「芙蓉千里」2024/08/31 11:47

「北の舞姫」「永遠の曠野」と合わせた三部作。海を超え大陸に渡った少女・フミの波乱に満ちた半生。
始めは、女郎宿という、女の世界を主な舞台として、共に売られたタエちゃんとのシスターフットもあり、かろうじて少女小説の形を保つのですが、二巻以降は作品舞台も広がり、やがてモンゴル人の独立運動にまで絡んでいく。ロシア革命以降アジア大陸にもたらした歴史小説の色合いが濃くなります。
角川の文庫版では、長かった最終刊は二冊に分けて全四巻になっていました。
女郎になることを夢見て、ハルビン一の舞姫になるためにあんなにも頑張ったのに。お世話になった人も築き上げてきた生活の基盤も、全てを捨てて、フミが選んだ道が、盗賊のおかみさんになること! ここは、ちょっと共感しづらいものがあります。
努力を惜しまぬ情熱も、酷い目に遭ってもへこたれないタフさも凄いのですが、最終巻ではフミの持つそもそもの基本スペックが超人的であることが示されます。それがあってこそ、激動の時代、命がけの冒険に身を投じて生き延びてこられたのは確かだと思います。
誰かに求められる存在になりたかった少女が。
自分が欲しいものを求めて、恐れること無く駆け巡る。