「シン・ゴジラ」 ― 2016/10/02 23:16
次はこのノリで、「創龍伝」やってくれないかなあ。総理も自衛隊も、都市を破壊する巨大怪獣も出てくるし。
いろんな観方のできる映画でしょう。
私は、コメディだと思って観ていました。3.11パロディ。そりゃあ、巨大怪獣の上陸は想定外でしょうねえ。
その昔、「踊る大捜査線」が刑事ドラマに<会議・お役所>要素を取り込んできましたが、ゴジラ最新作はそれを怪獣映画に、もっと徹底して盛り込んできた感じ。
CGゴジラは案外着ぐるみっぽい動きだと思ったら、野村萬斎の動きだったとは。クレジット見てどこに出演してたのかと思ったら、中の人……
それから、自衛隊ってこんなにたくさん兵器持ってたのかーって思いました。現実として、実戦で使われることのない、そしてゴジラ相手では役に立たない兵器。……リアルを追求するなら、ゴジラ上陸以降自衛隊員がバタバタ退職願いを出すシーン(某死神ノート漫画で、対策本部刑事たちがぼろぼろ一抜けたしたみたいなの)が欲しい所でしたが、そんな脚本だったら自衛隊の協力が得られませんよね。
そこらへんが、この映画に足りてないところなのでしょう。人間のナマっぽいところが削ぎ落されているというか。せっかく実力派の役者を揃えているのに、演出が細かすぎるのか、変に型にはめられている感じ。政治家/官僚目線で早口に現状説明をしていく舞台装置っていうか。石原さとみだけが個人的なエゴを全面に出しますが、それも組織人的日本と個性重視米国、という一種の型なのかもしれません。
怪獣映画ってそんなものなんでしょうか?
この映画で最も手に汗握ったシーンは、電車アタック(!)でした。これは予想外の戦法で、耳慣れない兵器の名称を並べられるよりもずっと威力をイメージしやすく、ビジュアル的にも面白く思いました。
いろんな観方のできる映画でしょう。
私は、コメディだと思って観ていました。3.11パロディ。そりゃあ、巨大怪獣の上陸は想定外でしょうねえ。
その昔、「踊る大捜査線」が刑事ドラマに<会議・お役所>要素を取り込んできましたが、ゴジラ最新作はそれを怪獣映画に、もっと徹底して盛り込んできた感じ。
CGゴジラは案外着ぐるみっぽい動きだと思ったら、野村萬斎の動きだったとは。クレジット見てどこに出演してたのかと思ったら、中の人……
それから、自衛隊ってこんなにたくさん兵器持ってたのかーって思いました。現実として、実戦で使われることのない、そしてゴジラ相手では役に立たない兵器。……リアルを追求するなら、ゴジラ上陸以降自衛隊員がバタバタ退職願いを出すシーン(某死神ノート漫画で、対策本部刑事たちがぼろぼろ一抜けたしたみたいなの)が欲しい所でしたが、そんな脚本だったら自衛隊の協力が得られませんよね。
そこらへんが、この映画に足りてないところなのでしょう。人間のナマっぽいところが削ぎ落されているというか。せっかく実力派の役者を揃えているのに、演出が細かすぎるのか、変に型にはめられている感じ。政治家/官僚目線で早口に現状説明をしていく舞台装置っていうか。石原さとみだけが個人的なエゴを全面に出しますが、それも組織人的日本と個性重視米国、という一種の型なのかもしれません。
怪獣映画ってそんなものなんでしょうか?
この映画で最も手に汗握ったシーンは、電車アタック(!)でした。これは予想外の戦法で、耳慣れない兵器の名称を並べられるよりもずっと威力をイメージしやすく、ビジュアル的にも面白く思いました。
「復讐はお好き?」 ― 2016/10/09 22:54
先月まで放送されていた「91Days」、オリジナル脚本による、なかなか渋くてハードな物語で毎週ハラハラと楽しんでいました。復讐のために友を殺せるか!?
で、こちらの小説はもっとライトな復讐劇。一ページ目からヒロインが真っ逆さまに海へ落下していくシーン(笑)です。シニカルなユーモアのある文章で、何とか助かった彼女が、自分を突き落した夫に対する復讐を決意する……
と、ここまでは面白かったのですが、だんだん、飽きてきてしまうのです。……みみっちいのです、全体的に。まず、復讐相手であるチャズがどうしようもなく小者で、クズ野郎すぎて。ヒロインのジョーイも、窮地から生き延びるところまでは根性を見せるのですが、それ以降は大したことしていなくて。夫にネチネチと精神的苦痛を与えていくっていうのも、なんか陰湿に思えてきます。ある程度追いこんだら、あとはさっさと警察に訴えたらいいのに。
復讐劇そのものよりも、環境破壊についての描写のほうが印象的でした。作者のハイアセンさんは、もともとその分野を追求するジャーナリストさんだったそうで。垂れ流される農業排水、それを誤魔化す企業とお抱えエセ学者。
……たまたまなんですが、ニュースで新市場の汚染について盛り上がっている時期に読みましたからねえ。
で、こちらの小説はもっとライトな復讐劇。一ページ目からヒロインが真っ逆さまに海へ落下していくシーン(笑)です。シニカルなユーモアのある文章で、何とか助かった彼女が、自分を突き落した夫に対する復讐を決意する……
と、ここまでは面白かったのですが、だんだん、飽きてきてしまうのです。……みみっちいのです、全体的に。まず、復讐相手であるチャズがどうしようもなく小者で、クズ野郎すぎて。ヒロインのジョーイも、窮地から生き延びるところまでは根性を見せるのですが、それ以降は大したことしていなくて。夫にネチネチと精神的苦痛を与えていくっていうのも、なんか陰湿に思えてきます。ある程度追いこんだら、あとはさっさと警察に訴えたらいいのに。
復讐劇そのものよりも、環境破壊についての描写のほうが印象的でした。作者のハイアセンさんは、もともとその分野を追求するジャーナリストさんだったそうで。垂れ流される農業排水、それを誤魔化す企業とお抱えエセ学者。
……たまたまなんですが、ニュースで新市場の汚染について盛り上がっている時期に読みましたからねえ。
「人質カノン」 ― 2016/10/16 11:12
結構前なんですが、TVドラマで「模倣犯」をやっていて、これがさすがの面白さ(原作未読)。悪の物語。
やっぱり宮部みゆきはすごいですなあ。
と、いうことで、久々に図書館で借りてきました。いつも長編ばかり読むから、宮部みゆきの短編集ってはじめてかも。
90年代半ばに発表の7編。どれも読みやすくってすいすい読み進むけど、決して軽くは感じない。人間が生きる中での息苦しさの微妙な感じをすくいとり、最後に仄明るく、希望が感じられる結び方。イジメがらみのお話が多い。20年以上も前の作品なのに、全然古びて感じない。
社会派ストーリーテラーとしての実力をひしひし感じる短編集でした。
やっぱり宮部みゆきはすごいですなあ。
と、いうことで、久々に図書館で借りてきました。いつも長編ばかり読むから、宮部みゆきの短編集ってはじめてかも。
90年代半ばに発表の7編。どれも読みやすくってすいすい読み進むけど、決して軽くは感じない。人間が生きる中での息苦しさの微妙な感じをすくいとり、最後に仄明るく、希望が感じられる結び方。イジメがらみのお話が多い。20年以上も前の作品なのに、全然古びて感じない。
社会派ストーリーテラーとしての実力をひしひし感じる短編集でした。
「君の名は。」 ― 2016/10/23 01:06
公開前のTV放送「言の葉の庭」があまりにも美しい映画だったので、このイメージが崩れたら嫌だなあ、この作品観に行こうかどうしようか……
なんて思っていたら、ジブリアニメ並の大ヒット、話題騒然作品になって。
自分が十代の時に観に行けていたらなあ……。決して大人の鑑賞に堪えない、というわけではなくって、とっても魅力的なエンターテイメント作品なのですが。「時をかける少女」を見た時も同じように思ったのですが、あのひたむきな純粋さ、切なさ、青春って感じは、完全に少年少女たちの、どストライクでしょう。
リピーターが多いのも分かります、エンディング後にもう一度オープニングを見たくなる。
曲がバカ売れなのも分かります。映画の音楽っていうか、RADWIMPS音楽の長大なイメージ映像にすら思えてきます。
3.11や「シン・ゴジラ」と並べられるのも分かります。大きな被害に立ち向かう物語。
そのために、時をかけるファンタジーの力を借りるわけですが。構成(伏線)が周到なうえに昔々の神事の継承役を市原悦子に担わせるのだから、胡散臭さやご都合主義を感じず、やはりこれもなんか分かってしまう。
キャストでは、神木君はもともと実力派で名を馳せていましたが、もう一方、上白石さんが「舞妓はレディ」以来の主演で、どんと知名度を上げた(CDまで出した!)のは嬉しいです。
そして、それ以上に、一躍ビッグネームとなった監督・新海誠。こうした新しい波が起こるのも、わくわく感があります。
なんて思っていたら、ジブリアニメ並の大ヒット、話題騒然作品になって。
自分が十代の時に観に行けていたらなあ……。決して大人の鑑賞に堪えない、というわけではなくって、とっても魅力的なエンターテイメント作品なのですが。「時をかける少女」を見た時も同じように思ったのですが、あのひたむきな純粋さ、切なさ、青春って感じは、完全に少年少女たちの、どストライクでしょう。
リピーターが多いのも分かります、エンディング後にもう一度オープニングを見たくなる。
曲がバカ売れなのも分かります。映画の音楽っていうか、RADWIMPS音楽の長大なイメージ映像にすら思えてきます。
3.11や「シン・ゴジラ」と並べられるのも分かります。大きな被害に立ち向かう物語。
そのために、時をかけるファンタジーの力を借りるわけですが。構成(伏線)が周到なうえに昔々の神事の継承役を市原悦子に担わせるのだから、胡散臭さやご都合主義を感じず、やはりこれもなんか分かってしまう。
キャストでは、神木君はもともと実力派で名を馳せていましたが、もう一方、上白石さんが「舞妓はレディ」以来の主演で、どんと知名度を上げた(CDまで出した!)のは嬉しいです。
そして、それ以上に、一躍ビッグネームとなった監督・新海誠。こうした新しい波が起こるのも、わくわく感があります。
「おれがあいつであいつがおれで」 ― 2016/10/23 23:49
「君の名は。」で唯一物足りなく感じたのは、シリアスに入る前の入れ替わり編を、もうちょっと長くやってほしかったなあ、というコト。
その補完、というか。
小学生のときに読んだ「山田ババアに花束を」、最近のドラマで「民王」などなど。
中身入れ替わりものって、エンターテイメントやるなら必ず通らなければいけないかのごとく、たくさんの作品があります(でも外国ものでは聞いたことがないなあ。宗教観の違い?体を乗っ取るのは常に悪魔の役目)が、私の知る限り最も古いのが、山中恒作の、児童小説。映画「転校生」の原作?
序盤から、仲良し幼稚園児がババアをぶっ殺し、小6で再会して男女入れ替え生活、という、なんかこう、突き抜けきった感じのコメディです。
ほんとに男っていいなあ。前のボタンをはずして、ちょんとつまんで、シャーッとやって、あとはブルンブルンとやって、さっとしまえば、もう、それでいいんだものなあ―
描写が、リアルすぎて爆笑。小6男子の一人称って、バカっぽさと遠慮のなさとその源となる根の真っ直ぐさが最高です。女子視点で描いたら、もっと悲観的だったでしょう。
混乱や不安を共有することで二人の絆を深めるのは、お約束です。
その補完、というか。
小学生のときに読んだ「山田ババアに花束を」、最近のドラマで「民王」などなど。
中身入れ替わりものって、エンターテイメントやるなら必ず通らなければいけないかのごとく、たくさんの作品があります(でも外国ものでは聞いたことがないなあ。宗教観の違い?体を乗っ取るのは常に悪魔の役目)が、私の知る限り最も古いのが、山中恒作の、児童小説。映画「転校生」の原作?
序盤から、仲良し幼稚園児がババアをぶっ殺し、小6で再会して男女入れ替え生活、という、なんかこう、突き抜けきった感じのコメディです。
ほんとに男っていいなあ。前のボタンをはずして、ちょんとつまんで、シャーッとやって、あとはブルンブルンとやって、さっとしまえば、もう、それでいいんだものなあ―
描写が、リアルすぎて爆笑。小6男子の一人称って、バカっぽさと遠慮のなさとその源となる根の真っ直ぐさが最高です。女子視点で描いたら、もっと悲観的だったでしょう。
混乱や不安を共有することで二人の絆を深めるのは、お約束です。
「淵に立つ」 ― 2016/10/29 10:52
カンヌで「ある視点」部門審査員賞受賞。
タイトルそのままなテーマ。最初から、普通にチグハグで不穏な食卓。崖っぷちとか川っぷち、足を滑らすギリギリのラインに立ちながら、それを見ないふりして歩くイメージが、その後もずっと続いていきます。
浅野忠信の異様さが際立つ。白と赤のコントラスト、一人称小説の独白のような長台詞。ピンと糊のきいたワイシャツの白が、チグハグながらも「普通」だった食卓を異様な空間に変える。家族写真をとったら心霊写真みたいで、むしろ笑う!
普通の一家に中に入り込んだその異質感・異様さは、良くも悪くも、とも思えます。異様すぎて現実味が薄い。
しかし、そのインパクトはやはり絶大で、後半は全然出てこない(奥さんの見た幻以外)のに、不在という存在感で物語の軸となり続けている。
でもやっぱり、彼が出てこない方が画面がリアルになります。もともと危ういバランスだった一家が、さらにボロボロになって、それでも共に生きていく。
浅野忠信のインパクトが強いですが、他の役者陣もみんな良かったです。後半登場の太賀が、普通の好青年を、普通なんだけどちゃんとした存在感でさらに一家を崖っぷちに追い詰める感じが良かったです。
インパクトも説得力もある良作、でもストーリーも映像も音楽も役者も、全力で不穏さを漂わせるので、楽しい気持ちにはならないモヤモヤ映画です。
パンフレットについた脚本を読むとけっこうカットされた場面があって、そこは入れてくれた方が話のつながりが分かり易かったかなあ。
タイトルそのままなテーマ。最初から、普通にチグハグで不穏な食卓。崖っぷちとか川っぷち、足を滑らすギリギリのラインに立ちながら、それを見ないふりして歩くイメージが、その後もずっと続いていきます。
浅野忠信の異様さが際立つ。白と赤のコントラスト、一人称小説の独白のような長台詞。ピンと糊のきいたワイシャツの白が、チグハグながらも「普通」だった食卓を異様な空間に変える。家族写真をとったら心霊写真みたいで、むしろ笑う!
普通の一家に中に入り込んだその異質感・異様さは、良くも悪くも、とも思えます。異様すぎて現実味が薄い。
しかし、そのインパクトはやはり絶大で、後半は全然出てこない(奥さんの見た幻以外)のに、不在という存在感で物語の軸となり続けている。
でもやっぱり、彼が出てこない方が画面がリアルになります。もともと危ういバランスだった一家が、さらにボロボロになって、それでも共に生きていく。
浅野忠信のインパクトが強いですが、他の役者陣もみんな良かったです。後半登場の太賀が、普通の好青年を、普通なんだけどちゃんとした存在感でさらに一家を崖っぷちに追い詰める感じが良かったです。
インパクトも説得力もある良作、でもストーリーも映像も音楽も役者も、全力で不穏さを漂わせるので、楽しい気持ちにはならないモヤモヤ映画です。
パンフレットについた脚本を読むとけっこうカットされた場面があって、そこは入れてくれた方が話のつながりが分かり易かったかなあ。
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