「怒り」2016/11/07 00:17

日曜日の昼に買った玉葱が、月曜の夜にどろりと腐っていた、10月末日。
これって、怒っていいとこですね、ムカつくべきところですよね!
しかし、適切な怒り方って、なんなんでしょうか?
ブログ炎上させること?裁判で倍賞勝ち取ること?土下座させること?デモ行進すること?世界各地に慰安婦像立てること?それで、相手に怒りを伝えられる?



吉田修一原作の映画はこれまでに4本観て4本とも自分内で大当たりだったので、5本目も期待していたのですが。
なんだかよく分からない。役者陣はみんな熱演で坂本龍一の音楽も最高なのに、「悪人」のような緊張感がない。それでも終盤にかけて徐々に盛り上げていって、でも最後に肩すかしな感じ。凶悪殺人犯は、何をそんなに怒っていたのか、単に常軌を逸した狂人の犯行としか解釈できません。
釈然としない不完全燃焼さを解消するため、原作本も読みました。(映画みてからすぐ原作読むのって私には珍しいことです)
結局、どういう回路で怒りに火がつくのか、他人からはその内情はなかなか見えないんだってことでした。
怒りのあまり、人を殺害せざるを得なくなるお話。
なのですが、序盤は、不満はあるけど怒れない、怒っても仕方がない何も変わらないという、諦めた人々の物語でした。それぞれ不安な現実を抱えながらも、徐々に明るい方向に向かいそうでいて・・・・それが破られる。
内情はなかなか見えない、そんな他人を信じるとは、どういうことか。
この作品の特徴は、相手を信じたパターンでも信じきれなかったパターンでも、どちらも破局を迎えるということ。
しかし、結果として、自分の弱みに付け込まれ相手を信じきってしまった方が、自身や周囲に与えたダメージが大きい。怒りという名の、魔に付かれてしまって。
逆に、信じたいけど信じきれなかった方が、戦う力を持つことになります(ここら辺が、映画では描写不足だったと思う)。衝突や後悔という苦難を伴っても、そこから何かが生まれてくる。
作中で、疑ってるっていうのは信じてるってこと、っていう逆説がちらりとありましたが。
なんか、分かります。

「オーバー・フェンス」2016/11/20 22:45

主演のオダギリジョーが、職業訓練校に行く話。
と聞いて、ぜひ観に行きたいと思った作品。ロケ地が札幌ポリテクセンターだもの。
まず、リアルで魅力的なのが、訓練校の、年齢職歴バラバラで個性的な面々。気怠い空気でありながら、それぞれに過去と現在と、進んでいく未来がある感じが垣間見える。
そして、オダギリに近づく蒼井優が、自他ともに認める「ぶっ壊れた」女を好演。普通の時の無邪気さと、壊れた時の鬱陶しさが同じ一つの魂から生じています。めちゃくちゃなのに説得力ある演技と演出。原作にない要素を上手く追加した、脚本の力も秀逸です。
何故彼女が「壊れた」か、具体的には説明されませんが、女性なのに名前が「さとし」で、虐められたかなんかあったんでしょうね。親のことを悪く言わないで、とか言いながら、親と仲良い感じは全然しません。
ラストは普通にお約束な展開だったのですが、上記二点が素晴らしかったので、明るい希望を持てて良かったと思えました。
フェンスを、超える。