「最期の息子」2011/07/12 06:17

 こないだ読んだ吉田修一が面白かったので、デビュー作も図書館から借りてきました。
 全部で三篇あって、「悪人」や「パレード」ほどのインパクトはありませんが、酒屋の息子とか、ホモとか、病んだ精神とか、長崎の田舎で方言使った会話とかは初期の頃からの特徴なんだなあ。

「最期の息子」
 97年、文学界新人賞受賞のデビュー作。
 主人公が過去の日記のページをビデオにおさめ、さらにビデオカメラに映った映像を改めて見返していく、という形式でお話が進んでいきます。
 なんでそんなことしているのか、というのと、風変わりなタイトルの理由は最期になって明かされるんですが、ホモの人と同棲してヒモやってる主人公の、「悪い人じゃないけどダメな人」っぷりが全然好感持てなくってイライラします。

「破片」
 父、兄、弟、そして居なくなった母。長崎の酒屋一家の物語。これも底に流れているのは結構暗くて曲がった病んだ川なんですが、「最期の息子」に比べれば、長崎の人々や風景の明るさがあってちょっと救われた気になりますが。
 それでも、きっとこの一家は、これからずっと母親を助けられなかった無念と無力感を抱えたままでいるのだろうと、出口の見えない印象です。

「Water」
 うって変わって、高校の水泳部の話。仲良しなんだけど、みんなそれぞれにやりきれない思いも事情もあって、という何だか甘酸っぱい爽やかさのあるお話です。青春です。
 水泳部主将の男の子による一人称なんですが、コイツがすごくいい子で、そういうキャラの話はやっぱり読みやすい。

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