「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」 ― 2021/02/09 22:42
角川文庫。このシリーズの第一作目、で間違いないと思うんだけど、「剥離城アドラ」はかつて放送されていたアニメシリーズでは取り上げられなかったエピソードっぽい。アニメの方でお話がまだ続いている感満載で不明な点が多々残されていたのだけど、そこまでたどり着くまで、道のりは遠い感じ。
京極堂シリーズっぽい気がしました。時代設定や和風洋風の違いはあるけれど、オカルトうんちくが長くて分かったような分からないような感じが。神秘・怪奇の発生する根本を突き詰めて再構築し解体していく感じが。
主人公(京極堂ポジション??)が周囲から舐められながら敬意を集めているあたりが面白い。これはこれで、一種のカリスマなんだろうけど当人は実に謙虚な僻み根性の持ち主。
しかし、ストーリーはちゃんと読んでもなお「何でこの人もこの人もこんな回りくどいことしてるん??」という疑問符がついてしまう。
派手な魔術バトルシーンとか、画が付いた方が分からないなりに見栄えを楽しめるなあ。
京極堂シリーズっぽい気がしました。時代設定や和風洋風の違いはあるけれど、オカルトうんちくが長くて分かったような分からないような感じが。神秘・怪奇の発生する根本を突き詰めて再構築し解体していく感じが。
主人公(京極堂ポジション??)が周囲から舐められながら敬意を集めているあたりが面白い。これはこれで、一種のカリスマなんだろうけど当人は実に謙虚な僻み根性の持ち主。
しかし、ストーリーはちゃんと読んでもなお「何でこの人もこの人もこんな回りくどいことしてるん??」という疑問符がついてしまう。
派手な魔術バトルシーンとか、画が付いた方が分からないなりに見栄えを楽しめるなあ。
「岸辺の旅」 ― 2021/02/13 22:39
2015年、日仏合作ってあるけど、役者も撮影も日本人。ヴェネチアで賞取った黒沢清監督作品がNHKで放送されていました。
三年前に行方不明になった夫が死者となって戻って来た。夫婦の物語だけど、それ以前の二人がどんな生活をしていたのかは描かれない。深津絵里演じる妻はピアノ教師、浅野忠信演じる夫は歯科医師だったけど、死者になってからは新聞配達したり、ギョーザ作ったり、物理現象を哲学的に講義する先生をやっていたり、なんだかつかみどころのないキャラクター。
死んだ夫と旅に出る。銀河鉄道みたいなキラキラしたものではなく、普通にJRとか路線バスに乗って。優雅なバカンスとかでもなくて、奥さん行く先々でご飯作ったり、割と楽しげに労働している。
しかし、ふたりが訪ねて行くのは死者と死者に関わる人々。のどかでまったりした日々に、異界の怪しさが隣り合わせ。
ただ、最も妖しかったのは、蒼井優の怪演!可愛くて恐ろしい、深津絵里と対面(対決)するワンシーンしか登場しないけど、オカルトでもなんでもない普通の場面なんだけど、ナマの女の怖さ炸裂!黒沢監督が「スパイの妻」でヒロインにキャスティングしたのも納得の凄まじい芝居でした。
蒼井優の出演作品他のも観たくなる。原作小説も読んでみたい。
三年前に行方不明になった夫が死者となって戻って来た。夫婦の物語だけど、それ以前の二人がどんな生活をしていたのかは描かれない。深津絵里演じる妻はピアノ教師、浅野忠信演じる夫は歯科医師だったけど、死者になってからは新聞配達したり、ギョーザ作ったり、物理現象を哲学的に講義する先生をやっていたり、なんだかつかみどころのないキャラクター。
死んだ夫と旅に出る。銀河鉄道みたいなキラキラしたものではなく、普通にJRとか路線バスに乗って。優雅なバカンスとかでもなくて、奥さん行く先々でご飯作ったり、割と楽しげに労働している。
しかし、ふたりが訪ねて行くのは死者と死者に関わる人々。のどかでまったりした日々に、異界の怪しさが隣り合わせ。
ただ、最も妖しかったのは、蒼井優の怪演!可愛くて恐ろしい、深津絵里と対面(対決)するワンシーンしか登場しないけど、オカルトでもなんでもない普通の場面なんだけど、ナマの女の怖さ炸裂!黒沢監督が「スパイの妻」でヒロインにキャスティングしたのも納得の凄まじい芝居でした。
蒼井優の出演作品他のも観たくなる。原作小説も読んでみたい。
「すばらしき世界」 ― 2021/02/14 23:12
長いオツトメを終えた男が堅気になろうと老眼鏡掛け、職探しをするも、思うようにいかない。結局かつての極道仲間といる方が歓迎されるし肩身の狭い思いをしなくて気楽だ。しかし彼らのような古いタイプのヤクザに未来はないことも分かっている。「娑婆は我慢の連続ですよ」
世の中にそうした生き辛さがあることは承知していたはずだけど、それでも凄く、悲しみがこみ上げてくる。役所広司演じる三上のキャラクターの魅力だ。几帳面で実直、良くも悪くも感情的で、笑顔は人懐こく理不尽に対して本気で怒る。三上の経歴は完全に社会の鼻つまみ者、でも彼を直接知る人たちは、後継人の弁護士もケースワーカーもみんな彼に好意的で助けの手をさしのべ、ようやく就職が決まった時には喜んでお祝いしてくれるのだ。
本作は実在の人物が主人公のモデルであり、ノンフィクション小説を原案としているけど、自分でオリジナル脚本を書いて撮るのが西川美和監督だ。
新しい居場所を失くさぬために職場のいじめを見て見ぬふりし、その日の晩に三上は病に倒れて亡くなった。パンフレットの、就職決まった時の笑顔のカットが悲しすぎる。
世の中にそうした生き辛さがあることは承知していたはずだけど、それでも凄く、悲しみがこみ上げてくる。役所広司演じる三上のキャラクターの魅力だ。几帳面で実直、良くも悪くも感情的で、笑顔は人懐こく理不尽に対して本気で怒る。三上の経歴は完全に社会の鼻つまみ者、でも彼を直接知る人たちは、後継人の弁護士もケースワーカーもみんな彼に好意的で助けの手をさしのべ、ようやく就職が決まった時には喜んでお祝いしてくれるのだ。
本作は実在の人物が主人公のモデルであり、ノンフィクション小説を原案としているけど、自分でオリジナル脚本を書いて撮るのが西川美和監督だ。
新しい居場所を失くさぬために職場のいじめを見て見ぬふりし、その日の晩に三上は病に倒れて亡くなった。パンフレットの、就職決まった時の笑顔のカットが悲しすぎる。
「ヤクザと家族 The Family」 ― 2021/02/21 12:30
ヤクザに家族を作る資格などない、という現実。
先日観た「すばらしき世界」が感動的だったのでヤクザつながりでこちらも観にいったのですが、あちらで役所広司がなんだかんだ私的に公的にお世話になることができたのは、だいぶ昔に組とは縁を切って奥さんとも離婚して心情的にはともかく実質的にまっさらでゼロからやり直しできたのが、逆に幸いしたのです。
こちらの綾野剛は同様に長期服役していても、組に籍は残したままで女ともつながりを有していたものだから、悲劇。「すばらしき」でハミダシ者を援助せずさらに締め付け疎外することは社会にとっても悪循環、と弁護士先生がおっしゃるシーンがありましたが、まさにそのまんまな展開になります。
二時間半もある長い映画ですが、始めの方、古いタイプのヤクザが落ち目になる前、主人公が親分と盃をかわす。そこまでの展開の方が熱くてスリリングで面白く思いました。舘ひろしが格好良すぎる。チンピラの襲撃受けた時に焼肉屋のオカミさんを背中にかばうヤクザの親分さん。格好良い、けど男気ありすぎてかえってファンタジー。
西川監督と同様ご自身でオリジナル脚本を書いてきた藤井道人監督。要所を抑えたストーリーだと思いますが、男性が撮る方が浪花節っていうか、浪漫主義的になるのが興味深い。
先日観た「すばらしき世界」が感動的だったのでヤクザつながりでこちらも観にいったのですが、あちらで役所広司がなんだかんだ私的に公的にお世話になることができたのは、だいぶ昔に組とは縁を切って奥さんとも離婚して心情的にはともかく実質的にまっさらでゼロからやり直しできたのが、逆に幸いしたのです。
こちらの綾野剛は同様に長期服役していても、組に籍は残したままで女ともつながりを有していたものだから、悲劇。「すばらしき」でハミダシ者を援助せずさらに締め付け疎外することは社会にとっても悪循環、と弁護士先生がおっしゃるシーンがありましたが、まさにそのまんまな展開になります。
二時間半もある長い映画ですが、始めの方、古いタイプのヤクザが落ち目になる前、主人公が親分と盃をかわす。そこまでの展開の方が熱くてスリリングで面白く思いました。舘ひろしが格好良すぎる。チンピラの襲撃受けた時に焼肉屋のオカミさんを背中にかばうヤクザの親分さん。格好良い、けど男気ありすぎてかえってファンタジー。
西川監督と同様ご自身でオリジナル脚本を書いてきた藤井道人監督。要所を抑えたストーリーだと思いますが、男性が撮る方が浪花節っていうか、浪漫主義的になるのが興味深い。
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