薬師寺・白鳳浪漫ミュージアム2021/05/07 11:21

初夏の青空と新緑。黒い甍、赤い柱、緑の連子窓、白い壁、要所に金箔のアクセント。
三年ほど前、再建されたばかりの興福寺中金堂を拝んだ時も天平時代っぽさ最高でしたが、同じく法相宗の薬師寺もまた、「持統帝もこんな景色見たんだろか」とウキウキしてきます。平日で観光客も少なく、静謐感も加わった美しさ。
壮麗な伽藍(竜宮造りというそうな)の主な建築群はほとんど戦後再建されたものですが、その中で唯一、千三百年前から現存する東塔が今年の春大修理を終えて復活。壁は真っ白、石の土台やてっぺんの水煙は新たに作り直されていますが、木材はほとんど当時のモノ再使用で他の建物のように赤く塗られず、黒く古めかしい。初層内部が公開されていましたが、中心の太い柱は現代の日本産檜では(サイズ的に)作り直せないという。檜は花粉症患者が涙するほど植えられていますが、数百年かけて大きく育てるプロジェクトはないのかなあ。
新しい建物でも中に安置されているのは白鳳期・奈良時代の仏像がたくさんで、特に印象的だったのが聖観世音菩薩立像の麗しさ。
そして、現代美術館でもあります。壁画って線が太くこってりしたイメージでしたが、食堂のそれは水彩の淡さで遣唐使船が描かれる。西塔内部の彫刻も荘厳な格好よさ。最後に玄奘三蔵院伽藍で平山郁夫の異国情緒満載の壁画を堪能。
今年の特別公開てんこ盛り色々見て回って拝観料金1600円也。

山歩き、伏見2021/05/04 23:26

五月晴れに導かれ、伏見の山歩き。深草トレイルコースから稲荷山を省き、御香宮神社と藤森神社、疏水沿い散策を足した経路。
御香宮神社は祭神・神功皇后、表門は伏見城からの移築と伝えられるシャチホコ付。瓦屋根の拝殿と茅葺の本殿は金箔や彩色で賑やかにおめでたい、桃山文化だ。筍掘りの絵が牧歌的。
桓武天皇陵にちょっと寄って、伏見桃山城を見上げ、スポーツ施設や公園を通り抜けて、ちょっとずつ登って行く。
大岩山は山頂が182、伏見の町を一望する展望所はもう少し標高低いはず。右手に名神高速が走り、左手に伏見桃山城を見下ろし、正面の京セラ本社ビルの存在感!
展望所までの登りは竹林を抜ける。不法投棄ゴミの多いこと。さらに登ると視界が開け、大量の太陽光パネルが並ぶ。そこも眺望ポイントなのに、景色よりもパネルの群が印象強烈。整地中のところもあり、きっとまだ増やすのだ。後で地図を確認したら、多分ゴルフ場だった辺り。太陽光発電もいいけど、伏見は水とお酒で売っているのだから山切り開くのは慎重にやるべきじゃなかろうか。
せっかく自治体が山歩き整備しているのに色々興ざめだった登り。下山経路はうって変わって幽玄の世界。細く流れる清水、落ちる滝、ひっそりとした池に倒木。低く啼く蛙、マムシ注意の看板、石碑の立つ祭壇(?)があちらこちらに。異彩を放つのが堂本印象デザインの鳥居。荒れた大岩神社の裏手に小さいの、少し下ったところ(こちら側が本来の表参道なのか)に大きいのがあり、二本とも白い石材角柱神像紋様彫刻付。模様に彩色が施されれば、御香宮神社の桃山文化風にも通じる感じ。昭和の作品だけど。

「永遠のソール・ライター」2021/03/08 23:59

前から気になっていた写真展。NHK日美でもやっていた。ちょうど京都駅を経由するので、面接帰りに行ってきました。
50~60年代の白黒及びカラーが中心。ピントを合わせた被写体と、それ以外の部分との関係性が面白い。白い花と、花売りの男性の黒いシルエットがなんだかミステリアス。鮮やかな赤い傘と、傘に隠れて顔の見えない人物は、どちらが主とも従ともつかずお互いを引立てあっている感じ。
秘すれば花ってことか。ガラス越しに、雨越しに、手すり越しに、光に隠されたり陰に隠されたり。幾重にも重なり合う世界。
I see this world simply. It is a source of endless delight.
何気ない事物を、こんな風にオシャレでチャーミングに見えるって、いいなあ。

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展2021/01/09 23:57

国立国際美術館のロンドン・ナショナル・ギャラリー展は大満足。超楽しい。図工・美術の教科書で見たことあるあれやこれや!
ゴヤが描く肖像画の物言いたげな表情。赤い衣でスーパーヒーローのようなエル・グレコのキリスト。スルバランの聖マルガリータが格好良くてかわいい。フェルメールは絵が小さくってせっかくのこだわり抜いた細部は意外と確認しづらい。いつまでも見飽きないモネの睡蓮。エネルギッシュだけどどこか苦しげなひまわりのうねり。そして西洋絵画は、人物画でも風景画でも、犬出現率高くてイイね。
ミュージアムショップを含めて三時間近くウロウロできました。絵葉書どれを買おうかと迷った末、図録(ミニ)を購入。全61点収録で、正規図録よりコンパクトでお求めやすいお値段、表紙のひまわりも素敵。
これだけ気合入った企画なのに、新コロの影響で開催期間変更、大阪展は風邪の流行期にぶち当たったのでした。館内は快適に空いていて、土曜日なのに当日チケットも販売されていた。……ある意味もったいない、これでたくさんお客さん集める予定だったんだろうに。

「細見コレクション 琳派と若冲」2020/12/12 23:14

インフルエンザの猛威によって日本各地で鶏が埋められている今日この頃、世界一格好良くニワトリを描く絵師の作品を。ちなみに本日の自分の夕飯も鶏肉。
伊藤若冲と言えば写生対象の細部まで念入りに描写されるイメージですが、今回の展示は雪中雄鶏図のみが彩色で、他は墨絵作品。黒の濃淡のみの表現では、精密さより勢いと愛嬌。ネズミ婚礼図はノリがディズニーアニメのよう。雄鶏の尾羽は力強いけど雌鶏は丸っこいフォルムで、ヒヨコちゃんたちに至ってはあの有名なおまんじゅうに足をくっつけた感じ。ミュージアムショップでは、飛んでる虻を睨み付ける双鶏図のマグネットを購入しました。
琳派作品では、俵屋宗理の朝顔が格好良かったです。
全体的に作品の説明が分かり易く親切。気になったのは、掛け軸がなんかよれっとしていること。あれってアイロンか何か(!?)でピシリとできないんだろうか。
帰りに、平安神宮で開催の手作り作品市も覗いていく。オヤツに買ったおいもカップケーキ美味しい。

天を衝く黄銅色2020/11/23 23:41

田舎なので、ちょっと足を伸ばすと軽い山登りポイントにお出かけできる。
市の植物公園もその一つ。大なり小なりの植物園、彼方此方の自治体にありそうな施設ですが、ここならではの特色をあげるとすれば、植物説明パネルに源氏物語の一節がそえられていることでしょうか。
霜月に、花は少ない。野菊たちは元気なく、椿はたくさんの品種があるけれど咲いているのは一株しかない。ただ、桜が咲いていました。品種改良ですね。十月桜って、春と秋の年二回咲く。そして冬桜。
この時期のメインイベントである、紅葉を愛でる。キレイだけど、何故か水場に恐竜(+卵)がいました。赤いイロハモミジと恐竜、どういう趣向だろう。
紅葉よりも印象的だったのは、池の周囲にすんなりと伸びた、スギ科の樹木でした。ラクウショウとかヌマスギとか呼ばれているやつ。晩秋の日差しを浴びてコガネアカガネに輝く、それは近くからだと見上げる壁で、離れて見ると青空とのコントラストが美しい。紅葉黄葉って言ってみれば単なる枯葉なんですが、それがスケールの大きな秋の風情に見える不思議。
関西文化の日企画で、この三連休中は入場無料。夜間ライトアップもあるそうですが、寒くなってきたので日暮前に下山。

御仏は我が内に2020/11/08 16:59

宇治市出身のパティシエ(お店は東京)の限定スイーツ販売に釣られて初参拝。午後からの奉納舞踏もちょっと興味があったけど、サンミツを避けるため、ではなくお腹が空いちゃったので昼前に帰る。

朝一は参拝客も少なく、雨に洗われたお庭にしみじみと秋の風情が漂い、古刹に法要の読経が響く。このお経、中国明代の読み方らしい。
黄檗宗大本山萬福寺、何で禅寺の最前列に布袋様が祀られているのかと思ったら、それも中国式。開祖である隠元禅師は江戸時代の前半に日本に招かれたのですが、新しい時代のはじめにどういう経緯で渡来することになったのか、その辺の事情にはドラマがありそうです。
この寺院の売りは、伽藍全体重文指定の明朝様式、布袋様、でっかい木製お魚(木魚)などありますが、ある意味とても有名なのが、ご本尊の両脇に並ぶ十八羅漢像のうち一体、らごらそんさん。ブッダの息子さんだという彼は、自ら胸を開き、ぱかりと開いたそこから親父さんがひょっこり顔を出している。己の中の御仏っていうのを、そのまんま具象化しちゃった。
らごらそん像は背後に窓があり、私が拝観した際には逆光でちょっと見にくかったのが残念。仏像を含めて撮影OKのお寺ですが、この季節の午前中は避けたほうがいいかな。

時代祭2019/10/27 12:58

京都御所の休憩所、出汁入り卵オムハヤシはハヤシソースがあんまり濃くなくってお出汁の香りがふんわり。甘党向きのお昼ごはんだ。

島津製作所の次に向かった京都御所では、ちょうど時代祭の準備中。パンフレット買えば、どれが誰の仮装なのかちゃんと分かるのだろうな。
行列全部見学する時間はなかったけど、そこら辺の草をモシャモシャ食べるお馬さんをなでさせてもらう。私は写真撮らないけど、出番待ちの静御前とか騎馬武者とか間近で撮影させてもらえるのでそういうの好きな人には行列よりも御所での準備段階の方がオイシイだろうなあ。
牛車も近くで見た。黒い牛に、赤い衣装の牛飼い童、後方にいる牛はおそらく予備のためだろう。車輪が大きい、人の背丈ほどもある。しかし動き出すとギッシギッシいう、車軸の構造どうなっているのか。昼間はともかくこれで夜の都大路をお忍びで行くのは無理があるよ。

島津製作所創業記念資料館2019/10/27 12:48

今年も日本人から受賞者が出て、大いに盛り上がりましたが。
世界が注目する、ノーベル賞の意味・価値とは何か。もちろん、その業界の人々にとっては、賞金とか名誉とかあるのでしょう。しかし科学とか物理とか、我々のような門外漢にとって理解の難しい話だ。
ただ、それは案外、距離のある遠い話ではない。各教育機関や企業の研究所での地道な試行錯誤とその成果は、はっきりとは見えにくいけれど、我々の普通の生命活動の中にある。ノーベル賞騒ぎは、それに思いを馳せる、年に一度の機会。


高瀬川の浅い流れに、写真撮影用であろう酒樽積んだ高瀬舟。床や壁は新しいけど、天井の太い梁なんかは古い家屋らしくってステキ。
明治の初めに京都の仏具屋さんが化学機械の製造業に転身し大きく発展し、ノーベル賞受賞者まで出すにいたる。当時サラリーマン受賞者なんて言われてたのは覚えているけど、この田中さんの研究何だったのか、さっぱり記憶に残っていない自分。今年のリチウムイオン電池ほどみんなにお馴染みの製品ではないのでしょう。記念資料館の特集コーナーしっかり見れば分かるのでしょうが、説明のお姉さんに案内されるままな団体ツアーで自由見学はできなかった。
展示してある古い器具類も使用用途が分からないものがほとんど。
最後にコピーを配布してくれたのが、二代目島津源蔵氏の記した「処世の要道」。「事業の邪魔になる人」「家庭を滅ぼす人」各十五か条計三十のお言葉が、なかなか厳しくて耳が痛い。いちいちゴモットモですが、功成すお人っていうのはこんなにも立派に生きるのだなあ。

三十三間堂2019/09/08 00:06

京博で拝んだ仏像彫刻のひとつで、両手に乗せられるほどの塊に爪楊枝みたいなミニ地蔵が並ぶ千体地蔵菩薩像がちょっと笑える。雲竜図や大仏みたいにサイズで押すか、あるいは数で攻めてくるかっていう発想。
しかし京都で千体仏像っていえば、意外と最近国宝指定された千体千手観音像。京博近くの三十三間堂内部は冬寒く、今日は残暑の厳しさであまり快適とは言えません。障子を開けたところはお庭からいい風入ってくるけど、全部開け放つわけにはいかないから。
これも最近、左右の位置を逆にしたという風神雷神像は、直前に観た宗達の屏風絵のようにトボケタ感じじゃなくて、真面目そうだ。位置を変えてしまうと、宗達のと違って互いにそっぽを向く形になる。まあ、お堂の端から端まで遠いし、向き合う意味は特にないだろうけど。
そして、大きいの一体を中央に挟んだ、等身大千手観音一千体。ド派手に数で押します。