「国宝」 ― 2025/08/02 00:07
六月にリアル人間国宝の「残月」の静謐さに感銘を受けましたが。
話題の映画「国宝」は激しさや華やかさ重視の演目を揃えて、歌舞伎っぽいというか、映像で盛り上げるならこうこないと、っていう。
身も心もボロボロのグシャグシャになって死んでいく「曽根崎心中」の、必死の形相はちっとも美しくない。ただ、鬼気迫る迫力があります。
たどり着きたい場所、成就させたい舞台。
半世紀の時をかけ、主人公が歌舞伎界の御曹司と切磋琢磨したり血筋の壁にぶつかったりしながら、芸の他に全てを失っていくお話。才能は認められていたのに、師匠の養子にはしてもらえなかったのですよ。なんて孤独で、厳しい。
他の登場人物たちはけっこうエピソード端折られている感じですし、長い原作小説の方も今度読んでみようと思います。
話題の映画「国宝」は激しさや華やかさ重視の演目を揃えて、歌舞伎っぽいというか、映像で盛り上げるならこうこないと、っていう。
身も心もボロボロのグシャグシャになって死んでいく「曽根崎心中」の、必死の形相はちっとも美しくない。ただ、鬼気迫る迫力があります。
たどり着きたい場所、成就させたい舞台。
半世紀の時をかけ、主人公が歌舞伎界の御曹司と切磋琢磨したり血筋の壁にぶつかったりしながら、芸の他に全てを失っていくお話。才能は認められていたのに、師匠の養子にはしてもらえなかったのですよ。なんて孤独で、厳しい。
他の登場人物たちはけっこうエピソード端折られている感じですし、長い原作小説の方も今度読んでみようと思います。
「教皇選挙」 ― 2025/04/30 23:31
CONCLAVE
近々本物の教皇選挙が行われるし、映画の方も観に行こう。同じように思った人は少なくないのでしょう、劇場は人多く、パンフレットは完売の札。
ネタバレ厳禁。そうか、こう来るか。というラストでした。
世界中から選挙権被選挙権を持つ枢機卿たちが集まる。使用言語が英語だったりイタリア語だったり。公用語はラテン語なのでしょうか?
旧来のカトリックの姿勢を取り戻すのか、現代に合わせた改革を進めるか、アフリカ系初か、辞退したい者か、野心家か。
時期教皇が決まらぬまま投票が繰り返され、次々と波乱が起こる。
仰々しい宗教的権威が大写しにされ、同じ衣装の老眼男に埋め尽くされた画面はピントが合っていない部分が極端にぼやけ、呼吸音を息づかいとしてあえて聴かせてくるのがうるさく感じられる。ちょっと苦手な種類の映画です。
そこへ風穴が空き、亀が地を這う。
近々本物の教皇選挙が行われるし、映画の方も観に行こう。同じように思った人は少なくないのでしょう、劇場は人多く、パンフレットは完売の札。
ネタバレ厳禁。そうか、こう来るか。というラストでした。
世界中から選挙権被選挙権を持つ枢機卿たちが集まる。使用言語が英語だったりイタリア語だったり。公用語はラテン語なのでしょうか?
旧来のカトリックの姿勢を取り戻すのか、現代に合わせた改革を進めるか、アフリカ系初か、辞退したい者か、野心家か。
時期教皇が決まらぬまま投票が繰り返され、次々と波乱が起こる。
仰々しい宗教的権威が大写しにされ、同じ衣装の老眼男に埋め尽くされた画面はピントが合っていない部分が極端にぼやけ、呼吸音を息づかいとしてあえて聴かせてくるのがうるさく感じられる。ちょっと苦手な種類の映画です。
そこへ風穴が空き、亀が地を這う。
「事実無根」 ― 2025/03/02 23:12
京都のご当地自主制作映画で、冒頭から見たことある風景が。上映回数少ないこともあってか、休日は満席、めでたく上映期間延長。作品の舞台になっているカフェにも、一度行ってみたいです。
したたかな妻に捨てられた、親父ふたりが泣く。娘の素直な頑迷さが個性的。不器用に人生やっている人びとに優しい系のホームドラマ。
登場人物たちは、少しずつ嘘をつきます。
他者を思いやる嘘もありますが。
自分のつく嘘は致し方ないことで。
他人に嘘をつかれると不快になる。
自分の心を守りたい。人間なんて弱くて勝手なもの。
でも、それだけではない、本音のことばと、人とのつながりが描かれます。
したたかな妻に捨てられた、親父ふたりが泣く。娘の素直な頑迷さが個性的。不器用に人生やっている人びとに優しい系のホームドラマ。
登場人物たちは、少しずつ嘘をつきます。
他者を思いやる嘘もありますが。
自分のつく嘘は致し方ないことで。
他人に嘘をつかれると不快になる。
自分の心を守りたい。人間なんて弱くて勝手なもの。
でも、それだけではない、本音のことばと、人とのつながりが描かれます。
「ベルサイユのばら」 ― 2025/02/09 23:10
原作未読、宝塚も見たことないので、仏革命というと教科書の記述と「レ・ミゼラブル」と「べにはこべ」のイメージ。
要所に音楽と映像を流し高らかに歌い上げるミュージカル風演出。コレのおかげで、細かいエピソードを丁寧に積み上げることができずとも(上映時間が限られますからね)、不思議と説得力と高揚感をもたらします。
激動の時代、花の都に集った若者たちの四角関係が基本ストーリーですが。
前半は、愛くるしいマリー・アントワネットが激しい思慕の情と、その痛みと喜びを知る。
後半は、凜々しいオスカルが苦悩しながらも戦い、自由な人生をつかみ取っていく。
自由に生きる。
運命に縛られながら、白と赤のばらが、美しく咲きます。
要所に音楽と映像を流し高らかに歌い上げるミュージカル風演出。コレのおかげで、細かいエピソードを丁寧に積み上げることができずとも(上映時間が限られますからね)、不思議と説得力と高揚感をもたらします。
激動の時代、花の都に集った若者たちの四角関係が基本ストーリーですが。
前半は、愛くるしいマリー・アントワネットが激しい思慕の情と、その痛みと喜びを知る。
後半は、凜々しいオスカルが苦悩しながらも戦い、自由な人生をつかみ取っていく。
自由に生きる。
運命に縛られながら、白と赤のばらが、美しく咲きます。
「室町無頼」 ― 2025/02/03 22:37
松竹・木下グループのお行儀の良い時代劇の次に、東映の王道アクション娯楽活劇。
応仁の乱の数年前、荒廃した都で民衆が蜂起する。首謀者は弱きを助け悪を挫く牢人、蓮田兵衛。大泉洋演じる主人公に導かれ、棒術の達人となった少年が右腕となって大活躍。
それを迎え撃つ骨皮道賢(実在の人物)は蓮田のかつての悪友という設定。
のっけから死体の山、多くのエキストラが暴れ回り、炎が世を焼き払う。大規模な撮影です。池頼広の音楽も派手でいい意味で時代劇っぽくないノリの良さ。
脚本もつとめた入江悠監督はアクションとか時代物のイメージは全然無かったのですが。こんな盛大な作品も撮るのですね。
応仁の乱の数年前、荒廃した都で民衆が蜂起する。首謀者は弱きを助け悪を挫く牢人、蓮田兵衛。大泉洋演じる主人公に導かれ、棒術の達人となった少年が右腕となって大活躍。
それを迎え撃つ骨皮道賢(実在の人物)は蓮田のかつての悪友という設定。
のっけから死体の山、多くのエキストラが暴れ回り、炎が世を焼き払う。大規模な撮影です。池頼広の音楽も派手でいい意味で時代劇っぽくないノリの良さ。
脚本もつとめた入江悠監督はアクションとか時代物のイメージは全然無かったのですが。こんな盛大な作品も撮るのですね。
「雪の花-ともに在りて-」 ― 2025/02/02 23:00
清廉、としか言い様がない。
天然痘撲滅のため原始的なワクチン(種痘)の普及に人生を賭ける。それが偉い政治家とか学者とかじゃなくて、一介の町医者(しかも美男美女夫婦)なのです。
医師・笠原良策を演じた松坂桃李くん、時代劇やるには背が高すぎるなー、と思うのですが、原作・吉村昭で監督・小泉堯史なら見てみたい。小泉監督らしい、人間の美しい生き様が、美しい映像(ロケ地も良い所を選んで撮影しています)と共に描かれます。加古隆の音楽も、チェロを中心とした楚々としたもの。そして相変わらず、役所広司が登場すると画面に不思議な活力が生じます。
当時の福井のお殿様が話の分かる名君だったことも大きいのでしょうが、実際には、新しい医療を試みるのは、もっと多くの困難があったはず。
病人の描写も含めて、あまりに美しすぎて迫力には欠けるのですが、ちょっと疲れているときには、こんな映画もいいな。
天然痘撲滅のため原始的なワクチン(種痘)の普及に人生を賭ける。それが偉い政治家とか学者とかじゃなくて、一介の町医者(しかも美男美女夫婦)なのです。
医師・笠原良策を演じた松坂桃李くん、時代劇やるには背が高すぎるなー、と思うのですが、原作・吉村昭で監督・小泉堯史なら見てみたい。小泉監督らしい、人間の美しい生き様が、美しい映像(ロケ地も良い所を選んで撮影しています)と共に描かれます。加古隆の音楽も、チェロを中心とした楚々としたもの。そして相変わらず、役所広司が登場すると画面に不思議な活力が生じます。
当時の福井のお殿様が話の分かる名君だったことも大きいのでしょうが、実際には、新しい医療を試みるのは、もっと多くの困難があったはず。
病人の描写も含めて、あまりに美しすぎて迫力には欠けるのですが、ちょっと疲れているときには、こんな映画もいいな。
「犯罪小説集」 ― 2025/01/18 16:34
吉田修一の短編小説集は、どちらかというと、人生転落小説集で、読んでいて陰鬱になってきます。犯罪の骨格は、賭け狂いや村八分や誘拐や、どこかで聞いたことがあるようなものですが、そこへ至るまでの道筋が、淡々と、グロテスクに、時に幻想を交えて語られる。
花かんむりや、曼珠沙華や、監視カメラや、飼い犬や、白蛇が、育まれる凶暴性に寄り添う。
与える者と与えられる者は、奪われる者と奪う者なのか。
与え、奪われていた者が、どこかで、残酷に奪う者へと、転化する。
花かんむりや、曼珠沙華や、監視カメラや、飼い犬や、白蛇が、育まれる凶暴性に寄り添う。
与える者と与えられる者は、奪われる者と奪う者なのか。
与え、奪われていた者が、どこかで、残酷に奪う者へと、転化する。
「侍タイムスリッパー」 ― 2024/10/31 22:39
タイトルそのまま、幕末のお侍さんが現代にタイムスリップします。山口馬木也映画初主演。
チョンマゲの侍が、普通の踏切渡ったり喫茶店で座ったりするだけで画的にオモシロイ。
武士は愚直なまでにまっすぐで、ショートケーキの美味に感激し、初めてのTV時代劇に興奮する様子がオモシロイ。
現代に生きる新左衛門の、武士としての剣、時代劇の作り手としての剣戟がカッコイイ。
時代劇やチャンバラには京都東映撮影所が大いに関わっています。先頃真田広之が米国で一山当てましたし、時代劇チャンバラの風が吹いているのでしょうか。
低予算の自主制作映画、と言っても、数千万自腹切ったという安田監督。東京の一館のみの上映から口コミで評判が伝わり大手シネコンで全国公開になって、本当に良かったですね。
愛すべきキャラクター、伝統の技術、創造の情熱が、夢を現実に。
チョンマゲの侍が、普通の踏切渡ったり喫茶店で座ったりするだけで画的にオモシロイ。
武士は愚直なまでにまっすぐで、ショートケーキの美味に感激し、初めてのTV時代劇に興奮する様子がオモシロイ。
現代に生きる新左衛門の、武士としての剣、時代劇の作り手としての剣戟がカッコイイ。
時代劇やチャンバラには京都東映撮影所が大いに関わっています。先頃真田広之が米国で一山当てましたし、時代劇チャンバラの風が吹いているのでしょうか。
低予算の自主制作映画、と言っても、数千万自腹切ったという安田監督。東京の一館のみの上映から口コミで評判が伝わり大手シネコンで全国公開になって、本当に良かったですね。
愛すべきキャラクター、伝統の技術、創造の情熱が、夢を現実に。
「悪は存在しない」 ― 2024/07/11 22:40
あっ!と思いました。最後、何が起こったのか分からない(説明されない)系の映画だったのです。
水を大切にする山の人々とグランピング開発したい都会の人々を描いていたのに、唐突に、ファンタジーになった感じで。
山の中の霧の広場は、生と死の狭間の世界、みたいなものだったのでしょうか。彼女は生きているのか、死んでしまったのか。
何一つ説明されません。
水汲みや、薪割りや、徒歩や車の移動による景色の流れのような、単調な繰り返しの映像がたびたび出てきます。繰り返しは、事件によって破られました。
水を大切にする山の人々とグランピング開発したい都会の人々を描いていたのに、唐突に、ファンタジーになった感じで。
山の中の霧の広場は、生と死の狭間の世界、みたいなものだったのでしょうか。彼女は生きているのか、死んでしまったのか。
何一つ説明されません。
水汲みや、薪割りや、徒歩や車の移動による景色の流れのような、単調な繰り返しの映像がたびたび出てきます。繰り返しは、事件によって破られました。
「碁盤斬り」 ― 2024/06/24 22:53
お江戸人情とチャンバラを味わうため、年に一本ぐらいは観に行きたくなる時代劇映画。
貧乏でも清廉に生きる浪人と、お金にうるさい大店の主人。立場を超えて碁盤を挟み友情が育まれる。
と、いうのが元ネタの落語のストーリーだそうですが、それに因縁の相手との対決が加えられて。お話の流れとしては、そこは無いほうがすっきりします。映画的には、激しいアクションシーンが生まれ、白石和彌監督っぽい作品になります。
草彅剛主演作品を見るのは(映画もドラマも)、コレが初めてですが、この方の演じる柳田格之進の人物像が独特です。もう少し融通効かせても良いのではと首をかしげたくなることもありあります。清原果耶演じる娘さん共々、良しとせぬことは決して譲らない。
損得の問題ではないのでしょう。
あらゆる苦難を負ってでも守り貫く、武家の誇り。
貧乏でも清廉に生きる浪人と、お金にうるさい大店の主人。立場を超えて碁盤を挟み友情が育まれる。
と、いうのが元ネタの落語のストーリーだそうですが、それに因縁の相手との対決が加えられて。お話の流れとしては、そこは無いほうがすっきりします。映画的には、激しいアクションシーンが生まれ、白石和彌監督っぽい作品になります。
草彅剛主演作品を見るのは(映画もドラマも)、コレが初めてですが、この方の演じる柳田格之進の人物像が独特です。もう少し融通効かせても良いのではと首をかしげたくなることもありあります。清原果耶演じる娘さん共々、良しとせぬことは決して譲らない。
損得の問題ではないのでしょう。
あらゆる苦難を負ってでも守り貫く、武家の誇り。
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