「英国王のスピーチ」2011/03/02 01:12

 The King’s Speech
 アカデミー作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞を取った話題作。
 賞を取る前から、観に行きたいと思っていました。評判も良いし、私自身も喋るの苦手で親近感があります。
 何年か前に、ヒトラーとその演説指導者との交流を描いた映画(これは、中途半端なコメディだった)がありましたが、ヒトラーの演説上手は有名。その演説映像が流れ、ドイツ語は分からなくても人を魅了し力強く引っ張る姿を示しました。
 それとは対照的だったのが、コリン・ファース演じるジョージ6世のスピーチ。彼の演説は、最後まで滑らかにはいきませんでした。しかし、たどたどしくとも、彼がめいっぱい頑張っている姿は感動的でした。一言一言を、一生懸命、誠意を持って国民に伝えようとしているからです。
 この映画のもう一つの見所が、吃音に悩む王子に協力するライオネル。もう、助演男優賞もついでに取って欲しかった、ジェフリー・ラッシュ演じるライオネルは、オーストラリア出身で、役者に憧れながら叶わず、正式な言語聴覚士の資格も持っていない。そんな彼が、イギリスで最もロイヤルな人物相手に対等に接し、喧嘩したりしながらも、心を通わせて友人になっていくのです。
 彼のやり方は、発声やスピーチの技術だけでなく、カウンセラー的な手法。彼の前で、ジョージ6世の抑圧された人生がだんだんと見えてきます。
 厳格な父王にプレッシャーをかけられ、兄貴はなんかチャラくって女のことしか考えてない(でも「王冠か恋か」できっぱり女を取ったエドワード8世ってアホだけど結構好き)し、そして世界はスターリンにヒトラーと、不穏な空気が満ちてきます。
 ストレスで一杯のジョージ6世は、ほとんどのシーンで険しく緊張した表情で、家族と接する時は笑顔を見せるのですが、幼い娘達を抱きしめようとして「パパ」ではなく「陛下」と呼ばれてお辞儀されてしまった時の、あの苦しそうな顔。
 王室の生まれも、国王の地位も、彼には重荷でした。それでも、根が真面目な彼は、なんとかして自分の責務を果たそうと、マイクの前に立つ。

「朝びらき丸 東の海へ」2011/03/05 16:57

 言わずと知れた超有名ファンタジーですが、原作も映画も第一作しか知らなくて、しかしこの間TVで映画の第二作を放送していたので観てみました。やっぱりファンタジーワールドすごいなあ、映画三作目も、ちゃんと3Dで観るべきか、どうしようか……
 とりあえず、原作の方を読んでみました。
 人間の子供達がナルニア世界にやってきて冒険するのですが、今回は、敵大ボスと派手に戦って勝利して大団円、ではありませんでした。船に乗って、行く先々の島で不思議なことに出くわしていく「ワンピース方式」です。
 だからイマイチ盛り上がらないというか、ラストはファンタジーというより幻想小説っぽかったです。
 ストーリー的には、捻くれ者のユースチスがドラゴンになって改心するあたりがクライマックスに思えるのですが、その時点で全体の三分の一あたり。そこから先は長く感じました。
「丸い世界には、とくにわくわくするようなことは、一つもありはしませんよ」
 摩訶不思議なナルニアに比べれば、子供達がやってきた人間世界はつまらないものに見えてしまいます。しかし、元の世界に帰っても、子供達はアスランに出会うことができると言われます。
 善良と正義の力の化身のようなこのライオンさんは、この航海で幾度も形を変えて現れ、みんなを助けてくれました。あんまりしょっちゅう出てきてくれるてもなんか有難味が薄れてきちゃうのですが。
 伝説的で偉大な存在が、でも実は案外と近くにいるんですよってことなんでしょうね。

「悲しいボーイフレンド」2011/03/06 14:10

 結局、「相棒2」は観に行かないままだったなあ。今期のTVシリーズは良作が多くて楽しめたんですが。

 初代相棒・薫ちゃんこと寺脇康文さんの主演映画。相棒を卒業した頃のもの。
 薬品メーカーの会社員、独身、趣味はお酒と一人カラオケな主人公が、謎の女子中学生に騙されて故郷の兵庫県まで行って、三宮デートしたり中学時代の彼女について喋らされたりする話。
 女子中学生は何者なのか、別れたモトカノとどんな関係があるのか。幻とか幽霊とかにしては、生生しさがあるんですけどねえ。
 主人公の猛烈に「いい人」なところは薫ちゃんを彷彿とさせます。どうせなら、全然別のタイプのキャラクターを演じてくれることを期待していたんですがね。
 しかし、中学時代は若くてアホだった。冷たく傷つけてしまったモトカノから「あなたは優しい人」と言われてしまうのは、確かに悲しいなあ。
 過去から逃げてしまった彼は、「いい人」なのに「本当に優しい人」には、なれなかったってことでしょうか。

合掌2011/03/07 08:49

 尾藤公・元監督のご冥福をお祈りいたします。

法治国家の議会政治2011/03/07 09:14

 中東において、市民パワーが独裁政権に立ち向かい、一部では既に勝利をおさめてしまっている今日この頃。
 だけど、こうした他国の社会の転換についてあんまり楽観的に見られないのは、理由はいろいろあるけど、でもやっぱり、我が国でも劇的な政権交代があったはずなのに返って政治が混乱しまくっているっていう皮肉な現実があるからだろうなあ。
 いい加減にしやがれよ、与党も野党もマスコミも。
 焼肉屋のおばちゃんによる年間数万の献金を「政治と金の問題」みたいに言うのは、あまりに狭量な話じゃないか、いつからこの国はそんなみみっちくなったのか。
 他に、もっと議論すべき問題が山ほどあるだろうに。
 そんなのが、大臣辞任にまで繋がるほどの重要事項だと思い込んでいるのは、勢力ゲームで頭一杯のセンセイ方か、センセーションを追いすぎて冷静で良識的な対応ができないマスコミくらいなもんです。
 前原さんも、正直、外交やらせるには血の気が多いんじゃないかと思っていたけど、でもこんなんで引き摺り下ろされるって、軽すぎやしないか、大臣の椅子。
 政治資金規正法ってやつも、真っ黒い企業献金には裏口開けといて善意の個人献金には厳しいって、どういうことなんだか。
 そもそも、在日外国人は政治献金ダメ、なんて知っていたのは、全有権者の1%にも満たないと思うんだけど。いい加減この国も、選挙権にしろ献金にしろ、もっと解放するべきだ。在日ったって、普通に国内で生活している人たちなんだから。
 中東では独裁政権に対して反旗が翻りましたが、我が国では、法治国家と議会政治に対しての不審がこれ以上ないほど高まってきていて嫌になる。

「心霊探偵八雲 赤い瞳は知っている」2011/03/08 10:54

「ぶつぶつ言っていないで、試しに飲んでみな。隠し味は塩酸だ」
 無愛想で口が悪いが頭の切れる心霊探偵に、明るくて真っ直ぐな心根の女子大生。
 ベタだ。でもツボな組み合わせ。普段はくーるに憎まれ口たたくくせに、彼女がピンチになると明らかに心配した様子をみせる八雲君。
 他のキャラクターも結構類型的で新鮮味は乏しいのですが、でも軸っていうか、狙いがブレずに安定しているので、だんだん馴染んでくる。
 先月深夜に、アニメ版がまとめて放送されていたのが結構面白くて、それからたまたま図書館で原作第一巻を見つけて借りてきた。
 2004年、文芸社。もともと2003年に「赤い隻眼」と題して刊行されたのが(ウケなかったため)、改題、加筆修正してリニューアルされたもの。
 第一巻には三話入っていて、そのうち一話はTVアニメにはならなかったもの。残りの二話も、アニメ版とは多少の変更点あり。
 挿絵のないライトノベル。簡素ですいすい読める、というか、こなれていない感じの文章。事件のネタが最初から分かっているせいもあるんでしょうが、これならTVアニメの方が面白かったかなあ。
 ぶっちゃけ、八雲君のヴィジュアルと声優さんたちの力が大きいのかも知れない。

「アレクサンドリア」2011/03/10 13:59

 消費税を上げると貧乏人が苦しむから、代わりに宗教法人に課税しましょう。
 って言ってくれる政治家に一票を投じたいのだけど。

 スペイン映画ですが、台詞は英語。キリスト教の国では上映しにくいんじゃなかろうか。
 ヒロインが研究者にして教育者、そして舞台はキリスト教徒が支配を強めていく4世紀のアレクサンドリア。
 なので、最近読んだ「天使と悪魔」みたいに、科学と宗教の対立がテーマなのかと思ったのですが、そんな感じではなく、「信仰を押し付けられるなんて嫌よ」が主人公のスタンス。
 レイチェル・ワイズ演じるヒュパティア先生のそういうところは共感できるのですが、でも、どうも、登場人物たちに感情移入しにくかった。理解できないわけではないのですが。
 女教師にメロメロな学生が公衆の面前で公開告白する感覚(ラテン民族ってそういうもの?)にまず置いてけぼりにされそうになり、それをお断りするにしたって、もう少し別な手段はなかったのかと(インパクトはあったし、実際にそういう逸話が残されているのだから何かしら意味があるのでしょうが)思わずにいられない。
 研究一途なヒュパティア先生は確かに立派なのですが、実生活を営むための強かさには欠けるというか、ぶっちゃけ、「形だけでも洗礼を受けとけば」と思ってしまう。何か浮世離れしていて、世の中が大変なことになっている時に、地動説を考えるのに夢中で、「そんなこと、どっちでもいいでしょう」と言う周囲の声の方に私は賛同してしまう。
 そんな中で、奴隷のダオス君の心情はとても分かりやすかったのですが、しかし、ヒロインを見る彼の目付きは、終始変質者っぽくて(失礼)気持ち悪かった。どんなに憧れてもヒュパティア先生からは「気の利いた奴隷」としか見てもらえないやるせなさから、キリスト教に興味を持っていく。彼の視線を通して、キリスト教がアレクサンドリアの知識階級からは胡散臭がられ(街頭演説する姿は、正真正銘怪しい信仰宗教団体でした)、低層階級の人々から支持を集めていく様子が伝わってきます。
 自分達を迫害しようとする学者達に反発して図書館(講義や研究を行う、大学みたいなもの)に詰め寄るキリスト教徒たちの姿は、どうしても、先月のエジプト民衆デモを連想させます。一方、キリスト教徒がこんなにも勢力を増していたことに焦る学者達の心境は、現状を甘く見ていたムバラク政権に通じるものがあったでしょう。
 しかしここから先は、21世紀の民衆デモと4世紀のキリスト教徒たちとははっきりと異なります。
 世界最大の知の殿堂、アレクサンドリア図書館で展開されるキリスト教徒たちの暴挙。彫像は破壊され、書物は燃やされる。古代都市アレクサンドリアのセットは本当に気合が入っていて、それまで随所に威風堂々たるヘレニズム文化の映像を見せてくれただけに、その破壊活動の野蛮さは際立ちます。
 歴史スペクタルとしては、そのシーンが最も派手で、そこをクライマックスに持ってきたほうが盛り上がったでしょうが、物語はまだまだ続き、たくさんの血が流れ、新興のキリスト教によって旧文化が駆逐されていく様を伝えていきます。
 映像はステキだったのだけど、どうも無力感というか敗北感というか、そういうものが強くてすっきりしない映画でした。

無理だ2011/03/12 07:54

 今年は無理だなあ。
 阪神大震災のときは一月やったし、被災地が開催地だったから「みなさんおこしやす」と言えたけど。
 無理だわ。今年のセンバツは。
 何もかも自粛しちゃうっていうのもよろしくは無いんだけど。

 今年は尋常でなく寒ブリが大漁だったという報道がありましたが、それも、大災害の前兆だったんでしょうか。
 自然の猛威には敵いませんね。
 昨日、3.11は昼からずっとTVの前で、今朝も六時には起きてしまう。
 映画じゃないんだ。どのチャンネルでも衝撃映像流れてるのですが。
 津波怖いよ。日本列島ホントに沈没するかと思った。見る見るうちに呑み込まれていく広大な畑。「そこの車、速く逃げてー」って思ったけど、「来た」と思ってから逃げても無理だわ、津波速いよ。家の中が水浸し、どころか、家屋そのものがドンブラ流されてる。
 気仙沼の大火災なんて、「空襲でもあったんですか!」ってくらい燃えてるし。
 広範囲の大地震に大津波に都市火災に工業地火災に原発の機能不全と、想定できる限りの困った事態が目白押し。
 なんて言ったらいいのか、まだまだ北国は冷えるでしょうし、被災地の方々にはお見舞い申し上げるというか、気を強く持って、なんとか生き延びてもらいたいものです。

電力2011/03/14 09:02

 西日本は東とは電気の周波数が違うはずですが、大阪でも節電意識した方が良いのでしょうか?
 壊れて音声の出にくくなった携帯ラジオを、久しぶりに引っ張り出す。
なんとかAM放送が繋がる。電池が無くても手回しレバーで充電できるヤツで、小さいけどライトもついています。携帯電話の充電も(すんごい一生懸命レバーを回し続ければ)できるはずだったんですが、昨年買い換えた今の機種では接続口が合いませんでした。

 TVに出演してはる原子力の専門家の方々って、「原発は安全です」って主張していた方が多いのでしょうか?なんか歯切れが悪くない?
 地震のパワー相手に人類の技術では抵抗しがたいことなんて分かりきったことでしたが、「それでも電力は要るもん」と見ないフリしてきて、でも、そろそろ現実を直視せにゃならんのでしょうね。
 今のところは幸い、人体に影響が出るほどの事態にはなっていないそうですが、それでも「原発で水素爆発ありました」って言われりゃ誰も穏やかではいられませんよ。
 官民あげて外国へ原発建設を売り込んでいましたが、もう買い手はつかない。自然エネルギー開発とかに方針転換した方がいいんじゃないかなあ。

海草とマスク?2011/03/15 09:20

 放射性物質・ヨウ素の影響(将来的に甲状腺がんになる)を防ぐには海草食べるといいらしい(?)……福島への支援物資は海苔ムスビ、昆布ムスビ、それと体内被爆を防ぐためのマスクか!
 ……ヨード剤とか、配ってないのかしら。報道では聞かないんだけど。

 電力需要が予測より下回ったのは、節電の賜物というより、企業・工場が設備点検とかでまともに機動していなかったからでしょうね。
 しばらく、東では電車のダイヤめちゃめちゃみたいですね。信号もつかない。交通機関のみならず、あらゆる活動に支障が。
 東北の混乱に比べれば、と、言えなくも無いけど。
 電気ってスゲエや。
 こんなときに誰々を責めるのもアレですが、それでも東京電力の後手後手な対応はますます世間の不安感を増すっていうか。
 万歩ゆずって、計画停電は計画立てる時間が不足していたとしても。
 西の電力を東に遅れないってのは、電力業界全体の長年にわたる怠慢によるよ。
 でもって、時間が経つにつれ、事態が悪くなっていく原子力発電所。根本的な修理ができず、応急処置もほころびていく。
 原発ってコワいよ。
 総理にしろ記者会見する枝野さんにしろ、新しくできた節電大臣にしろ、専門的な知識を持ってるわけないんだから。
 電力会社、核研究者、その筋のプロの皆さんは、保身も希望的観測も捨てて的確な措置を考えてもらわなきゃ。