「緋色の研究」2024/10/06 17:05

A Study in Scarlet
名探偵ホームズの活躍するシリーズの第一作、1987年発表された当時は、さほど話題にはならなかったという。しかしながら、やはり、名探偵の推理の鮮やかさとキャラクター(犯罪研究のことは熱心だけど、それ以外のことについては地動説も知らない)、そして警察権力をコケにする感じがウケたのでしょうか。
二部構成で、負傷して戦地から戻ったワトソン医師が一人の私立探偵と出会い、同居するようになり、その推理力に敬服し、事件の真相にまで至るのが第一部。
第二部が、犯人側の事情というか、モルモン教支配の恐ろしさと悲劇、そして復讐者の物語が主となっていて、こちらの方がシンプルでドラマチックです。
ホームズ先生には、事件解説さえしてまえば、そういう劇的な人間の執念には、あまり興味がないかもしれませんが。

秋の夜長の月待ちコンサート2024/10/18 23:40

残念ながら、帰りに見上げた満月は、薄い雲に覆われてぼやけていました。
京都文化博物館の催し、事前申込不要で入場無料、仕事帰りに気軽に立ち寄れるのはありがたい。ベートーヴェンの「月光」や、モーツァルトの明るい曲が選曲される、楽しいコンサートでした。
しかし、来客多数で立ち見になってしまいました。待ち時間も含めて二時間立ちっぱなしは、しんどい。前半だけで帰れば良かったかも知れません。
せっかく来たのに入場できなかった人も多かったはずです。こういうイベントは、少額でも、入場料金は設定しておくべきなのだと思いました。

「リア王」2024/10/20 15:50

シェイクスピア四大悲劇の一つ。
リア王は引退するが、王位には就いたままみたいで(終身制?)、権限や財産は娘二人とその夫に譲って悠々自適の老後を過ごす予定。しかし、世話になるはずだった娘たちから邪険にされてしまい怒りと悲しみで嵐の中へ飛び出してしまう。
王様可哀想、という設定だけど、長女と次女が言うには、父親だけならまだしも、百人のお付きまで面倒見切れない、と。仮にも王様のご一家なのだから百人くらい召し抱えられないことはないだろうけど、その必要性は無いし、何より、このお父ちゃんも可愛げのない癇癪持ちで、それに手勢を率いさせたら面倒ごとが起こるに違いない、と考えるのは、理解できてしまう。
その前に、王様は不器用で口下手な末娘に腹を立てて勘当してしまうけど、コーディリアだけは父親を心配して助けようとする。しかし、この娘もやることが極端というか不用意というか、嫁ぎ先のフランスから軍隊率いてドーヴァーを渡ってしまう。
それでは、父王救出を名目に侵略してきたと思われでも仕方ないんじゃない(夫であるフランス王は、そのつもりだったのでは)??自分のところでお父ちゃんの面倒見ますよって、お姉さんたちにお手紙でも送れば良かったのに。
元ネタであるブリテンの伝説では、王様と末娘は和解し戦争に勝利してめでたし、めでたし。
ところが、シェイクスピア戯曲では、フランス軍は敗退し、捕虜となった末娘は陰謀の犠牲になって獄中死。
リア王は悲しみのあまり死んでしまう。長女と次女も、若い男を取り合って両者死亡。
家族は、正直に腹を割って話し合って、仲良くしよう。

「終点のあの子」2024/10/26 13:39

女子校って、こんな感じなのか。共学校の女子と同じような、違うような。
柚木麻子のデビュー作、「フォーゲットミー、ノットブルー」を含めた、娘さんたちの物語集。この方針を煮詰めて洗練させて、名門女子大を舞台にした「けむたい後輩」になるのでしょう。最後の、牡蠣の赤ちゃんのメタファーはうまく消化できない。鏡の国のアリスを読み返してみようか。
タイプの違う少女たちの自意識、傲慢や焦燥や失望や羨望でグツグツグルグルする感じに説得力がありました。
痛々しいような。
可愛らしいような。
そこから、彼女たちは各々の道を行く。

「侍タイムスリッパー」2024/10/31 22:39

タイトルそのまま、幕末のお侍さんが現代にタイムスリップします。山口馬木也映画初主演。
チョンマゲの侍が、普通の踏切渡ったり喫茶店で座ったりするだけで画的にオモシロイ。
武士は愚直なまでにまっすぐで、ショートケーキの美味に感激し、初めてのTV時代劇に興奮する様子がオモシロイ。
現代に生きる新左衛門の、武士としての剣、時代劇の作り手としての剣戟がカッコイイ。
時代劇やチャンバラには京都東映撮影所が大いに関わっています。先頃真田広之が米国で一山当てましたし、時代劇チャンバラの風が吹いているのでしょうか。
低予算の自主制作映画、と言っても、数千万自腹切ったという安田監督。東京の一館のみの上映から口コミで評判が伝わり大手シネコンで全国公開になって、本当に良かったですね。
愛すべきキャラクター、伝統の技術、創造の情熱が、夢を現実に。