「そして父になる」2013/10/02 11:51

 是枝監督は、「誰も知らない」「歩いても 歩いても」など、とにかく子供を撮るのが異様に上手い。ドキュメンタリーかと思うほど、子供たちがナチュラルです。なんでも今回は、子供たちには台本を渡さずに撮ったそうで。
 それに対して、異様に不自然だったのが、父親役の福山雅治でした。
 とにかく、格好良すぎます。画面に映されるその姿があまりにも絵になりすぎて、「こんな恰好ええお父ちゃん日本に存在せえへんわ」という違和感です。スターのオーラがありすぎて、普通の年相応の日本人男性の役が困難になってきているよ、この人。
 でも、さすがというか。
 その「作り物めいた端正さ」の「裏側」が少しずつ現れてくることによって、ちゃんと人間味が出てきます。
 ストーリーの表現自体は割と普通で、子供を取り違えられた二組の家族の様子は、古典的なほど分かりやすく対照的です。
一方は上品なエリートで、でも父親は仕事ばっかりな核家族。
一方はお金持ちじゃなくて色々やぼったいけど、明るく賑やかな大家族。
その単純比較の中に、「血のつながった子供」と「今まで育ててきた子供」に対する親たちの「どう対処していいのか、どう距離を取るべきか」な様子が挟み込まれていきます。
主人公の葛藤がどうしても中心に来るのですが、他三人も印象深いシーンがいくつもあったので、そっちももっと掘り下げて欲しかった気がします。きっと、いっぱいカットしたシーンがあったんじゃないでしょうか。
そして、ベタなんですが、福山が写真を見たりバラの花を探すシーンはヨカッタです。
主人公は押せ押せな能動的人物で、彼なりに息子のことを愛してきた。しかし彼が真に父親に目覚めるのは、自分自身が息子から愛されてきたことを、実感した時だったのでした。

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