「天と地の守人」2010/06/16 00:06

 守人シリーズ最終章、三冊。
 第一部では、女用心棒バルサが、たった一人で非公式外交交渉に向かった皇太子チャグムの足取りを追っていく。いつも追われる立場なのに珍しく追いかけていくバルサ。彼女は相変わらず傷だらけで、強い。
 第二部では、チャグムとバルサが、バルサの故国へと旅をして、同盟を結ぶために奔走し、それを阻止せんとする敵国の密偵と戦う。
 第三部では、チャグムの故郷で、思いっきり戦争。チャグムとバルサの行動は完全に分かれて、バルサは個人・民間人として戦争という現実に向かい、チャグムは皇太子・為政者として軍を率い、敵軍および自分とこの政府(父親)と対決することになる。
 ファンタジー小説でこんなにもガッツリと戦争してるのって、アルスラーン以来かも。
 国を守りたい、人々に死んでもらいたくないという思いで必死に叫ぶチャグムの姿に打たれます。彼以外にも、どうにかして自分の国を守ろうとして、人々の水面下での駆引きが繰り広げられて。…日本の政治家のみなさん、これくらい真剣に政治やってくれないかなあ。
 重荷を背負ったチャグムが、バルサといるときだけ16、7の少年っぽくなる(たとえば一人称が「わたし」から「おれ」に)のですが、違う道を行く二人ですから、今後はもう二度と会うことはないだろうと作中でもほのめかされています。
 登場人物が非常に多く、主役の二人以外にも魅力的な人物は見られるのですが(敵国の王子とか密偵さんとか、私けっこう好きだったんですよねえ、敵だけど)、そこらへんはけっこうサラッと書かれていたようで、惜しい。それぞれのことをもっと突っ込んで描写してもらいたかったのですが、でもそれじゃ、ますます長くなりますからねえ。
 続編を書いてもらいたいような、綺麗にここで終らせて良かったような。

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