「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」2022/05/03 12:22

アタリハズレあるコナン映画で、今作はここ数年で一番の出来という評判。納得。
あむろ・れいさんが格好良すぎてズルい作品とも言える。ただでさえハイスペックなキャラに、友人みんな故人となっている設定がハードボイルドの陰影を加える。5人組大プッシュ、過去回想の彼らの活躍が痺れるのは、基礎能力の高さとチームワークと機転、そしてコナン君にありがちな秘密メカに頼らぬところ。
今作は、「常人レベルの凄いアクション(!?)」多め。ラストこそ、博士の超絶メカが威力を発揮しましたが、それも「みんなで協力して」が強調されていた。
他の見どころとしては、
子供たちのハロウィン仮装カワイイ。
カボチャ仮面の集団は普通に恐ろしげで怪奇映画みたい。
名誉の負傷なおっちゃん、麻酔が効かずに痛がる(耐性!!)。
この子たち、ロシア語もできるんか……

「燃えよ剣」2021/11/07 22:43

今年の大河ドラマも楽しく視聴しているし、先月末には明治時代の風景画展(行った気になってくるくらい東照宮の絵をたくさん鑑賞……)にも行ったし。
激動の時代にこころを飛ばして、いやでも、映画のキャッチフレーズは「時代を追うな、夢を追え」なんだけど。
京の暗殺集団・新選組についてはおおまかなストーリーはお馴染みなので、原作を濃縮高速展開されてもあんまり気になりません。
見所はまず、チャンバラ。集団戦あり、一対一の見せ場もあり、岡田准一の殺陣センス見せつけてきます。尺としては短いけど、函館の戦争を大規模に描いてくれました。その他の各シーンのロケ地も、豪華で雰囲気のある場所をチョイスしています。映像的に何の不満もありません。予算掛けています。
衣裳は、例のダンダラ羽織はあまり出てこなくて、黒(濃紺?)の上下がメイン。
なぜか、BGMがカルメンだったり、謎の無国籍ダンス(芸者ヴァイオリン)踊りまくるシーンは、好みが分かれそうです。
キャラクター的には、近藤勇が薄く芹沢鴨が濃く、山崎烝の大阪あきんど感が面白い。井上源さんはいいキャラだったけど、キャスティングが年輩過ぎませんか、四十前には見えない。徳川最後の将軍は神経質で逆境に弱そうで印象最悪。逆に、沖田総司の明朗さがとても好印象で、最後の無念さが引き立ちます。
土方歳三は、君主を失い友を失い、結局、何がしたくて血煙の中を突き進んだのか……。時代に迎合せず、ただただ己の筋を通してそこに到った男の姿。

「MIDWAY」2020/09/22 16:51

「銀河英雄伝説」では主要な決戦が「巨大戦艦の大艦隊ぶつかり合い」なので、SFなのに中世的な感じがした。
現代戦なら、ミサイル基地からの長距離攻撃が花形なのかな。
そして近代戦なら、航空機からの爆撃が最大の戦果を上げていた。
四半世紀くらい前にも同名の映画が作られている(観たことないけど)、近代戦争歴史ジャンルとしてはメジャーな題材なのかな。真珠湾攻撃からミッドウェイ海戦までの半年間の攻防を描く。
戦闘映像の迫力はさすがのハリウッド・クオリティ。ほとんどCGなんだろうけど、大がかりでスクリーン映えする格好さ。……でも、「売り」はそれだけって感じもする。観客を選ぶ作品だろう。
歴史ものはお話の結末自体は知れているので、途中経過をいかに描くかにかかってくる。
日本の空母を沈めたパイロットが一応の主人公に設定されているけど、群像劇っぽい。140分近い長編の中に諜報部、日本本土空爆、戦争映画監督まで詰め込んできた。……ちょっと疲れてくる。
戦闘以外で印象的だったのをいくつか挙げると。
出撃前に、ガムを噛む。お行儀の問題ではなく、昔からそういう文化なんだなあ。
真珠湾で将校さんが下っ端水夫を先に逃がして自分は焼死。偉い人が先に避難するんじゃないんだ、責任者は最後なんだ。
東京が初めて攻撃を受けた日。陛下の身に危険が及ぶことを恐れる軍人さん。非戦闘民一般市民に被害が出ることはどう思っていたのでしょう。
空母が撃沈されて、大海原で帰る場所を失ったゼロ戦パイロット。そのまま海の藻屑となったのか、降伏して一命を取り留めたのか。

「MOTHER」2020/07/18 15:25

喜怒哀楽を失くしたような無表情な子供、よりも、色々語りたげな寄る辺ない後ろ姿、よりも、スクリーンにたっぷり見せつける長沢まさみの脚が映像的にインパクト大。
どこまでが事実に基づいているのか詳細は分からないけど、毒親、というにはあまりにもモンスターな母親。身勝手な大人に振り回される子供、っていうと是枝監督の「誰も知らない」「万引き家族」をぱっと思い出すけど、あれには子供らしさや人情味とかもある。しかし大森立嗣監督が描いたのは、まるで救いのないウツ映画だった。洗脳とか共依存とか、何かの言葉を当てはめられるようでいて、しかし「理解できるもんならやってみろや」って感じ、安易な解答を拒む。
それでもあえて理解しようとするならば、この母親は自分を立ち直らせて救いの手を伸ばしてくれる人よりも、ダメな自分を拒むことなく共に堕落してくれる相手が欲しいんだなあ。
そんなのダメだって分かっていながら、どこまでも母親に従ってしまう息子の方が、不可解。子供は反抗期を迎えるものだと思うし、守るべき妹だっているのに。とんでもなく優しい子なのか、なんの希望も持たない諦めきった子なのか。

「名探偵コナン 紺青の拳」2020/04/18 17:29

昨年の劇場版コナン。今年の劇場版は公開延期(映画館も次々休館で開いててもお客さんに足を運んでもらえない)で、夏休み映画とかになってしまうのかしら……
実は京極さんはけっこう好きなキャラクター。格好いい。にもかかわらず、登場するたびになんか笑えるという一粒で二度オイシイ人物。最強の空手家なだけあって、全てを力技でねじ伏せる、常軌を逸した強さに笑ってしまう。
尋常ではない点では怪盗の変幻自在も博士の発明品もたいがいなのに、どうして京極さんだけここまで(笑)になってしまうのだろうか……
物理的に最強な相手に対し、精神攻撃という敵サイドのやり方は、言われてみれば常道なんだけど、めっちゃ効果的だった。縁起担ぎとかも気にする人なんだなあ。
舞台となったシンガポールはひどいことになる。劇場版コナンは画面を派手にするために必要以上な破壊行為に走りがちで、犯人たちが超迷惑な頭わるい人になってしまうのが残念。
オールキャストとかじゃなくて、今回みたいに登場人数絞った(少年探偵団ほぼ出番なし)方が面白い。お嬢様の前髪下ろしたお顔が新鮮。

「魔女の宅急便」2020/04/18 17:20

昨年の今頃は図書館で借りた原作小説シリーズを読んでキキちゃんの成長に感動し、魔法の不思議にトキメいていたものですが。
ジブリ映画版は、設定だけ借りてストーリーはほぼ別物なのですが、これはこれで面白いのです。ビジュアルが付くと、ヒロインの幼さがつきつけられる。この幼さで独り立ちってかなり大変なことで、原作にあった「おすそわけシステム」は緩すぎるからか、ふつうに料金徴収する宅急便稼業になっていました。
田舎から都会へ、夢がふくらんだり、失敗したり、素直だったり、こじらせたり、頑張ったり、助けられたり、スランプだったり、そしてクライマックスのデッキブラシ飛行。キキちゃんの一喜一憂が、なんか微笑ましくなってくる点は原作のイメージと重なるなあ。
黒猫の軽快な足取りとかでっかい犬さんの頼もしさとかエンディングでチビッ子が黒服ブラシでコスプレしてたりとか。
感動と、楽しい要素満載の映画。

「メイドインアビス 深き魂の黎明」2020/02/29 22:25

夢とロマンのためならば、手段を選ばず犠牲を厭わない。その狂気は、芥川龍之介の「地獄変」などに代表されるテーマだ。
かわいらしいキャラクター、美しい異世界風景、謎とスリルに満ちた冒険、魂をえぐるハードな展開。2017年のTV放送アニメ、最初は「子供たちカワイイ~」って観てたんだけどなあ。劇場版は、残酷さがさらにグレードアップ。
アクションシーンの迫力なんかも見所なのですが、しかしやはり、子供がガチで酷い目に合う痛々しさが刺さる。複雑なのは、非人道的で酷いことをやっているのに、ある種の愛情があるのも確かだから。愛情を向ける対象が、死んだり苦しんだりするのに無頓着というか、びっくりするぐらい合理的に穏やかに受け止める。実に特異なキャラクターを悪役に持って来て、主人公パーティーが霞むほど。
ズルいなあって思うのは、世界の謎設定のおかげで次々「遺物」「不思議生物」という四次元ポケット的アイテムが出てくる点だ。なんでそうなる?と展開を不可解に思うこともある。最後に決めたのは、既存のアイテムだったのでちゃんと納得できたけど。
アビス世界の謎っていうか伏線については今回さっぱり触れられなかったけど、それがどのように回収されていくかは、やっぱり気になる。冒険の旅はまだまだ続く。原作漫画買おうかなあ。

「未来のミライ」2019/07/14 16:13

夏休み公開作を控えて、金曜ロードショウもいろいろ放送している。

幼児あるある。あるいは、親御さんあるある、なのかな。毎度、ふくれっ面幼児が不思議ワールドに行って機嫌直して帰ってくるのだから、なるほどのご都合主義。こちらも主人公とおなじく四歳児視点で受け入れるしかない。
タイトルの割にミライちゃん(未来の)の出番は少ない。てっきり、彼女のいる未来ではお兄ちゃんは亡くなっているのだろうと思っていたのだけど(「君の名は」のイメージ)、そんな緻密な物語構成ではなかった。これと言った目的はなく、なりゆきで時間移動しているのか。
不思議ステーションは良かったなあ、不気味で。電車好き幼児の夢っぽい。
そこでようやく、「くんちゃん」が「みらいちゃんのお兄ちゃん」としてのアイデンティティを獲得したのだった。

「メン・イン・ブラック 3」2019/06/24 22:34

金曜ロードショウ。

人と異形の者たちがドタバタやっている様子に、「血界戦線」を連想してしまう。異世界人を異星人に置き換えたら、そのまんま。
また、缶コーヒーのCMの残像が脳裏をかすめていく。
もちろん、分かっているのです。逆です。このMIBシリーズのイメージが、漫画やCMに反映されているのです。偉大なエンタメの証拠だ。
第一作を観たのも遠い昔で記憶もおぼろ。しかし、ウィル・スミスのお気楽な面白さ、バディものとしてのやり取りの面白さ、おもちゃ箱みたいな賑やかな映像、タイムスリップものの展開の面白さ。
むつかしいことかんがえるな。
てんこ盛りの楽しさを受け取ればOK。

「万引き家族」2018/07/15 18:07

Shoplifter
是枝監督の作品は何本か観たことあるけど、自分の中では、「誰も知らない」を越えるものが出ない。
タイトルで損しているというか、まるで万引きをメインにしているような印象。この言葉を拡大解釈するとすれば、彼らが万引きした最大の獲物は「心地よい裏街道人生」。
家族と言う群像劇ですが、いろんな要素を詰め込んでいて、でも一つ一つの要素はどこかで観たような聞いたような。年寄の年金頼みの貧困世帯とか、疑似家族とか、風俗嬢と客がちょっと純愛しているとか、虐待する肉親と普通ではないけど温かい庇護者。 
万引き家族たちは虐待された女の子に愛情を注いで救うのだけど、皆がもう一つの名を持ち後ろ暗く生きている中にいて、彼女にどんな未来があるだろうか。
その矛盾に気づいて、現状を打破したのが祥太くん11才。真の主演男優はリリー・フランキーじゃなくて城桧吏君だよなー。ここが、この作品中で最もドラマチックであり、同時に最もファンタジックと言うか。
周りの大人たちが当り前のように万引き生活していて、それで楽しくやれていたら、それを当り前に思う大人になっていってもおかしくない。駄菓子屋の親父にちょっと諭されたくらいでちゃんと考える、彼のマトモさは奇跡。 
祥太くんは、学校には行ってないけど本をよく読むという設定でした。
皆がもう一つの名を持ち後ろ暗く生きている中(インターネットとか?)だからといって、それを偽りと言い切れるだろうか、愛や真実はないのか。
最後に、祥太くんか、りんちゃんかが、「お父さん」「お母さん」と呼ぶのだろうと思って観ていた。
しかしそれはなかった。
母親になれなかった安藤サクラや父親になれなかったリリー・フランキーは色々しゃべるのに、無言でリアルを見つめる子供たち。そのまなざしが、是枝監督上手いなーと思わせる。