「隠し剣 孤影抄」2022/04/23 23:19

藤沢周平の短編集、いくつか読み進めるうちに「アレ」と思ったのが、なんか覚えのある人名が出てくること。どうやら、収録された8編全部あるいは幾つかは、同一の城下で近い年代に繰り広げられた殺人劇のようです。……このご城下、剣術流派と伝えられし秘剣がてんこ盛りか。そして、ここの殿様はさっさと成敗されなきゃダメなタイプやん(病死ってあったけど)。
惨殺されたり自害したり、命を散らすのは下っ端の侍たちと、女たち。剣客小説だけど、意外と恋愛もの。登場する女たちは総じて健気っていうか愛情深く一途っていうか厳しく筋を通すっていうか。非業の死は、刀剣を持ちすぐに死ぬし、殺すし、な侍たちだけではなく、武家の女たちの宿命でもあるようです。
半分くらいが後味の悪いバッドエンド作品、とくにラストの「宿命剣鬼走り」の救いの無さは呪いじみてほとんどホラーでした。