「四つの署名」2024/11/04 14:10

名探偵、コカインにはじまりコカインに終わる。と思うと、ひどい主人公だ。
ホームズシリーズ二作目。前作から同居期間数年を経て、ワトソン医師が結婚相手(一度目の?)と出会う事件。ワトソンのメアリーさんに首ったけで冷静じゃない描写が可笑しい。
見せ場のテムズ川追跡は映像向け、冒険小説のノリ。
一作目の「緋色の研究」と同様、今回も捕らえた後の犯人側の事情語りが結構長い。詳しい動機は後回しにして犯人の特定と捕獲。前回は新大陸での宗教団体がらみの因縁で、お次は植民地インドでの混乱に乗じた冒険。
インドの財宝以上に、裏切り者に対する復讐心のほうがメインの動機。どのみち、まっとうとは言い難い手段で手に入れたお宝だったのだけど、横取りされるのは腹が立つ。
犯人も、好き好んで人殺しをしたがる残忍な人ってわけではなかったけれど。
大金は、人を狂気に導き、運命を狂わせるのです。

「華岡青洲の妻」2024/11/22 23:09

記録に残る中では世界初、乳がん外科手術に成功した紀州の外科医。その偉業の裏では、麻酔薬の実験台となって失明した妻の貢献があった。
という史実を元にして、嫁姑の水面下の確執を描いた。一人の男を挟んで二人の女がマウントを取り合う。命がけで。妻・加江の心情を、無意識の部分まで逐一解説してくれている。とても分かり易い。
有吉佐和子は初めて読んだのですが、面白いです、他にも読んでみよう。
物語の最後、死後の墓のサイズを述べられる。嫁姑争いは、いかに激しく恐ろしく当人たちにとって真剣なものであったとしても、表に立つ男が人生で成したことに比べれば小さなことだと、言わんばかりに。

指揮者、愛されて2024/11/24 00:31

ブルックナーは正直、苦手です。長いし、真面目すぎる感じで。そして、今日のコンサートでは初めて、舞台の後ろ側の席を取りました。思ったより金管の響きが大きく近く感じられましたしトランペットはほぼ見えないのですが、指揮者の動きはオケメンバー目線で見えます。
井上道義、90年代に京都市交響楽団の首席指揮者もやっていましたし、当時から応援しているファンも多いのでしょう。本当は六月のショスターコヴィッチを聴きたかったのですが乗り遅れてチケット売り切れでしたし、本日も京都コンサートホールは満席。ロビーのCD販売にも完売の札。
一時間半もあるブルックナーの8番演奏後、いつまでも、拍手が鳴り止まない。
今年いっぱいで引退なんて言わないで。京都のクラシックファンからの愛ですね。