「緑の我が家」2010/08/27 20:23

 寂しい。家に帰りたい。帰る場所がない。待っていてくれる人がいない。そういう人間は死ぬと、ここを離れられなくなる。

 小野不由美のホラー小説。これも夏になると再読したくなります。
 父親の再婚を機に一人暮らしを始めた16歳の少年が主人公。引っ越してきた先は「出る」と噂で、実際に起こる怪異の数々。
 そして主人公の記憶に封じられた、過去の事件。
 この二つがお話の軸となるのですが、もう一つ印象的なのが、主人公の青臭さ。思春期ってヤツでしょうか。強がって、独りよがりで、潔癖で、ずるくて、自己嫌悪に陥って、でも誰にも相談できなくて……
 そんな、行き場のない人間を誘ってくるのが、「緑荘」の住人たち。風呂場のドアの隙間からのぞく、細い子供の手……