「悪は存在しない」 ― 2024/07/11 22:40

あっ!と思いました。最後、何が起こったのか分からない(説明されない)系の映画だったのです。
水を大切にする山の人々とグランピング開発したい都会の人々を描いていたのに、唐突に、ファンタジーになった感じで。
山の中の霧の広場は、生と死の狭間の世界、みたいなものだったのでしょうか。彼女は生きているのか、死んでしまったのか。
何一つ説明されません。
水汲みや、薪割りや、徒歩や車の移動による景色の流れのような、単調な繰り返しの映像がたびたび出てきます。繰り返しは、事件によって破られました。
水を大切にする山の人々とグランピング開発したい都会の人々を描いていたのに、唐突に、ファンタジーになった感じで。
山の中の霧の広場は、生と死の狭間の世界、みたいなものだったのでしょうか。彼女は生きているのか、死んでしまったのか。
何一つ説明されません。
水汲みや、薪割りや、徒歩や車の移動による景色の流れのような、単調な繰り返しの映像がたびたび出てきます。繰り返しは、事件によって破られました。
「火星年代記」 ― 2024/07/14 11:25
クローゼットの中の暗闇も、宇宙空間の暗闇も、つなげるイメージ。
1950年刊行のレイ・ブラッドベリの伝説的幻想小説を、90年代に加筆修正した新版。
2030年(旧版では1999年)から次々と探検隊を送り込み、火星人と接触し、ほとんど死に絶えた火星人に変わり次々と移住する。
著者の代表作「華氏451度」を思わせる、書物を焼く設定も出てきます。地球でも火星でも、人間のやることっていうのは。
数年で大量に火星に町を作り、しかし、大きな戦争が起きた地球を、忘れ捨てることはできなかった。
さらに月日が流れ、最終話「百万年ピクニック」で、新たな火星人が誕生する。
1950年刊行のレイ・ブラッドベリの伝説的幻想小説を、90年代に加筆修正した新版。
2030年(旧版では1999年)から次々と探検隊を送り込み、火星人と接触し、ほとんど死に絶えた火星人に変わり次々と移住する。
著者の代表作「華氏451度」を思わせる、書物を焼く設定も出てきます。地球でも火星でも、人間のやることっていうのは。
数年で大量に火星に町を作り、しかし、大きな戦争が起きた地球を、忘れ捨てることはできなかった。
さらに月日が流れ、最終話「百万年ピクニック」で、新たな火星人が誕生する。
「けむたい後輩」 ― 2024/07/20 23:31
朝ドラのヒロインの「ハテ?」が脚光を浴びる今日この頃。
柚木麻子の女子大生小説。自分の居場所を求める男女の、苛立ちや卑小さを容赦なく描く。
誰かを必要とすることも、支え、ケアすることも、本当に美しいことなのか。自分の存在意義を他者に委ね、必要以上に依存してしまうのは、ひどく頼りない。
先輩を慕い崇拝する真美子は健気で一生懸命で、しかし読んでいて、もう少し泣けばいいのに、とも思ってしまう。お金持ちのお嬢さんで体が弱いことから、とても大切にされて育ち、不自由なようで誰よりも自由で、ただ一つを除いて、やることなすこと全部成功する。
ただ、この小説は浮世離れした真美子は主人公と言う名の舞台装置で、彼女のそばにいる二人の女性の闘いと浮き沈みを描くのが核なのでしょう。
一人で力強く立てる女性は、孤独なのか。依存する女は、愚かなのか。
ちゃんと認めてくれる人が、いるか、どうか。
柚木麻子の女子大生小説。自分の居場所を求める男女の、苛立ちや卑小さを容赦なく描く。
誰かを必要とすることも、支え、ケアすることも、本当に美しいことなのか。自分の存在意義を他者に委ね、必要以上に依存してしまうのは、ひどく頼りない。
先輩を慕い崇拝する真美子は健気で一生懸命で、しかし読んでいて、もう少し泣けばいいのに、とも思ってしまう。お金持ちのお嬢さんで体が弱いことから、とても大切にされて育ち、不自由なようで誰よりも自由で、ただ一つを除いて、やることなすこと全部成功する。
ただ、この小説は浮世離れした真美子は主人公と言う名の舞台装置で、彼女のそばにいる二人の女性の闘いと浮き沈みを描くのが核なのでしょう。
一人で力強く立てる女性は、孤独なのか。依存する女は、愚かなのか。
ちゃんと認めてくれる人が、いるか、どうか。
「ひらいて」 ― 2024/07/28 00:03
高校三年生の愛ちゃんが、クラスの男の子(地味目)に木っ端みじんにフラれる、百合小説。彼には長く付き合っている彼女がいて、ふたりの強固な絆に入り込むスキは無い。それでも自らの想いにパンパンに膨らんだ愛ちゃんは、自分を止められない。生活は乱れ、成績も下がり、大学推薦もフイにして。
以前見た同名映画は、監督さんが綿矢りさの原作小説のファンで、気合いの入った作品でした。ストーリーはほぼ原作どおり、映像で具象化された世界観に比べると、小説の方がぼやけた作り物めいています。主人公をはじめとして、登場人物が割と極端な性格設定ですし。
それでも、面白く読めました。愛ちゃんは自分のエゴに振り回されてかなり無茶をするのですが、その暴走は、切実な渇望から生まれているから。熱に突き動かされるまま、夜の校舎の窓を飛ぶ。
閉じ込められた想い、袋小路が、ひらかれる。
以前見た同名映画は、監督さんが綿矢りさの原作小説のファンで、気合いの入った作品でした。ストーリーはほぼ原作どおり、映像で具象化された世界観に比べると、小説の方がぼやけた作り物めいています。主人公をはじめとして、登場人物が割と極端な性格設定ですし。
それでも、面白く読めました。愛ちゃんは自分のエゴに振り回されてかなり無茶をするのですが、その暴走は、切実な渇望から生まれているから。熱に突き動かされるまま、夜の校舎の窓を飛ぶ。
閉じ込められた想い、袋小路が、ひらかれる。
「八つ墓村」 ― 2024/07/31 22:56
昨年観た水木しげる生誕100周年記念映画が、「横溝正史っぽい」と誰もがイメージした戦後昭和田舎を舞台にしていたのですが、TVドラマは何度も放映されていますが、原作小説は読んだことがありませんでした。
そういうわけで初めて手に取った横溝正史は、名探偵・金田一耕助は影が薄く(笑)、辰也君の冒険、というか、事件の渦中にいた彼の手記という形。
禍々しい過去のある村で、短期間に次々と人が死んでいく。それと平行して、隠し通路や鍾乳洞の探検があり恋心が芽生えたりもする。登場人物は多いけれど、とても分かり易く読みやすい、ザ・エンタメ小説。
そういうわけで初めて手に取った横溝正史は、名探偵・金田一耕助は影が薄く(笑)、辰也君の冒険、というか、事件の渦中にいた彼の手記という形。
禍々しい過去のある村で、短期間に次々と人が死んでいく。それと平行して、隠し通路や鍾乳洞の探検があり恋心が芽生えたりもする。登場人物は多いけれど、とても分かり易く読みやすい、ザ・エンタメ小説。
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