「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」2020/06/14 22:48

少女時代が終わってしまう。
言わずと知れた超有名作品の何度目かの映画化は、姉妹たちが大人になった時点から始まりました。ストーリーの中に挟み込まれるように、もめ事もあるけど楽しく和気あいあいな少女時代のエピソードが描かれます。
ハッピーな過去と、大人の現実のギャップに泣けてきました。
長女は好きな人と結婚したけど望むような贅沢な生活はできなくて。
次女はNYで小説を書くけど痛いトコロ(作品の通俗さ)を指摘されて荒れるし。
三女には死の影が。
四女はフランスで絵の才能に見切りをつけ、生活の安定のための婚活。
隣家の男の子は次女にフラれて傷心を抱える。
この四姉妹プラス1のキャラクターの描き方はとてもイキイキしていて完璧だと思いました。特に四女は片思いキャラの面を押し出して、現実と理想の間で凛とした姿を見せました。
原題にはない「マイライフ」という言葉。失ったり手放したりしたものもあるけれど、それぞれが選び取った人生の有り方は、美しい。

「自虐の詩」2020/05/05 22:23

MBSの「おうちにいようよ」プロジェクトで、10年も前のドラマを編集して「JIN-仁-レジェンド」と題して放送している。時を経ても面白いものは面白いし、こういう時代だからこそ、感染症と戦うお医者さんたちの姿にはぐっとくるものがある。

中谷美紀と言えば、格好良い花魁とか、知的で強くて華やかな役柄のイメージが強いのですが。
この映画では、東北の田舎から大阪に出てきてダメ男に尽くす幸薄いヒロインになっている。ドラマの花魁と同一人物かと疑うほど地味で、痛々しい。
2007年、堤幸彦監督。
スローモーションちゃぶ台返しが印象的で、コメディ路線と思ったら、後半まさかの感動的展開。ダメ男な阿部寛のビフォーアフターの差が激しすぎるっていうかキャラクターが違いすぎ。気が短くて乱暴で不器用で、一途。こんな格好良かったら、薄幸のヒロインがメロメロになって尽くすのも納得してしまう。
幸せを願うコト、願ってくれる人がいるコトが、幸せ。

「君の膵臓をたべたい」2020/05/03 17:07

2018年の劇場アニメ作品。NHKで放送されていたので視聴したのですが。
原作読んだことは無いけど聞いたことはあるタイトルで、おそらく人気作家さんの作品なのでしょう。最近の若者はこういうのがウケるのか。
これは感動の物語に分類されるのでしょうが、正直まるで泣けない。ヒロインにとんと感情移入できないのです。可愛くていい娘でも、しょっちゅう死ぬ死ぬ繰り返されては重くってしょうがない。この、病気をタテにとって何でもやろうとする姿勢には好き嫌いが分かれそう。
しかし、男というのはこういう小悪魔に振り回され、それに付き合っていくのが楽しいということなのでしょうねえ。この男の、人間に興味ないとか言いながらヒロインに興味津々で色々聞き出すあたりはカワイイと思いました。
花火とか桜とか映える画面に、ふたりだけの世界。なのに、恋仲でもなく友情でもないという。互いへの憧れで結びつく、特殊な関係。

「暗い越流」2020/05/02 23:03

光文社文庫の若竹七海作品は軽くてユーモラスなタイプが多いのですが、この短編集は毒と棘で差してくるヤツだ。
五編中最初と最後のが葉村晶モノで、「蝿男」が葉村三十代、「道楽者の金庫」が東北の震災から約二年後で四十代に突入、TVドラマ版のミステリ書店のバイト設定がここから出てくる。……初登場時が二十六歳でパソコン通信なんて単語が出てきたことを思えば、随分時が流れたものです。二編とも、「悪いうさぎ」のときの暗闇恐怖症がちゃんと後を引いていて。
しかし、本書のメインは表題作の「暗い越流」で、日本推理作家協会賞短編部門受賞作品。中身は……2012年当時にそんな言葉はなかったかもしれないけど、毒親!葉村晶もそうだけど、ミステリ小説に親子兄弟関係が歪なのはつきものではありますが。
親だからって理由で年寄のエゴを正当化し、子供の人生を狂わせる。この親があまりにもマヌケなので笑っちゃいそうになりますが、お話の底に流れているものは、とても暗くて冷たい閉塞感。

「密やかな結晶」2020/04/20 22:48

そういえば、この作者はアンネ・フランクのファンだったなあ。嵐のような外界から身を隠す、ひっそりとした空間で息を殺して、支援者とのみ交流する。その閉塞感を、苦痛と言うよりもむしろある種の快感として描く。
人は案外、恐怖も不自由さも受け入れて、楽しんでしまうのだろう。
小川洋子の94年の作品、ブッカー賞の候補、なのでまだ受賞したわけじゃないのだけど、最近では珍しく明るいニュースだと思って、学生の時以来の再読(内容はすっかり忘れていた)。
おそらく日本と思われる島では、次々と「消滅」が起こる。帽子や、カレンダーや、香水や、ラムネや、小説や、小鳥や、左足など。それは物理的であり自然現象でもあり、人々の中から概念ごと失われてしまう。しかし、消滅してしまったものを捨てずに覚えている人々もいて、それを狩り立てる秘密警察が存在している。……なんとなくだけど、英国知識人の好みそうな設定だ。
この辛気臭い小説を読んで改めて思ったのが、私は昨今はやりの「不要不急」という言葉が嫌いであるということだ。
百歩譲って不急であることは認めても、簡単に不要って言うな!図書館も高校野球もコンサートも映画も飲み屋も不要なんかじゃないぞ!ちゃんと「お急ぎの要件でなければ遠慮してね」って言ってよ!

「名探偵コナン 紺青の拳」2020/04/18 17:29

昨年の劇場版コナン。今年の劇場版は公開延期(映画館も次々休館で開いててもお客さんに足を運んでもらえない)で、夏休み映画とかになってしまうのかしら……
実は京極さんはけっこう好きなキャラクター。格好いい。にもかかわらず、登場するたびになんか笑えるという一粒で二度オイシイ人物。最強の空手家なだけあって、全てを力技でねじ伏せる、常軌を逸した強さに笑ってしまう。
尋常ではない点では怪盗の変幻自在も博士の発明品もたいがいなのに、どうして京極さんだけここまで(笑)になってしまうのだろうか……
物理的に最強な相手に対し、精神攻撃という敵サイドのやり方は、言われてみれば常道なんだけど、めっちゃ効果的だった。縁起担ぎとかも気にする人なんだなあ。
舞台となったシンガポールはひどいことになる。劇場版コナンは画面を派手にするために必要以上な破壊行為に走りがちで、犯人たちが超迷惑な頭わるい人になってしまうのが残念。
オールキャストとかじゃなくて、今回みたいに登場人数絞った(少年探偵団ほぼ出番なし)方が面白い。お嬢様の前髪下ろしたお顔が新鮮。

「魔女の宅急便」2020/04/18 17:20

昨年の今頃は図書館で借りた原作小説シリーズを読んでキキちゃんの成長に感動し、魔法の不思議にトキメいていたものですが。
ジブリ映画版は、設定だけ借りてストーリーはほぼ別物なのですが、これはこれで面白いのです。ビジュアルが付くと、ヒロインの幼さがつきつけられる。この幼さで独り立ちってかなり大変なことで、原作にあった「おすそわけシステム」は緩すぎるからか、ふつうに料金徴収する宅急便稼業になっていました。
田舎から都会へ、夢がふくらんだり、失敗したり、素直だったり、こじらせたり、頑張ったり、助けられたり、スランプだったり、そしてクライマックスのデッキブラシ飛行。キキちゃんの一喜一憂が、なんか微笑ましくなってくる点は原作のイメージと重なるなあ。
黒猫の軽快な足取りとかでっかい犬さんの頼もしさとかエンディングでチビッ子が黒服ブラシでコスプレしてたりとか。
感動と、楽しい要素満載の映画。

「八年越しの花嫁 奇跡の実話」2020/04/06 23:34

2017年のヒット映画。普段こういう難病お涙頂戴的恋愛映画はあまり見ないのだけど、ノーカットTV放送だったから。
ドラマの「恋つづ」では計算されつくされた圧倒的な色気を出していたけど。この映画のような素朴系でも、ただ何気なく立っているだけで絵になる。佐藤健の格好良いこと。
しかしより難易度の高い演技を見せたのがヒロインの土屋太鳳ちゃんでした。彼女は「るろ剣」の操ちゃんでもイイ味出すなと思っていたけど。元気な状態の勝気な姿と、脳の病気を患った姿の落差。昏睡状態でもただ寝ているだけじゃなくて、手に不随意運動があるのだねえ。奇跡的に意識が回復してからも、定まらぬ視線、回らない口で歌い、動かない四肢でリハビリ。
女優としての美しいポーズをかなぐり捨てて、リアル難病患者を演じる。
そんなピンポイントな記憶喪失あるのかしら?とも思ったけど(この物語がどの程度実話に忠実なのか……)
難しい病気で先の見えない状態でも。
常に心にある、相手への思いやり、愛情。

「プレゼント」2020/04/02 23:14

懐かしくって再読。若竹七海のミステリは、ときどき無性に読みたくなる。
NHKのドラマ版は主人公が必要以上にぶっきらぼうで態度悪くて首を傾げたのですが、可愛らしさよりシニカルを全面に出す姿勢はよく伝わります。そう、このシリーズは葉村のキャラクターが命。
ドラマ版は第一話のみ中公文庫から、それ以降のお話は文芸春秋社から。
初めて読んだのは確か私が高校生の時、葉村はまだ二十代半ばのフリーター。他の探偵キャラと変わりばんこで主人公をやる短編集で、表題作の「プレゼント」も彼女が主役じゃなかった。それが出版社を変えて単独主役の短編集「依頼人は死んだ」が、さらに長編の「悪いうさぎ」まで出て、正直嬉しかった。
気に入りのキャラクターだったのです。昔読んだときはタフでクールなイメージが強かったけど、改めて読むと結構情に篤く義理を重んじる人物だと思いました。
女探偵が挑むのは、事件と言うより、狂気だと思う。あるいは極端なエゴイズム、当人は真剣に自分に正当な言い分があると信じて他者を攻撃し踏みにじる。その姿は滑稽でもあり危険でもありおぞましくもある。葉村はそれに振り回されたり首をつっこんだりして、実はけっこうダメージを負います。
傷つくから共感が生まれ、それでも潰れないから応援したくなる。

安心できないと不安なんだね2020/03/26 00:49

五輪延期が決まったことで、都知事が心置きなく騒ぎ出してきた。今年は選挙もあるし、メディアにたくさん顔出したいよね。日本で一番人が多い東京都が一番感染者数多くなるのは当然のこと。人口一千人あたりの感染者数とか、メディアも厚労省ももっと状況把握の参考になるデータ示してほしい。
日本の新型コロナ検査は、明らかな症状のある人と感染者と接触のあった人を主に行われているようで、それだと死亡率がすごく高くなるのでは……と思っていたのに、それほどでもない。何か変な情報操作があるのでなければ、危険度は例年のインフルエンザ以上とは思えない。少なくとも、自分の周辺には感染者も感染者の噂も無い。
ただ、イタリアの死亡率の高さは気になる。高温多湿の東アジアより乾燥した欧州の方がウイルス繁殖しやすいのを差し引いても。危険度の高いウイルスに、変化していないだろうか。イタリアの医療設備でこのありさまなら、途上国ではではどうなるのか。……ただ、死亡者はほとんど高齢者らしいので、そう考えるとやっぱり威力は普通のウイルス風邪なんだろうか……
重症患者のほとんどが高齢者なら、学校を休校にするよりお年寄りへ引きこもり要請した方が合理的……と、思ったけど、官房長官とか財務大臣とか、七十代以上の政治家いっぱいいるな。社会の高いトコロでふんぞり返っている老人たちの自由を確保、そして無力な子供たちをおさえつけるのだ。
閑散とした外国の都市。そんなディストピア映像に比べれば日本はマシ、なのか。しかし外出禁止自粛が続くと本当にウイルス感染以外の理由で死者が出かねないし、過度なストレスで健康を損なうコトだってある。
理性的で、かつ人々の心に寄り添って。ドイツ首相の演説が評判だ。みんなの心に届き、安心と信頼を生み出す言葉が求められている。
常日頃そらぞらしいことばかり言っているこの国の政治家に、それが可能だろうか。