「一九八四年」2014/12/13 15:52

 サイコパスの2は、1に比べて脚本が粗っぽいのが残念。システムがあまりにガタガタで仮にも正義を名乗るには不足と思わざるを得ないのです。
 登場人物たちも、インテリ系ストーカーマザコンサディスト氏の気持ち悪さとか笑えますが、感情移入はしにくいです。数々の残虐行為は本当に必要だったのか?
設定が色々と、不自然。



 ジョージ・オーウェルによる、ディストピア小説。
 一党独裁の世界で、党員たちは二種類に分類されます。党の言うコトに盲目的に従い疑いを持たず熱狂的に支持する人々と、「いや、おかしいよ」と思いながらも周りに合わせて党に忠実なフリをして、こっそりと党の方針に反している人々。
 主人公のウィルソンは後者の立場なのですが、恋人との密会中に秘密警察に捕らわれ、拷問され洗脳されて本気で党を愛する人になってしまいます。
 歴史修正主義とか、思考停止のための新言語体系とか、党の完璧主義とか、あまりな徹底ぶりで、現実感のない寓話として読んでいたのですが。
 しかしひとつ、大変興味深かったのが党の存在の核心である「二重思考」についての記述でした。

 二重思考とは、二つの相矛盾する信念を心に同時に抱き、その両方を受け入れる能力をいう。
(中略)
故意に嘘を吐きながら、しかしその嘘を心から信じていること、都合が悪くなった事実は全て忘れること、その後で、それが再び必要となった場合には、必要な間だけ、忘却の中から呼び戻すこと、客観的現実の存在を否定すること、(後略)

 突拍子もないようでいて、でもこういう不自然な現象は結構現実にあるなあ、と、サイコパスの新人監視官さんの有様をみながら思ったものです。
 もう少し広い範囲を見まわしてみても、やはり「二重思考は」確かに現実に存在すると思うと、極端すぎる寓話と思っていた数々までも、リアルな厚みを持ってくる。
 この本を読み始めたのはサイコパス1の読書家さんの愛読書の一つだったからであり、選挙期間中にあたったのは、偶然だったんですけどね。

「回帰祭」2014/12/14 15:33

 汚染された地球から逃れた避難船。三百年に渡って避難民たちはその閉鎖空間で暮らしてきた。物資も情報も乏しくストレスにさらされる環境。そこで出会った三人の少年少女たち、そして謎の「喋るウナギ」が、避難船の秘密に迫っていく。
 早川文庫のSF。小林めぐみを読むのは初めてでしたが、本格的なSF設定を盛り込みつつもライトノベルのノリで読みやすい。
 ウナギさんのユーモラスな感じも良いですし。
 そして、少年少女たちが、なんていうかカワイイ。もう、お前ら甘酸っぱいよ、青春だよ、何その爽やかな三角関係。
 良いラノベでした。

「PSYCHO-PASS ASYLUM 1」2014/12/20 21:16

 2020年中国のバブルがはじけ、世界経済は大混乱、全世界規模で暗黒時代に突入!
・・・・・なんか、普通にありえそうな未来予想図。

 PSYCHO-PASSの2期は色々残念な感じでした。
それでも映画に期待したいと望みを持ってしまうのは、1期が超私好みだったのと、1期の漫画版と過去編の小説版(PSYCHO-PASS/0 名前の無い怪物)も良かったからです。
そんなわけで、もう一冊、PSYCHO-PASS LEGENDシリーズを買ってきました。

「無窮花」 チェ・グソン
 外国人からみたPSYCHO-PASSワールドの歴史観やシビュラ・日本の姿がなかなか興味深かったのですが。
マッキーさんの傍らでなんか楽しげに悪事を働いていたグソンさんが、まさかこんな過酷な経歴の持ち主だったなんて。
とにかく痛い。残酷シーンのナマナマしさに、電車内で気分悪くなってくるほどでした。愛情も憎悪もあまりに激しく、狂気の領域。
その極度な純粋さが、マキシマさんの目を引いたのだなあ。マキシマの旦那の立ち位置のオイシサ、格好よさは流石です。
韓国映画の好きな人にはお勧めです。

「レストラン・ド・カンパーニュ」 縢秀星
 一転して、シュウ君の明るくて前向きなお話で色相をクリアに。
 あんたのせいで女が泣いた。そいつに恋していた男がブチ切れるには十分すぎる理由なんだ。
 幼少時から隔離施設で過ごしてきたとは思えない、人間に対する理解があるなあ。格好良いぜ。とっつあんの安定した頼りがいも良かったです。
 朱ちゃん配属の一年ほど前の飯テロ(異物混入)事件を通して、PSYCHO-PASSワールドの食事事情の歴史と、ご飯は大切だ、というおはなし。
 残酷シーンでビビらせてくれた描写力を料理の場面でも発揮してくれて、ちゃんとおいしそうでした。

初出が14年8~10月号SFマガジンなわりに、主に技術方面で「そんなんアリなん?」と思わされたのが残念だったのですが、まあ、世界観とキャラクターを描くのが主題なので、真面目にSFテクノロジーを考えるべきではないかな。