「おいしいごはんが食べられますように」2023/06/03 22:45

最初から結末の話ですが、ちょっと拍子抜けでした。
みんなから侮られながらもいつも笑顔で正しい意見と立場で、不得手なことは避けていく芦川さんが、最後までそのペースを崩さず望みの居場所を手に入れる。
行間から吹き出す憎しみや、美味しいはずのモノを食す描写の不快さから、逆転の展開があるのかと、期待していたのですが。著者・高瀬準子さんの職場に、こういう感じの人がいる(もしくは、いた)のでしょうね。芦川さんの内面描写も読みたい気もしましたが。
しかし、それ以上に気になったのは、彼女に対する抵抗勢力の感覚。普通に、手料理好きじゃないって、言えば良いのに。でも、単純な嫌い、でもなさそうで。
自分の本当に好きなものを、どれだけ選べているだろう。
自分が本当にしたいことを、どれだけやれているだろう。
自分が本当に感じていることを、どれだけ言葉にできているだろう。
自分が本心から望んでいること以外を、正しいからとか世の中そういうものだからとか空気を読んでとか相手に合わせてとかコンプライアンスとか義務感とかで、押しつけられ受け入れざるを得ない。ふざんけんな。
と、いう鬱屈が「食」に集約され、主人公・二谷の矛盾に満ちた過剰反応になっているのかなあ、なんて、思いました。
職場内三角関係の形を借りた、価値観のぶつかり合い。

「PSYCHO-PASS PROVIDENCE」2023/06/17 17:12

人は正義なんて求めていない
まったく同感だ

十年も続くこのシリーズに、あの二人がメインビジュアルで戻ってきました。
大スクリーンにふさわしいSFアニメアクション大爆発で、情報量もモリモリで、見終わったあとにパンクしそうでした。
ストーリーも、相変わらず死者多数、日本政府は国外で相当アコギな真似をしているようで(武器輸出とかのためだろうか……)、悲しみいっぱいで、おちゃらけたシーン無し。ギノさんぐらいです、とくに面白いことしているわけでもないのに、髪型変わったり最強義手パンチ炸裂したりコウちゃんに食ってかかるだけでなんか微笑ましいという、お得なキャラクターになったなあ。
目的のために手段を選ばぬ奴らが幅をきかせるこのシリーズで、朱ちゃんだけが、正しいやり方、にこだわり、それはときにまどろっこしく感じられる。しかし、遠回りに見えて、それこそが結局は、みんなが幸せになれる道なんじゃないかなあ。今回の、登場人物たちの業背負って抜け出せない感じを見ると、そう思ってしまいます。
そして、そんな我らが真面目なヒロインが、ここにきて、掟破りを決断。劇場版の2118年の時点で、まだたった25歳だっていうのに、今までの全部をかなぐり捨ててきた!自身の信念を守るために。
コウちゃんが外務省に拾われて帰国してから、TV版第3期までの期間に何があったかを描く。いや、どう考えても、3期よりこちらの物語を先に発表するべきでしたよ、あれ、何がなんだか分からないまんまで、非常に不親切でしたからね。

「岸部露伴 ルーヴルへ行く」2023/06/25 23:02

まず間違いなくNHKでも放送されるだろうけど、あのルーヴルで撮影したのだから。
と、考えて劇場まで観に行った人、多いだろうなあ。そして一様に、「美術館内の場面少なっ!」と拍子抜けだったことでしょう。
異能力を持つ漫画家が不可思議怪奇事件に関わるシリーズ。初の劇場版は、海外ロケ(ルーヴルより凱旋門の彫刻が素敵に思えた)あり、オークション場面あり、露伴先生の若き日あり、主演の高橋一生の二役で江戸時代シーンあり、盛りだくさん。でも、なんかパラパラっとしている。
ストーリーは、不幸を呼ぶ絵画怪談、蜘蛛が苦手な人にはお勧めしません。
画を手に入れたのがずいぶん昔なのに呪い発動が割と最近なのは何故なのか、とか、設定背景がよくわかりませんでした。
TVシリーズでおなじみのコンビは、変わらず微笑ましかったです。