「サンドラの週末」 ― 2015/06/09 00:18
フランス映画。フランス語はまるで分かりませんが、聞いているとなるほど、美しくて歌うように聞こえます。めるし、ぁぼん。
この不景気、両方は無理だ。
という世知辛い経営方針のため、従業員たちで月曜日に投票をすることに。
病気療養明けのサンドラが職場復帰するか。
全員のボーナスを諦めるか。
過半数(9票)を得なければ失業してしまうサンドラは、土日に職場仲間たちの家を訪ねて「ボーナスを棒に振って自分に投票して」と頼みに行きます。
気まずいお宅訪問です。
小さい子供を二人抱えて、サンドラは稼ぎが欲しい。でも他のみんなにとってボーナスが大きいってことも分かっている。
頼まれる職場の皆さんだって、「サンドラ・クビ」に一票を投じるのは嫌な感じです。でも自分たちも生活がかかっている。
断られてがっかりしたり、味方を得て感激したりの繰り返しなサンドラ。
それぞれの事情を理解したうえで、それでもサンドラは自分が働きたいことを訴え、同僚たちは自分たちの一票を投じる。
マリオン・コティヤール演じるサンドラは、心の病だったようで、ヤバい感じに薬を飲む様子は「ホントに社会復帰して大丈夫か!?」と大いに不安になります。病んでなくったってキツイ状況です。
でも、キツイお宅訪問を、ちゃんとやって良かった。
上手く言えませんが、プライドを捨てて他人と向き合って自分をぶつけて。
ラスト、サンドラは強くなりました。
この不景気、両方は無理だ。
という世知辛い経営方針のため、従業員たちで月曜日に投票をすることに。
病気療養明けのサンドラが職場復帰するか。
全員のボーナスを諦めるか。
過半数(9票)を得なければ失業してしまうサンドラは、土日に職場仲間たちの家を訪ねて「ボーナスを棒に振って自分に投票して」と頼みに行きます。
気まずいお宅訪問です。
小さい子供を二人抱えて、サンドラは稼ぎが欲しい。でも他のみんなにとってボーナスが大きいってことも分かっている。
頼まれる職場の皆さんだって、「サンドラ・クビ」に一票を投じるのは嫌な感じです。でも自分たちも生活がかかっている。
断られてがっかりしたり、味方を得て感激したりの繰り返しなサンドラ。
それぞれの事情を理解したうえで、それでもサンドラは自分が働きたいことを訴え、同僚たちは自分たちの一票を投じる。
マリオン・コティヤール演じるサンドラは、心の病だったようで、ヤバい感じに薬を飲む様子は「ホントに社会復帰して大丈夫か!?」と大いに不安になります。病んでなくったってキツイ状況です。
でも、キツイお宅訪問を、ちゃんとやって良かった。
上手く言えませんが、プライドを捨てて他人と向き合って自分をぶつけて。
ラスト、サンドラは強くなりました。
「小さいおうち」 ― 2015/06/13 09:32
やったよ!戦争が始まったよ!日本がハワイの軍港へ、決死の大空襲だよ!
中島京子の直木賞受賞作。
山田監督の映画版も素敵でした。内容はほぼ原作通り。
映画の方がメロドラマ色が強く、昭和レトロな美術、お着物が華やか。
原作小説は百合色の方が強くて、そして女中のタキちゃんの家事能力の高さが光ります。タキちゃんの料理本とか出てないんだろうか?
大好きな奥様を中心にしたホームドラマが物語の縦軸でありますが、戦前戦中の庶民史が横糸として描かれ、映画の映像と合わせて一つの「昭和資料」と見てもいいんじゃないかと思えてきます。
そのくらい、時代の空気がイキイキしている。楽しげで景気良さげでいたかと思ったら、いつの間にかキリキリした状況をすんなり受け入れてしまっていることを、一人の人間の実感として描かれていて。
最後の方に描かれた挿話が象徴的。絶望的に方向音痴なタケルくんが、しまいに手足を失って、なおも行ってはならない方向へ転がっていく・・・・・・
失われてしまったもの。愛しかった日々。苦い思いも含めて、とても味わい深い作品でした。
中島京子の直木賞受賞作。
山田監督の映画版も素敵でした。内容はほぼ原作通り。
映画の方がメロドラマ色が強く、昭和レトロな美術、お着物が華やか。
原作小説は百合色の方が強くて、そして女中のタキちゃんの家事能力の高さが光ります。タキちゃんの料理本とか出てないんだろうか?
大好きな奥様を中心にしたホームドラマが物語の縦軸でありますが、戦前戦中の庶民史が横糸として描かれ、映画の映像と合わせて一つの「昭和資料」と見てもいいんじゃないかと思えてきます。
そのくらい、時代の空気がイキイキしている。楽しげで景気良さげでいたかと思ったら、いつの間にかキリキリした状況をすんなり受け入れてしまっていることを、一人の人間の実感として描かれていて。
最後の方に描かれた挿話が象徴的。絶望的に方向音痴なタケルくんが、しまいに手足を失って、なおも行ってはならない方向へ転がっていく・・・・・・
失われてしまったもの。愛しかった日々。苦い思いも含めて、とても味わい深い作品でした。
第32回文楽鑑賞教室 「五条橋」「曽根崎心中」 ― 2015/06/13 23:10
四月に観に行ったのと違って、入門編で上演短めお値段も控えめ。お客さんも学生さんらしき若い人が多かったです。上演パンフレット(ストーリーを漫画と床本と英語で紹介してくれる親切)と「鑑賞のしおり」が配られるのですが、しおりの前書きが有栖川有栖。この人いろんなトコで仕事してるなあ。
そして「文楽へようこそ」と題した解説コーナーがあるのですが、これ面白かったです。シャベリ慣れているというか、ツッコミ慣れた方が解説でしばしば笑いが生じます。スクリーンに人形が大写しにされるのも良かったです。私は後ろの方の席なのですが、やっぱりそれだと小さく見えるのですね。大きく、細部まで見える方が繊細なお人形の動きがよく分かります。もしかしたら生舞台よりTV向けなコンテンツなんだろうか。
一本目の「五条橋」は、良く知られたエピソードとは違って、牛若丸の方から弁慶にインネンつけて絡んでいって通りすがりの弁慶を舎弟にしてしまう。見た目優雅でもやってることチンピラだ!
私でも話の筋は知ってる超有名作品「曽根崎心中」。最終的にお初と徳兵衛は天神の森で心中しちゃうのですが、そのラストシーンまで、ひっぱるひっぱる。まだ死なない、明けの鐘が鳴るのになかなか死なない。
でも、脇差を振り上げてからは早く感じられました。太夫の声が終わり、三味線だけが響く中、小さくて声もない人形の、凄みのある死にっぷりでした。
そして「文楽へようこそ」と題した解説コーナーがあるのですが、これ面白かったです。シャベリ慣れているというか、ツッコミ慣れた方が解説でしばしば笑いが生じます。スクリーンに人形が大写しにされるのも良かったです。私は後ろの方の席なのですが、やっぱりそれだと小さく見えるのですね。大きく、細部まで見える方が繊細なお人形の動きがよく分かります。もしかしたら生舞台よりTV向けなコンテンツなんだろうか。
一本目の「五条橋」は、良く知られたエピソードとは違って、牛若丸の方から弁慶にインネンつけて絡んでいって通りすがりの弁慶を舎弟にしてしまう。見た目優雅でもやってることチンピラだ!
私でも話の筋は知ってる超有名作品「曽根崎心中」。最終的にお初と徳兵衛は天神の森で心中しちゃうのですが、そのラストシーンまで、ひっぱるひっぱる。まだ死なない、明けの鐘が鳴るのになかなか死なない。
でも、脇差を振り上げてからは早く感じられました。太夫の声が終わり、三味線だけが響く中、小さくて声もない人形の、凄みのある死にっぷりでした。
「駆け出し男と駆け込み女」 ― 2015/06/21 23:33
なんかもったいないなあ、という印象の映画。
江戸時代の離婚問題を題材にしたのは、流石の井上ひさしの目の付け所。
役者陣も、実力ある演技派揃えているんです。
主演の大泉洋は難しい江戸言葉(歌舞伎とかゆっくりもったいぶって喋るけど、昔の江戸っ子って凄い早口なんですね)の長台詞をとうとうと喋る。満島ひかりの艶のある格好良い女性像も良かった。しいて言うなら、戸田恵梨香がお肌キレイすぎ有能すぎたかなあ。
脇役も皆さんそろいもそろって達者で、中でも光っていたのが尼寺を仕切り役の方、エラい美人で且つ貫録ある。宝塚出身の人だ知って超納得。
美術もロケ地もイイ、最高、全てのシーンが美しい。
これだけ格好良い要素を取り揃えていながら、何故かあんまりパッとしない。
メイン三人のエピソードに絞って堀さげた方がよかったんじゃないかと思うのです。原田眞人監督作品は、「わが母の記」でも話を盛り込みすぎな気がしたんですが。
離婚したい女が寺に駆け込むだけでも、様々な事情や手続きがあるのですが。
それに加えて、水野忠邦の改革(1841)やら滝沢馬琴やら隠れキリシタンやら。特に、監督は馬琴が好きなんだなあ、って感じで。
時代を感じさせるためにほんのり。なんかじゃなくて、各要素がちゃんとバッチリ存在感がありました。いろんなエピソードを積み重ねて世界観を膨らませる手法の監督さんなんでしょうが、全体として雑多で長ったらしい気がします。
こだわりを持って制作されたからこそ、贅沢で感動的なカットが次々と生まれて。
しかしそのこだわりゆえに、あんまり一般受けしそうにないのがもったいない。
江戸時代の離婚問題を題材にしたのは、流石の井上ひさしの目の付け所。
役者陣も、実力ある演技派揃えているんです。
主演の大泉洋は難しい江戸言葉(歌舞伎とかゆっくりもったいぶって喋るけど、昔の江戸っ子って凄い早口なんですね)の長台詞をとうとうと喋る。満島ひかりの艶のある格好良い女性像も良かった。しいて言うなら、戸田恵梨香がお肌キレイすぎ有能すぎたかなあ。
脇役も皆さんそろいもそろって達者で、中でも光っていたのが尼寺を仕切り役の方、エラい美人で且つ貫録ある。宝塚出身の人だ知って超納得。
美術もロケ地もイイ、最高、全てのシーンが美しい。
これだけ格好良い要素を取り揃えていながら、何故かあんまりパッとしない。
メイン三人のエピソードに絞って堀さげた方がよかったんじゃないかと思うのです。原田眞人監督作品は、「わが母の記」でも話を盛り込みすぎな気がしたんですが。
離婚したい女が寺に駆け込むだけでも、様々な事情や手続きがあるのですが。
それに加えて、水野忠邦の改革(1841)やら滝沢馬琴やら隠れキリシタンやら。特に、監督は馬琴が好きなんだなあ、って感じで。
時代を感じさせるためにほんのり。なんかじゃなくて、各要素がちゃんとバッチリ存在感がありました。いろんなエピソードを積み重ねて世界観を膨らませる手法の監督さんなんでしょうが、全体として雑多で長ったらしい気がします。
こだわりを持って制作されたからこそ、贅沢で感動的なカットが次々と生まれて。
しかしそのこだわりゆえに、あんまり一般受けしそうにないのがもったいない。
「テンペスト」 ― 2015/06/22 23:33
ドラマ版は第一回を見て即切ったのですが、もっかい原作本を読んでみようと思ったのは、まあ、最近の沖縄基地問題の件があるのと、そして作者・池上永一のデビュー作がけっこう面白かったからですね。ファンタジーノベル大賞系の作家はハズレが少ない。
で、本作が面白いかどうかというと、微妙です。癖のある作風で、少女マンガのノリ?。男装女子が主人公ですが素顔丸出しなのに同僚もお友達も気付かない。でも髪を下ろすといきなり正体バレちゃう(笑)。
超美形で頭良くて有能な外交官で何カ国語もペラペラで強い霊力もあってしかも昔の王朝の血を引くという完全無欠ぶりで、さっぱり共感できないヒロインです。
彼女に比べて、登場する男たちは皆そろって情はあるけどなんか頼りない。
ヒロインはガチガチの真面目さんですが、脇役の女性陣の方がパワフルでハッチャケていて楽しいです(こちらのノリの方がこの作者の本領なのだと思います)。
しかし、最終章「王国を抱いて翔べ」は胸が痛みます。国の存立を守ろうと、ヒロインたちは清国や薩摩藩やペリー提督と渡り合ってきたのに、怒涛のごとく、琉球は日本のものにされてしまうのです。文庫本四冊に渡って描かれてきた愛国の心が、独自の文化が、踏みにじられる。
ある登場人物がこんな風に言います。百年後、琉球が誇れるように、日本に併合されて良かったと思えるようにして見せる・・・・・・・・・・・
今、中東地域のゴタゴタの根っこに西洋列強の帝国主義があるように。
沖縄をめぐるゴタゴタも、明治以降の日本の帝国主義から発しているのだろうなあ。
で、本作が面白いかどうかというと、微妙です。癖のある作風で、少女マンガのノリ?。男装女子が主人公ですが素顔丸出しなのに同僚もお友達も気付かない。でも髪を下ろすといきなり正体バレちゃう(笑)。
超美形で頭良くて有能な外交官で何カ国語もペラペラで強い霊力もあってしかも昔の王朝の血を引くという完全無欠ぶりで、さっぱり共感できないヒロインです。
彼女に比べて、登場する男たちは皆そろって情はあるけどなんか頼りない。
ヒロインはガチガチの真面目さんですが、脇役の女性陣の方がパワフルでハッチャケていて楽しいです(こちらのノリの方がこの作者の本領なのだと思います)。
しかし、最終章「王国を抱いて翔べ」は胸が痛みます。国の存立を守ろうと、ヒロインたちは清国や薩摩藩やペリー提督と渡り合ってきたのに、怒涛のごとく、琉球は日本のものにされてしまうのです。文庫本四冊に渡って描かれてきた愛国の心が、独自の文化が、踏みにじられる。
ある登場人物がこんな風に言います。百年後、琉球が誇れるように、日本に併合されて良かったと思えるようにして見せる・・・・・・・・・・・
今、中東地域のゴタゴタの根っこに西洋列強の帝国主義があるように。
沖縄をめぐるゴタゴタも、明治以降の日本の帝国主義から発しているのだろうなあ。
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