「おいしいごはんが食べられますように」2023/06/03 22:45

最初から結末の話ですが、ちょっと拍子抜けでした。
みんなから侮られながらもいつも笑顔で正しい意見と立場で、不得手なことは避けていく芦川さんが、最後までそのペースを崩さず望みの居場所を手に入れる。
行間から吹き出す憎しみや、美味しいはずのモノを食す描写の不快さから、逆転の展開があるのかと、期待していたのですが。著者・高瀬準子さんの職場に、こういう感じの人がいる(もしくは、いた)のでしょうね。芦川さんの内面描写も読みたい気もしましたが。
しかし、それ以上に気になったのは、彼女に対する抵抗勢力の感覚。普通に、手料理好きじゃないって、言えば良いのに。でも、単純な嫌い、でもなさそうで。
自分の本当に好きなものを、どれだけ選べているだろう。
自分が本当にしたいことを、どれだけやれているだろう。
自分が本当に感じていることを、どれだけ言葉にできているだろう。
自分が本心から望んでいること以外を、正しいからとか世の中そういうものだからとか空気を読んでとか相手に合わせてとかコンプライアンスとか義務感とかで、押しつけられ受け入れざるを得ない。ふざんけんな。
と、いう鬱屈が「食」に集約され、主人公・二谷の矛盾に満ちた過剰反応になっているのかなあ、なんて、思いました。
職場内三角関係の形を借りた、価値観のぶつかり合い。