが、空襲とか、決定的に日本が痛めつけられる辺りには入らず、物語は終わってしまいます。大阪の元・名家のお嬢さんたちの、歌舞伎やら花見やら蛍狩りやら華やかな生活。そういうのを谷崎は描きたかったのですからしょうがないんですが、それでも、この後彼女たちがどういう運命をたどるのか、こんなに長い小説なにに最後のページまで来て、まだまだこの続きが読みたくなってきます。
京阪神至上主義っていうか、その他の土地は結構コテンパンに田舎扱いです(姉妹たちとは水が合わないってことですが)。関西人にはなじみの地名がたっぷり出てくるのが何か楽しいです。
女たちの良くも悪くも「華やか」な生活っぷりの中で、異彩を放つのが神戸の水害描写でした。谷崎自身は大した被害体験ではなかったそうですが、しかし記録文学のように具体的でリアルな描かれかたで、非常に興味深かったです。東日本大震災関連の文学作品も結構ありますが、どっちかというとフワフワふぁんたじっくな書き方で、リアル災害描写なイメージ内から。
それから、幸子さんの亭主が異様に頼りになるのが印象的でした。妻(とその姉妹)を思いやり、あらゆる局面で冷静で的確な判断を下し行動する。彼の甲斐性と頼もしさがあってこそ、谷崎は、何かと面倒事の多い姉妹たちを安定してはしゃがせていられるんだよなあ。