「ゴジラ -1.0」 ― 2023/12/02 00:55

あの状況のあの場所で実況を行うラジオ局スタッフの職業魂も、狂気と紙一重の勇気。戦争の経験が生々しいあの時代、多くの男たちはまだ、武士のように命がけで戦う気概を持つことができたのでしょう。
主人公の前に最初に登場したときは恐竜サイズで、舞台が南の島だったのもあってジュラシックパークっぽかった。それが、核実験の影響で(多分)スケールアップして、なぜか日本の東京都を襲う巨大怪獣。
戦争で壊滅した東京、少しずつ復興して行く東京、再び理不尽な暴力で破壊される東京。
常識を超越する規格外の怪獣は、悪鬼よりもむしろ、神々しさを感じさせる。
でも、このゴジラは思ったほど、怖さは感じないのです。踏み潰しっぷりのえげつなさでは、「進撃の巨人」の衝撃がまだ記憶に新しいからかもしれません。
映像よりも、伊福部昭の偉大さを思い知らされました。
主演の神木隆之介の、鬼気迫る張り詰めた表情が印象的でした。彼の戦争を終わらせるための、戦い。戦わなければ、自分を生きられない。
周りを固めるキャラクターたちも、みんな、芯のしっかりした人たち。
令和のゴジラは、ヒューマニズムの物語でした。
主人公の前に最初に登場したときは恐竜サイズで、舞台が南の島だったのもあってジュラシックパークっぽかった。それが、核実験の影響で(多分)スケールアップして、なぜか日本の東京都を襲う巨大怪獣。
戦争で壊滅した東京、少しずつ復興して行く東京、再び理不尽な暴力で破壊される東京。
常識を超越する規格外の怪獣は、悪鬼よりもむしろ、神々しさを感じさせる。
でも、このゴジラは思ったほど、怖さは感じないのです。踏み潰しっぷりのえげつなさでは、「進撃の巨人」の衝撃がまだ記憶に新しいからかもしれません。
映像よりも、伊福部昭の偉大さを思い知らされました。
主演の神木隆之介の、鬼気迫る張り詰めた表情が印象的でした。彼の戦争を終わらせるための、戦い。戦わなければ、自分を生きられない。
周りを固めるキャラクターたちも、みんな、芯のしっかりした人たち。
令和のゴジラは、ヒューマニズムの物語でした。
「ハンチバック」 ― 2023/12/03 21:42
導入部は苦手、最後の締めも唐突で置いてきぼり感が残る。
でも、本筋はとても面白かった。
社会学からネットエロ小説まで語れるインテリ系重度障害者。親から受け継いだ莫大な財産も信頼できるヘルパーさんもいる。充足しているようで、でも介助無しでお風呂には入れないしちょっとしたアクシデントでも死にかける。
主人公・釈華の表の顔は温和で善良な障害者、裏の本音は捻れて屈折して知識人っぽい難しい単語を使いたがる皮肉屋。
不平不満愚痴が中心、とも言えるだろうか。共感は薄い、でも不快感も薄い。
彼女の言葉に説得力とエネルギー、そしてユーモアも漂う。力強い弱者だ。
著者の市川沙央さんは私と同年代の中年女性。かつてコバルトを愛読していた読書好きの少女だったと思うと、なんとなく、趣味の方向性が理解できる気もする。
でも、本筋はとても面白かった。
社会学からネットエロ小説まで語れるインテリ系重度障害者。親から受け継いだ莫大な財産も信頼できるヘルパーさんもいる。充足しているようで、でも介助無しでお風呂には入れないしちょっとしたアクシデントでも死にかける。
主人公・釈華の表の顔は温和で善良な障害者、裏の本音は捻れて屈折して知識人っぽい難しい単語を使いたがる皮肉屋。
不平不満愚痴が中心、とも言えるだろうか。共感は薄い、でも不快感も薄い。
彼女の言葉に説得力とエネルギー、そしてユーモアも漂う。力強い弱者だ。
著者の市川沙央さんは私と同年代の中年女性。かつてコバルトを愛読していた読書好きの少女だったと思うと、なんとなく、趣味の方向性が理解できる気もする。
「夏の祈りは」 ― 2023/12/06 20:10
須賀しのぶの、高校野球もの、新潮文庫。
激戦区・埼玉県の公立高校野球部を舞台にした、連作短編集。私立強豪の壁に甲子園への道を阻まれ続ける北園野球部ですが、第一話では、同じ公立高校チームに敗れます。
甲子園に行くため、必要なものは何か。
悔しさと同時にプレッシャーからの解放を味わう主人公は、対戦相手のチームから、その鍵を感じ取ります。
その昭和最後の夏から、平成29年まで、北園高校の甲子園への挑戦が描かれます。
第一話、敗れた君に届いたもの
第二話、二人のエースナンバー
第三話、マネージャー
第四話、ハズレ
第五話、悲願
どのページを開いても、ツボにはまるシーンばかりなのです。
今年の夏は、エンジョイ・ベースボールが頂点へ上りましたが。
選手も監督もマネージャーもOBも、みんなで1つの目標を目指し、戦う。
夏の祈りを楽しめた者こそが、祭の主役にふさわしい。
激戦区・埼玉県の公立高校野球部を舞台にした、連作短編集。私立強豪の壁に甲子園への道を阻まれ続ける北園野球部ですが、第一話では、同じ公立高校チームに敗れます。
甲子園に行くため、必要なものは何か。
悔しさと同時にプレッシャーからの解放を味わう主人公は、対戦相手のチームから、その鍵を感じ取ります。
その昭和最後の夏から、平成29年まで、北園高校の甲子園への挑戦が描かれます。
第一話、敗れた君に届いたもの
第二話、二人のエースナンバー
第三話、マネージャー
第四話、ハズレ
第五話、悲願
どのページを開いても、ツボにはまるシーンばかりなのです。
今年の夏は、エンジョイ・ベースボールが頂点へ上りましたが。
選手も監督もマネージャーもOBも、みんなで1つの目標を目指し、戦う。
夏の祈りを楽しめた者こそが、祭の主役にふさわしい。
「あやし」 ― 2023/12/10 21:41
今年は、宮部みゆき作品を結構読んでいました。読みやすくて面白くて、電車読書にちょうど良いエンタメ小説なのです。
2003年の角川文庫、お江戸の奇談小説集九編も、一日一話のペースで読んでいました。
辛いこと面白くないことがあっても辛抱して、誠心誠意尽くしまっとうに働く。それこそが肝要であると作中で語られています。
辛抱できなかったり、何かに心を囚われたりして、道を逸れてしまったところに、魔が宿る。
「影牢」が特に怖かったです。人の悪意、残酷さが際立つ。
世に潜む魔の気配。恐ろしい怪異でありながら、人の業としての暗い親和性がある。
それに囚われる者、そっと距離を置く者、寄り添う者、力強く立ち向かう者。
人それぞれのやり方で、「あやし」に対応していく物語。
2003年の角川文庫、お江戸の奇談小説集九編も、一日一話のペースで読んでいました。
辛いこと面白くないことがあっても辛抱して、誠心誠意尽くしまっとうに働く。それこそが肝要であると作中で語られています。
辛抱できなかったり、何かに心を囚われたりして、道を逸れてしまったところに、魔が宿る。
「影牢」が特に怖かったです。人の悪意、残酷さが際立つ。
世に潜む魔の気配。恐ろしい怪異でありながら、人の業としての暗い親和性がある。
それに囚われる者、そっと距離を置く者、寄り添う者、力強く立ち向かう者。
人それぞれのやり方で、「あやし」に対応していく物語。
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