「嘘八百」2018/01/19 23:53

堺が舞台の、ご当地映画だから。この映画を観に行った理由の第一がそれです。撮影地・堺(ものすごく局地的ピンポイントだったけど)の映画として、以前観に行った「セトウツミ」が大満足のできだったのでこれも期待していたのですが。
中井貴一主演のコメディ映画って、あんまり当たらないなあ。
最初に気になってしまったのが、「あんな狭い道に駐車したら迷惑やん!」……嘘がテーマの作品ですが、全体的に「嘘くささ」の方が出てしまう。演出のセンスがイマイチ。
骨董品の世界を扱うのですが、「ギャラリーフェイク」ほどの洗練も無く。
登場人物の掛け合いとかは面白かったのに。最初の方は騙し、騙されるテンポも良かったのだけど。
骨董品の鑑定もそうですが、占いとかジオラマとか、実のあるような無いような、虚のイメージが盛り込まれています。そして、海とカモメに象徴される、自由。
嘘に踊らされ、騙したり騙されたりすることも含めて、楽しんでいこうとするスタンスです。

「女の一生」2018/01/13 16:07

新年一発目の映画は、暗いウツ作品。モーパッサンの原作は読んだことは無いけど有名なので、暗い話なのは承知の上です。
貴族の御嬢さんが結婚した相手は、一見爽やかな好青年。暖炉の薪すらケチる、それでいて馬車に紋章描くのに拘ったり。そして浮気者。よりによってヒロインの心許した相手と不倫しちゃう下衆野郎。
さらに悲惨なのが、一人息子が父親に似て女にだらしが無く、さらに山っ気ばかりのボンクラであること。一旗揚げると家出し、事業が失敗したと言っては「ママ、お願い」と借金の肩代わりをさせる。
幸せそうに農園で作業する娘時代。
亭主と仲睦まじくデート。
息子と楽しげに戯れる様子。
温かく幸せそうな回想シーンが度々挿入されることで増々辛い。
いくつもあった農園も屋敷も失い、「ママは無一文になりました」……
ヒロインの、なにもかも他人に言われるがままに従ってしまう、己で決定できない意志の無さが気になりました。
亭主がボンクラなのはしょうもないのに引っかかってしまって可哀想なんですが、息子については子供のころからワガママちゃんだったのですから、もっとびしっと躾けてやっていたら違った成長をしていたかもしれないのに。
あんなんでも、我が息子は可愛いのか……
ラストほんのり光が見えるような描き方をしていましたが、とてもそんな風には思えない、女の一生台無しストーリー。

「雲のむこう、約束の場所」2018/01/03 23:52

日本は南北分断され、北海道を支配するユニオン(ソ連的な国家)と戦争間近、というSF設定。今の朝鮮半島を思い浮かべてちょっとヤな気分にもなりますが、しかしその分、色々リアルに感じることができます。
核ではなく、別次元の空間(宇宙の夢?)を持ってくるという謎のテクノロジーを研究していて、そのあたりの理論はサッパリなのですが、しかしお話の流れとしては、過不足なくって、とても完成度の高い脚本だと思いました。
前夜放送の「秒速5センチメートル」では<手に届かないどこか遠くにあるものを思う>という状況に酔ってるばかりでそれ以上前進できない感じだったのですが、「雲のむこう、約束の場所」では、壁を突破します。
主人公の少年に、頼りになるお友達がいたのが大きいですね。
少年時代の憧れ、恋愛、友情、ファンタジー、社会不安、武装地下組織に空中戦まで、盛りだくさんを美しい映像で描かれて、大満足でした。

「秒速5センチメートル」2018/01/02 23:40

2016年大ヒットの新海誠監督の、2007年作品、深夜TVで放送。
3話構成で、1話の切なさがすごく、良い。中一男子にとって、東京から栃木までの旅はとんでもなく遠距離だよねえ。しかも、電車は雪で進まない。山崎まさよしの歌が切ない。
それでも会いに行く少年、それでも待ち続ける少女。
しかしそれが、どうしてこうなった?2話の内容からてっきり彼女はお亡くなりになったのかと思ったのに、3話でちゃんと登場、しかも結構幸せそう。
逆だなあ、と思いました。「君の名は。」は二人が心通わせていく過程をバッサリカットしていましたが、「秒速」の方は二人の交流が途絶えた理由が描かれない。中一の時点ではたびたびお手紙のやり取りしていたのに、成長してケータイも持つようになってからの方が疎遠になるとか……
まあ、ありきたりに考えれば、遠くにいる人との絆を保ち続けることより身近に生じるアレコレに向き合う方を大事にしたってことなんでしょうが……
遥かな距離、ゆっくりと変化させる時の流れ、届かない思いを抱えた孤独感。

「関ヶ原」2017/10/14 23:44

勝利するのは誰だ。まっすぐ筋を通す義か、巧妙な野心家の利か。
日本全国で刃も火薬も使わない「戦」が繰り広げられている今だからこそ、観たい映画。
なーんて、たまたま偶然のタイミングですが。
400年以上前の大合戦も、本当は刃も火薬も使わない時点から始まっていたのですが、それでも、やはり圧倒的なのは合戦シーンでした。ぶつかり合い転げまわる兵、槍衾、爆発、戦場を駆ける軍馬の蹄の響きとか、スクリーンで観る価値はあったと思います。
原田眞人監督と言えば美しい映像。それと芸達者な役者さんをふんだんに使った群像劇のイメージも強いです。でも登場人物多すぎて、ちょっと、「シン・ゴジラ」を思い浮かべました。あそこまでではないけど、セリフ早口でどんどん進めていって、余韻が薄い。まあ、大河ドラマみたいにジックリ人物描写はできませんからね。
豪華俳優陣で印象的だったのが、
主演・岡田准一。この人は男前だけど背があんまり高くないから時代劇向きだなあ。大河ドラマで鍛えられてますし、乗馬姿がキマっている。
対照的に、ひょろ長い東出昌大。大きいのに何故かちょっと頼りない情けない系が似合う彼が、戦場の悩める若者・小早川秀秋。
平岳大さんの島左近がものすごく強そうで頼もしさ抜群。
あんな太った役所広司観たことない、野心家・徳川家康。
有村架澄が可愛すぎる。お姫様ですかってくらい。甘いラブ・ストーリー要素を入れたがるのも原田監督らしい。
松山ケンイチ演じる直江兼続のシーンは演技も演出もサイコーに格好良かったのですが、にもかかわらず「別に省いても良かったんじゃないの」と思ってしまうのはこのシーン以外は全く影も形もない空気なキャラになっているから。役者のせいじゃない、脚本のせい。

「崖の上のポニョ」2017/09/24 01:56

2008年、明るくカワイイ主題歌が話題を呼んだ、ジブリ版人魚姫。金曜ロードショーで久々に鑑賞です。
ポニョは可愛いのだけど、それはクラリスとかシータみたいな「清楚系」ではありません。
もっとリアルな女の子。
清らかな海からゴミだらけの海へ飛び出していったお転婆。添加物たっぷりのハムが好き。宗介君のお母さんも、同じ印象なんですね。危ないって制止されるのを振り切って車を発進させ、結構乱暴な運転でかっ飛ばして行きます。
ちっとも品行方正ではない。気に入らない相手に水をかけるポニョと、帰ってこない亭主に向かって「BAKABAKABAKA……」とモールス打ちまくるお母さんと、イメージが重なります。
力強く、時に荒ぶる「海」や「自然」のイメージでもあります。
宮崎アニメは、やっぱり女性の力強さが魅力なのです。
ラストで魔法を失ったポニョですが、人間の女の子としてもこれまで通り、自らの欲望と喜怒哀楽に忠実に突き進んでいくに違いありません。宗介くん、フォローがんばってね。

「セールスマン」2017/07/23 23:20

何年か前に観た「別離」がとても良かったので、ファルハディ監督の今作も期待して観に行きました。
「別離」に比べるとちょっと分かりにくかったというか。タイトルにもなった劇中劇の「セールスマンの死」もタイトルしか知らなかったし。パンフレット見て初めてあのシーンはこういう意味だったのか理解できた点がチラホラ。
イランの人々がとても誇り高く、その分体面を気にするし辱的な態度を取られることに過敏に反応するということがミソです。
善良で気の良いひと。それが、状況の変化によってイライラトゲトゲした別の顔になるのが、とても自然に上手に描き出されます。
アクシデントがあって、いろんな意味で傷ついた夫婦。
神経質になって、でも忘れたいそっとしておいてほしい妻。
どうしても報復したい夫。
後味の悪さは、「別離」以上のものがありました。

「思い出のマーニー」2017/07/15 01:33

久しぶりにのんびりと金曜ロードショー。


外国の児童文学チックが全開なお話。
としか言えないなあ。序盤に見られた、主人公アンナさんの、繊細さと鬱陶しさがいかにも少女らしい青臭さで結構良いと思いました。そこから、普通に女の子同士の友情につなげて遊んだり喧嘩したりして……でも、ファンタジーにしちゃったからなあ。
周りの大人たちの寛大さが大したものです。夜間に出歩いて度々自力で帰宅できなくなる徘徊少女に、異様に優しい。
そんなこんなで、青臭さがリアルな割に全体的にふわっとした白々しさを感じるのですが。
本当に、恵まれた子だなあって結論でいいのだろうか。
自分が嫌いなそこのお嬢さん、あなた結構愛されてますよ!

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」2017/07/01 02:00

慣れした親しんだ地元だからこそ、離れたい。そこに居られない。
アカデミー賞で主演男優と脚本賞とった作品。「マンチェスター・バイ・ザ・シー」までが町の名称で、コンサートテロのあったイギリスのマンチェスターとは別物です。
無愛想で情緒不安定な男が、兄の死をきっかけに故郷へ戻る。折に触れて、友達や家族に囲まれて楽しげだった過去が再生されるのですが。
結局のところ主人公のリーは、悲しみを克服することはできません。観客も、そしておそらくは心臓を患って亡くなった彼のお兄さんも、彼が故郷に戻って昔のように活き活きした生活を取り戻すことを期待してしまうのですが、そうそう簡単に乗り越えることはできません。
主人公の元奥さんは、年月を経て人生の再出発を始めました。
主人公の甥っ子は、父親が亡くなったり母親に受け入れてもらえなかったりと円満な家庭環境とは言い難いのですがそれにもかかわらず部活やらガールフレンドやら高校生活を充実させることを最優先に考えています。
しかしリーは、罪の意識から逃れられません。どうしても。
それでも、いつの日か虚しく苦しい人生から逃れたい、とは思っているのでしょう。
ほんのわずか、0.5歩だけ、前に進んだかな?

「花戦さ」2017/06/26 00:32

どの花が美しいか。
どれも、それぞれに。
なーんて、某アイドルグループの代表曲みたいなマトメになったけど。
期待以上に面白かったです。戦国末期の時代の暗さもあるのですが、ユーモラスな部分も結構あります。「花の中に、仏様がいる」……野村萬斎演じる池坊専好の、人に優しく天真爛漫なキャラクターの魅力が、お話を殺伐とはさせません。
クローズアップを多用した映像で、豪華キャストの熟練の表情(頭踏みつけられる佐藤浩市とか!)の演技とお花の可愛らしさを味わえます。
ベテランはもちろん、中堅も若手も子役も犬に至るまでキャストに文句なし。京都が舞台なので京・大坂人はみんな上方言葉でしゃべるし。
久石譲の音楽も相変わらず良かった。
森下佳子脚本は、冷静に考えれば多少無理のありそうな強引な話の展開でも、キャラクターの魅力と勢いで細かい疑問を吹き飛ばして楽しませてくれます。