100周年、センバツ高校野球決勝2024/03/31 17:21

雨や、引っ越し準備であまり試合を観られなかった今年の大会でしたが。

3-2
健康大学付属高崎高校、初優勝おめでとうございます。機動破壊、足技で名を馳せた歴代チームの伝統を受け継ぎつつ、ことしは好投手二枚看板と打撃力で頂点へ。
一方、強豪校を打ち破って決勝まで勝ち上がった報徳学園は、二年連続の準優勝。すごいけど、悔しいですね。健大高崎と似たようなチームカラーで、すべての技術において安定感がありましたが、最後、打力の差で惜敗。
次は、夏の頂点を目指して。

「カラオケ行こ」2024/03/23 12:21

友人が絶賛していた映画。漫画原作ですが、脚本家の野木さんが好きで、気になっていたのを、終映ぎりぎりで鑑賞できました。
悩める中学生・聡実君が、なぜかヤクザの凶児さんにカラオケのアドバイスをすることに。
組のみなさんのユルいこと。綾野剛はああいう型にはまらぬ図々しい系が本当によく合います。コイツこういう奴だからしょうがない、という謎の説得力があります。
正直、部長の立場にありながら部活に出られない聡実君は、どうかと思います。思うように歌えず、合唱から心が離れていく、揺れる思春期。
そこから、カラオケスナックの鎮魂の熱唱が炸裂。
肩の凝らない友情コメディです。

「木」2024/03/16 22:17

年末に観た「PERFECT DAYS」で読書と樹木好きの主人公が読んでいたのが本書。以前、小川洋子のラジオ番組でも紹介されていた。71年から84年にかけて「學鐙」に掲載されたエッセイ、新潮社。
著者の幸田文が木に心を寄せるようになったのは、父親の露伴の教育による。自然と、生命に親しむ形の情操教育。その心根は財産だと言い切れるって、素敵だ。
木に対する敬意故に、お目当ての木に会いに、エゾマツの森や世界遺産登録以前の屋久島まで出向いていく。
生命として。
木材として。
ふたつの見方がある。なんとなく人間の、私人としての在り方と、職業人としての在り方、のような感じがする。
エッセイは、「えぞ松の更新」「藤」など最初の方の作品が神秘的な情緒と哲学があって印象的。他には、「灰」で火山灰の被害にあって死んでいく木々の描写が大変痛ましい。
もの言わぬ、でも美しく密やかに日々を生きる彼らが、とても愛おしい。

「夜明けのすべて」2024/03/09 12:53

昨年主演女優賞だった岸井ゆきのが司会!
今年の日本アカデミー賞は、ゴジラと安藤サクラを優遇しすぎではないか。彼女が主演女優ノミネートされるなら、「怪物」よりも「BAD LAND」の方かと思うけど。綾瀬はるかに取ってもらいたかったなあ。



上白石萌音さんと松村北斗くんのW主演は、身長差萌え。両者、新海監督アニメの主演声優だった、その声で、モノローグやプラネタリウムのナレーション。言葉による語りが思ったより多い。
三宅唱監督は「ケイコ、目を澄ませて」でボクシングの動きで観客を魅了しましたが、思い返せばあの作品も、インタビューやトレーニングノートなど、言葉によって表現する部分も少なくなかった。
プラネタリウム設定は、瀬尾まいこの同名原作小説に無い脚本オリジナルだそうです。天体運行のダイナミックさの前では、人間の差異など病があろうがなかろうが極小の問題です。科学は意外と哲学的でスピリチュアルで、その客観性が優しい。
藤沢さんは普段は天然気味な気配り屋さんなのに、イライラを抑えられなくなる。
山添くんは元々優秀で向上心のある若者だったのに、パニックを起こしてしまう。
自分で自分をコントロールできない。「自分」とは、何か。
そんな生きづらさを抱える人に寄り添い受け入れる、そういう癒やし系は、今の時代に必要とされている。

「荒城に白百合ありて」2024/03/02 10:08

須賀しのぶの、幕末時代小説。
時代設定は違えども、二作続けて現実に心が溶け込めないヒロインの物語です。
鏡子は自己が薄い。故に、会津武士の娘として、武家の妻として、雛形に形を合わせることによって自分を成り立たせる。
彼女ばかりではなく、多くのひとにも、そういう要素はあるような気がします。そこに生まれ落ちたときから求められる生き方、というのは。
それに何の違和感もなく素直に入り込めるか、
それに疑問を感じて苦悩や反発があるか、
鏡子はそのどちらでもなく、形式的であることに自覚がありすぎました。
友人の中野竹子が持つ力強い自我をまぶしく感じることはあっても、自分がそちら側の人間にはなり得ないことを承知している。
そうするべき、で生きていて。
そうしたい、は特にない。
そんな彼女が例外的に欲するものが二つ。
一つは、自分と同じ側にいる、薩摩藩士の男。
急変する時代の中、炎の中に滅びていく会津の城下で、破滅的な絆で結ばれた二人の物語。

「授乳」2024/02/24 16:34

芥川賞を受賞した「コンビニ人間」で一世を風靡した村田沙耶香のデビュー作と、「コイビト」「御伽の部屋」の計三編を収めた、講談社文庫。
三つとも若い女性が主人公。表向きは大きな問題は無いような顔で、しかし内実は、人間世界から透明な膜で隔てられたように生きている。彼女たちの魂が生きているのは、自身で作り上げた仮想世界で、具体的には、家庭教師との授乳ごっこや、ぬいぐるみや、同年代の男との演技空間です。
芥川賞受賞作と、基本は同じ。あれは、主人公にもっと年齢を重ねさせ、誰もがおなじみのコンビニというシステムを仮想世界の装置として設定したのが強烈でした。
コンビニ人間よりも若いヒロインたちは、コンビニよりも頼りない世界で息をする。
時折、現実の、まっとうな感覚に脅かされながら。
彼女たちに、安住の地はあるのか。

「哀れなるものたち」2024/02/18 12:15

静かな舞踏のように絵画的な、飛び降り自殺。
改造手術を受けた主人公のベラは、体は美女、中身は幼児として成長していきます。
それ故に、見えるものがあります。独特の異空間に、異形の生き物。
異形なのは、私たちみんな、哀れなるものたち。
禁忌、常識、節度などの枠が無く。
好奇心、知性、自己と他者に対する愛が有る。
性行為の快楽を大いに肯定してアラレもないシーンも満載ですが、エロさはまったく感じられません。
ヨルゴス・ランティモス監督は、エマ・ストーン演じるベラの冒険を通して、まっさらな人間の本質を暴き立てていくのです。
それは魅力的でもあり、恐ろしくもあり。くすっと笑って明るく鑑賞するのが正解とも思います。

「コット、はじまりの夏」2024/02/03 22:47

2022年、アイルランド映画。英題「The Quiet Girl」のとおり、主人公はとても無口で内気な女の子。家庭にも学校にも居場所がないというか、露骨なイジメや虐待ではなく、「雑に扱われる」ってやつでしょう。特に、父親が最悪。対人関係において親しみやリスペクトが薄いと自己肯定感下がることってありえますよね。
あまり喋らず笑わないコットを、温かく迎え入れるのが、遠縁の夫婦。
「ハイジ」のパターンです。愛情と、田舎の美しい風景、素朴で生き生きした生活が、幼い少女の中に何かを芽生えさせる。
それによっておしゃべりになったりはしません。体を動かす方が性に合うタイプなのかもしれません。
そして最後に彼女の口にする言葉が、効いてきます。

「笑いのカイブツ」2024/01/31 23:04

好きなことに夢中になる。それが、こんなにも痛々しいものなのだなんて。
血のションベンってワードに、震える。
ツチヤタカユキ氏の私小説を原作に、岡山天音が怪演。笑いのネタに人生を賭ける、というか、賭けざるを得ない。お笑い以外のことにはまるで頓着しない。
お笑い界に全力でぶつかっていく姿を描く一方で、お金の無いツチヤが色々なバイトをするシーンが描かれますが、勤労意欲ゼロ、まるで働けていません。方々で迷惑をかけます。
ひとことで言えば、駄目人間。
彼の情熱、努力、才能を認める人たちもいますが、周囲と上手くやっていけず、ツチヤは壁にぶつかります。
頭をぶつけ続け、壁に開いた穴を突き破って。
ツチヤはまだまだ、ネタを書き続ける。

「劇場版 響け、ユーフォニアム」2024/01/28 12:20

宇治市在住者にとって、見知った景色が多数。川沿いの虫まで描かれていた。
民放局で放送されていたアニメ作品の、劇場版。最近そういう流れが多いですが、新作はNHKで作成されるそうで、それに先立ち、正月に連続四作品を放送してくれました。
京都の吹奏楽部の部員たちが、全国大会を目指す部活モノ。吹奏楽って打楽器と管楽器だけかと思っていたら、ハープもあるのですね。
高校生たちの繊細な心情、人間関係がストーリーの軸ですが、真の見所はクライマックスの演奏シーンでした。
言葉は、要らない。
モノローグもイメージ映像も無い。
奏でられる音楽と、登場人物たちの姿、表情。
それだけで十分感動的に盛り上げられる。京都アニメーションのクオリティが素晴らしい。
一つだけ残念だったのは、原作と違って、台詞が京都弁じゃないところかなあ。