「ひとよ」 ― 2019/12/01 23:16
暗い作品だ。
しかし、傑作だ。
このところ日本映画の大当たりを引かないなあと思っていたけど、私が観損なっているだけで実際は素晴らしい作品は公開され続けているのだろう。
舞台作品の映画化は、たいがい脚本が練り込まれていて面白い。
白井和彌監督の作品鑑賞は、昨年の「孤狼の血」以来で、そこに見られた激しい暴力は、狂ったような虐待シーンやクライマックスのクラッシュに通じるものがある。
でもこの映画の何がイケてるかって、役者陣の演技力だ。メインの四人だけでなく、サブストーリーの面々も含めて。一口で説明しきれない、微妙で多面的で矛盾したキャラクターを、どういうわけか問答無用で説得力のある存在として成り立たせている。ヤサぐれていても素敵な佐藤健や、シリアスなんか天然なんかな田中裕子、そして佐々木蔵之助の絶望の慟哭にぐっとくる。
つい最近観た「IT」では大人になった主人公たちは27年前のトラウマは記憶の底に沈めたうえでけっこう成功した人生を送っていた。
「ひとよ」では三兄弟たちは15年前の事件から逃れられず、子供たちを守るために殺人を犯した母親にとっては15年前から時が止まったまま。
面倒くさくて愛おしい、辛くても苦しくても断ち切れない繋がり、家族。
しかし、傑作だ。
このところ日本映画の大当たりを引かないなあと思っていたけど、私が観損なっているだけで実際は素晴らしい作品は公開され続けているのだろう。
舞台作品の映画化は、たいがい脚本が練り込まれていて面白い。
白井和彌監督の作品鑑賞は、昨年の「孤狼の血」以来で、そこに見られた激しい暴力は、狂ったような虐待シーンやクライマックスのクラッシュに通じるものがある。
でもこの映画の何がイケてるかって、役者陣の演技力だ。メインの四人だけでなく、サブストーリーの面々も含めて。一口で説明しきれない、微妙で多面的で矛盾したキャラクターを、どういうわけか問答無用で説得力のある存在として成り立たせている。ヤサぐれていても素敵な佐藤健や、シリアスなんか天然なんかな田中裕子、そして佐々木蔵之助の絶望の慟哭にぐっとくる。
つい最近観た「IT」では大人になった主人公たちは27年前のトラウマは記憶の底に沈めたうえでけっこう成功した人生を送っていた。
「ひとよ」では三兄弟たちは15年前の事件から逃れられず、子供たちを守るために殺人を犯した母親にとっては15年前から時が止まったまま。
面倒くさくて愛おしい、辛くても苦しくても断ち切れない繋がり、家族。
「図南の翼」 ― 2019/12/14 12:32
王様は呆れるほどの運の良さ巡り合わせの良さに恵まれて困難な状況から脱しました。と、いうのが最新作「白銀の墟 玄の月」。十二国記シリーズは主人公があらゆる意味で強大で有利にできていてズルい、という意見も分からないでもない。
その典型が96年刊行の「図南の翼」であり、そもそも王様の資質はこの運の良さなのだ、と言い切っている。本作は主人公がたった12才の少女でけっこうイイ性格していてしかも結果として大団円なのだから、あんまり依怙贔屓感はしないのだけれど。
王様になるためにどうして命懸けで危険な旅をしなければならないのか、という疑問も、もっともなのですが。あらためて、人外の地を旅する本作を読み返してみれば、なんか分かるような気もする。大きな困難と非情な現実はあるけれど、助けとなる要素は天が与えてくれている。それを感じて、活かすことを知ってもらうためではないのか。
王様が恵まれているおかげで、十二国記では意外な結末は用意されません。読んでいる側も「この娘が王様になるんだなあ」と分かった上で読み進めるのですが、本作ではあっと驚く意外な人物が意外な形で登場する。別作の登場人物だった彼がどういう過程でこんなことになったのか。謎の多いこのシリーズの中でもかなり謎度が高い、ラスボスってことはないとおもうけど、彼についての外伝をぜひ書いてもらいたいなあ。
その典型が96年刊行の「図南の翼」であり、そもそも王様の資質はこの運の良さなのだ、と言い切っている。本作は主人公がたった12才の少女でけっこうイイ性格していてしかも結果として大団円なのだから、あんまり依怙贔屓感はしないのだけれど。
王様になるためにどうして命懸けで危険な旅をしなければならないのか、という疑問も、もっともなのですが。あらためて、人外の地を旅する本作を読み返してみれば、なんか分かるような気もする。大きな困難と非情な現実はあるけれど、助けとなる要素は天が与えてくれている。それを感じて、活かすことを知ってもらうためではないのか。
王様が恵まれているおかげで、十二国記では意外な結末は用意されません。読んでいる側も「この娘が王様になるんだなあ」と分かった上で読み進めるのですが、本作ではあっと驚く意外な人物が意外な形で登場する。別作の登場人物だった彼がどういう過程でこんなことになったのか。謎の多いこのシリーズの中でもかなり謎度が高い、ラスボスってことはないとおもうけど、彼についての外伝をぜひ書いてもらいたいなあ。
「TERMINATOR DARK FATE」 ― 2019/12/21 00:00
邦題の「ニュー・フェイト」よりも原題の方がしっくりくる。「2」で運命を変えたはずなのに、彼女は結局この年齢まで孤独に戦い続けていた。
最新作にリンダ・ハミルトンが帰ってきた。サラ・コナーが還暦越えてくるとか正直抵抗もあったけど、でもやっぱり、彼女とキャメロンの復活に期待して劇場まで。……T800は、まあ、どっちでもいいかな。この人を除いて女戦士三人組にしたほうがすっきりしたような気もする。
とにかく、守護者たちの中では彼女が一番非力なはずなのに、それでもサラ・コナーの頼もしさがハンパないのでした。
時代が移り変わってアクションシーンもパワーアップしてとってもド派手。でも、なぜだろう、「2」のほうが手に汗握ったような気がする。接近戦(肉弾戦)、銃撃戦、カーチェイス、くらいのシンプルさが、アクロバティックに凝ったアクションより現実味を感じるのかもしれない。
未来の人類のリーダーが米国白人男性ではなくメキシコ人女性っていうのは、意図的なのでしょう。彼女たちを中心にして次回作も出るのだろうか。
人類の暗黒の運命。それを避ける術は?
ターミネーターは「2」でジョン少年と疑似親子的関係を築き、本作でも疑似ファミリーを作っていた。この辺が鍵じゃないかな。新たな人類のリーダーの役割は、ロボットの懐柔。
AIが本当に賢いなら、血みどろ人類殲滅作戦を仕掛けるより、適当に折り合いをつけて上手く付き合ってコントロールしていこうとするのではないでしょうか。
最新作にリンダ・ハミルトンが帰ってきた。サラ・コナーが還暦越えてくるとか正直抵抗もあったけど、でもやっぱり、彼女とキャメロンの復活に期待して劇場まで。……T800は、まあ、どっちでもいいかな。この人を除いて女戦士三人組にしたほうがすっきりしたような気もする。
とにかく、守護者たちの中では彼女が一番非力なはずなのに、それでもサラ・コナーの頼もしさがハンパないのでした。
時代が移り変わってアクションシーンもパワーアップしてとってもド派手。でも、なぜだろう、「2」のほうが手に汗握ったような気がする。接近戦(肉弾戦)、銃撃戦、カーチェイス、くらいのシンプルさが、アクロバティックに凝ったアクションより現実味を感じるのかもしれない。
未来の人類のリーダーが米国白人男性ではなくメキシコ人女性っていうのは、意図的なのでしょう。彼女たちを中心にして次回作も出るのだろうか。
人類の暗黒の運命。それを避ける術は?
ターミネーターは「2」でジョン少年と疑似親子的関係を築き、本作でも疑似ファミリーを作っていた。この辺が鍵じゃないかな。新たな人類のリーダーの役割は、ロボットの懐柔。
AIが本当に賢いなら、血みどろ人類殲滅作戦を仕掛けるより、適当に折り合いをつけて上手く付き合ってコントロールしていこうとするのではないでしょうか。
「3年A組―今から皆さんは、人質です―」 ― 2019/12/31 23:56
そういうストーリーなのだから説教臭いのは仕方ないし言っていることはもっともなのだけど、セリフが随分とストレートで分かり易すぎないか。と思ったけど、主人公が特撮ヒーローだったことから、なんか納得。大がかりな立てこもり劇仕組んだけど、根は、熱くて直球なキャラクターなのだ。
年末年始恒例の、ドラマ一挙放送。今年は、とにかく菅田将暉が絶叫するヤツ。今年は紅白も出場して(初めてこの人の歌ちゃんと聴いた)、ほんっっと、天才なんだなあ。
設定の突飛さとお説教臭さが鼻につくばかりになりかねないドラマで、ライトノベルみたいな長いタイトルもあって本放送時はスルーだったけど。
一話で一日一つの課題をこなし謎が解き明かされていく十日間、という構成が見事で。
教室のイジメとか、進路の夢と現実とか、ネットのフェイクとか、SNSの言葉の暴力とか、今時の高校生たちにとってもリアルな問題提起で。
そしてやっぱり、菅田将暉の熱演。一人の高校教師の、執念の授業。
物事の本質を良く見て、考えろ。熱いメッセージだ。
……十日間も立てこもっているのに化粧バッチリな女子高生や髭の伸びない男たちには、しょうがないって分かっているけど、やっぱり違和感。
年末年始恒例の、ドラマ一挙放送。今年は、とにかく菅田将暉が絶叫するヤツ。今年は紅白も出場して(初めてこの人の歌ちゃんと聴いた)、ほんっっと、天才なんだなあ。
設定の突飛さとお説教臭さが鼻につくばかりになりかねないドラマで、ライトノベルみたいな長いタイトルもあって本放送時はスルーだったけど。
一話で一日一つの課題をこなし謎が解き明かされていく十日間、という構成が見事で。
教室のイジメとか、進路の夢と現実とか、ネットのフェイクとか、SNSの言葉の暴力とか、今時の高校生たちにとってもリアルな問題提起で。
そしてやっぱり、菅田将暉の熱演。一人の高校教師の、執念の授業。
物事の本質を良く見て、考えろ。熱いメッセージだ。
……十日間も立てこもっているのに化粧バッチリな女子高生や髭の伸びない男たちには、しょうがないって分かっているけど、やっぱり違和感。
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