「東南角部屋二階の女」2011/04/22 00:22

 簡単に会社辞めた人に、涼しい顔で「分かる」なんて言われたくないんだよ

 結構前のTVの深夜放送なんですが、学校始まってから毎日眠くって、なかなか録画見られません。
気になっていたんだけど、見逃してしまった2008年の映画。
 ものすごく地味なのに、目が離せない画面。
スローリーな静止画面は、カメラ・アイっていうか、人の視線を感じさせます。登場人物が何かを見つめている。その視線の先にあるものは、何気ないようでいて、でも全ての要素が意味を持ってぴたりと収まっているように見えます。
 中心になる人物は三人。
 下請け会社に取引中止を告げるのが心苦しくって、恋人に相談もせず深い考えも無く、親会社を辞めてしまった原人オタクの男。
 成人式に購入して以来の振袖を「もったいないから」と着て行って、見合いサークルで知り合った相手に「結婚したいわけじゃないけど安定したい」と本音言っちゃう三十路近い女。
 父親が作った借金を返すために祖父の持つ土地を売りたいんだけど、でもその土地に立つ古アパートを壊してしまうのは忍びなくって悩む男。
 若い三人が同じ古アパートに集まるのですが、彼らと接する年配の方々の存在感も良かったです。回想シーンもなく、土地の持ち主であるジイサンなんて全然喋らなくって表情も乏しくって視線だけで演技してるんですが、それでも彼らの過ごしてきた人生の、喜怒哀楽を想起させる。
 現実にありそうな、もやもやした閉塞感。行き詰った感じは出ているんだけど、あんまり重たくはならず。
 そこにすうっと風が通るように、希望を感じさせるエンディングなんですが、ご都合主義な感じもない。
 甘いだけじゃなくて、わりとシビアな苛立ちも描かれているからなあ。