「怪物」 ― 2023/07/08 23:09

多分、いつかやるTV放送視聴でも楽しめる作品だろうと思いましたが。
祝・カンヌ脚本賞受賞!と、いうよりは、追悼・坂本龍一の気持ちで映画館へ行ったのですが、実に控えめなピアノ曲で、あんまり印象に残っていません。怪物めいた金管楽器の叫び声に全部持って行かれた感じです。
ストーリーは、さすがの面白さで、三部構成の一部、二部内で描写された不可なシーンが、最後の当事者(小5の子供)の視点できれいに謎解きされる。そのうえで、何が真実なのか、不明なままの要素も残している。テーマ的にも、たいへん、現代的。
でも、世界に認められた、坂元裕二脚本にケチをつけるようですが、「不可解なシーン」を大人たちが曖昧なままにしすぎで。「何が起こったのか」と、「真偽不明の噂話」だけしか見ず、「どのような状況だったのか」「その理由は何故なのか」を追求せず、語らず。それぞれ、それが一番都合良いと考えてのことなのでしょうが、その結果、どんどん事態が膨張していく。そんな怪物化した状況、子供たちだってしんどいだろうし、誰も幸せにならないのに。
是枝裕和監督っぽさは、薄め。子供の撮り方が上手な方なのに、今回メインの黒川想矢くん、柊木陽太くんは(どちらもとびきり美少年)、特殊事情を抱えている設定のためにかえって普通で、むしろ、名も無い教室内のクラスメイトの児童たちの方が是枝監督っぽいナチュラル小学生を感じました。パンフによると、やはり、演出手法を変えたそうです。
計算し尽くされた物語も、役者陣の芝居も良かった。
夜の街明かりが輝く中に、黒々とした塊ともあなぐらとも見える、印象的な諏訪湖。
祝・カンヌ脚本賞受賞!と、いうよりは、追悼・坂本龍一の気持ちで映画館へ行ったのですが、実に控えめなピアノ曲で、あんまり印象に残っていません。怪物めいた金管楽器の叫び声に全部持って行かれた感じです。
ストーリーは、さすがの面白さで、三部構成の一部、二部内で描写された不可なシーンが、最後の当事者(小5の子供)の視点できれいに謎解きされる。そのうえで、何が真実なのか、不明なままの要素も残している。テーマ的にも、たいへん、現代的。
でも、世界に認められた、坂元裕二脚本にケチをつけるようですが、「不可解なシーン」を大人たちが曖昧なままにしすぎで。「何が起こったのか」と、「真偽不明の噂話」だけしか見ず、「どのような状況だったのか」「その理由は何故なのか」を追求せず、語らず。それぞれ、それが一番都合良いと考えてのことなのでしょうが、その結果、どんどん事態が膨張していく。そんな怪物化した状況、子供たちだってしんどいだろうし、誰も幸せにならないのに。
是枝裕和監督っぽさは、薄め。子供の撮り方が上手な方なのに、今回メインの黒川想矢くん、柊木陽太くんは(どちらもとびきり美少年)、特殊事情を抱えている設定のためにかえって普通で、むしろ、名も無い教室内のクラスメイトの児童たちの方が是枝監督っぽいナチュラル小学生を感じました。パンフによると、やはり、演出手法を変えたそうです。
計算し尽くされた物語も、役者陣の芝居も良かった。
夜の街明かりが輝く中に、黒々とした塊ともあなぐらとも見える、印象的な諏訪湖。
「この世の喜びを」 ― 2023/07/15 23:31
著者・井戸側射子氏、元は詩人で国語教師という経歴に、納得です。文体は二人称!単語は平易だけど独特な言い回し、現在進行形と過去回想が同階層に入り交じる表現。
読みにくい、自分、苦手なタイプの文章です。主人公が女子高生と接触するまで、ショッピングセンターの描写が単調に続くのがキツかった。
主人公・穂賀さんが勤める、どこにでもありそうな商業施設内での、多様な人々の邂逅。彼女は、何を見ても感じても、娘の思い出と結びつける。もう社会人になる娘たちを、とても愛しているのだろうな、と思うけど、あんまり仲良しな感じじゃないっていうか、愛情が通じてない感じ。
彼女自身の娘時代の思い出も、ふわふわと浮かび上がる。
違うんだよ、若さは体の中にずっと、降り積もっていってるの、何かが重く重なってくるから、もう見えなくて(後略)
作中の舞台も、出来事も、ヒロインの感情も、起伏が乏しい。お話としては退屈なものですが、穂賀さんが相手に伝えたいモノはその平凡さの中にあり、この世の喜びを感じている。
読みにくい、自分、苦手なタイプの文章です。主人公が女子高生と接触するまで、ショッピングセンターの描写が単調に続くのがキツかった。
主人公・穂賀さんが勤める、どこにでもありそうな商業施設内での、多様な人々の邂逅。彼女は、何を見ても感じても、娘の思い出と結びつける。もう社会人になる娘たちを、とても愛しているのだろうな、と思うけど、あんまり仲良しな感じじゃないっていうか、愛情が通じてない感じ。
彼女自身の娘時代の思い出も、ふわふわと浮かび上がる。
違うんだよ、若さは体の中にずっと、降り積もっていってるの、何かが重く重なってくるから、もう見えなくて(後略)
作中の舞台も、出来事も、ヒロインの感情も、起伏が乏しい。お話としては退屈なものですが、穂賀さんが相手に伝えたいモノはその平凡さの中にあり、この世の喜びを感じている。
「荒地の家族」 ― 2023/07/16 23:01
地面が動く、などの表現が、結構好き。
同じく23年上半期に芥川賞受賞した「この世の喜びよ」とは、うって変わって、苦しみに満ちている。著者の佐藤厚志氏は本業が仙台の書店員、あの震災に関する現地の人による描写はさすがに重みを感じました。
話は、暗い。死のイメージが随所にちらつき、主人公の植木屋、坂井祐治の自己肯定感の低いこと。震災で奥さんと商売道具と故郷の風景を失い、その後も、色々上手くいかない。淡々とした文章で綴られる、荒涼とした心情、喪失感、虚無感、徒労感。
彼の母親や息子は、今現在の現実の上をしっかり踏みしめている感じなのに、主人公は背中にべっとりと過去の亡霊を張り付かせている。
もちろん、現在、というのは過去から切り離すことはできないし、未来までつながっていくものではあるのだけど。
同じく23年上半期に芥川賞受賞した「この世の喜びよ」とは、うって変わって、苦しみに満ちている。著者の佐藤厚志氏は本業が仙台の書店員、あの震災に関する現地の人による描写はさすがに重みを感じました。
話は、暗い。死のイメージが随所にちらつき、主人公の植木屋、坂井祐治の自己肯定感の低いこと。震災で奥さんと商売道具と故郷の風景を失い、その後も、色々上手くいかない。淡々とした文章で綴られる、荒涼とした心情、喪失感、虚無感、徒労感。
彼の母親や息子は、今現在の現実の上をしっかり踏みしめている感じなのに、主人公は背中にべっとりと過去の亡霊を張り付かせている。
もちろん、現在、というのは過去から切り離すことはできないし、未来までつながっていくものではあるのだけど。
「嫌われ松子の一生」 ― 2023/07/23 21:53
読みながら、度々「だめ、そっち行っちゃアカン!!」と叫びたくなった。
かつて、若く美しい中学校教師だった川尻松子の、転落の物語。松子自身と、平成の世で松子を調べる彼女の甥の、両面からの一人称で、彼女が殺害されるに至るまでの人生の軌跡
が語られる。
松子は誰もが認める賢さと手先の器用さを持ち、基本的に真面目な努力家と言えるでしょう。それなのに、生き方が絶望的に不器用で。彼女は真剣に、切実に、だめな選択肢をとり続ける、次から次へと。彼女自身も傷つき、他者も傷つけ、何もかもを失い、誰も幸せにすることなく生きて死んだ。
愛人生活や風俗や刑務所や引き籠もり、日の当たらぬ裏路地人生の中でも、それなりの人間関係は生まれ、まっとうな道に戻る機会も、何度かあったはずなのに。差し出された手を、拒んでしまったのは、なぜだろう。
誰よりも、他者からの愛情を求めていたのに、孤独が彼女を狂わせたのだろうか。
山田宗樹がミステリ風に描く、泥の中でもがき続けた女の一生。
かつて、若く美しい中学校教師だった川尻松子の、転落の物語。松子自身と、平成の世で松子を調べる彼女の甥の、両面からの一人称で、彼女が殺害されるに至るまでの人生の軌跡
が語られる。
松子は誰もが認める賢さと手先の器用さを持ち、基本的に真面目な努力家と言えるでしょう。それなのに、生き方が絶望的に不器用で。彼女は真剣に、切実に、だめな選択肢をとり続ける、次から次へと。彼女自身も傷つき、他者も傷つけ、何もかもを失い、誰も幸せにすることなく生きて死んだ。
愛人生活や風俗や刑務所や引き籠もり、日の当たらぬ裏路地人生の中でも、それなりの人間関係は生まれ、まっとうな道に戻る機会も、何度かあったはずなのに。差し出された手を、拒んでしまったのは、なぜだろう。
誰よりも、他者からの愛情を求めていたのに、孤独が彼女を狂わせたのだろうか。
山田宗樹がミステリ風に描く、泥の中でもがき続けた女の一生。
「猫道楽」 ― 2023/07/30 01:17
時代は昭和の半ばぐらいのイメージ、和風建築に洋風の豪華内装の〈猫飼邸〉には、姿の良い兄弟たちが猫と遊ぶ。リアル猫も登場するけど、猫とは、男色のお相手を指す隠語だった。
お久しぶりの長野まゆみワールド。五話構成の、最初と最後だけ同じ男の子が主人公で、この梓一朗くんが一番男らしくて可愛い。彼ら四人のゲストたちは、〈猫飼邸〉の駒形兄弟たちの道楽相手というだけではない。それぞれの今は亡き身内がこの屋敷や兄弟の父親と縁があって、ちょっと運命的雰囲気があります。
咲きこぼれる桜、雨の日の鈴蘭、盆の提灯、紅瑪瑙のカメオに菊の綿、高速豆電球。
雰囲気を味わってナンボの作品。華美で、哀愁とエロチックが漂う。
お久しぶりの長野まゆみワールド。五話構成の、最初と最後だけ同じ男の子が主人公で、この梓一朗くんが一番男らしくて可愛い。彼ら四人のゲストたちは、〈猫飼邸〉の駒形兄弟たちの道楽相手というだけではない。それぞれの今は亡き身内がこの屋敷や兄弟の父親と縁があって、ちょっと運命的雰囲気があります。
咲きこぼれる桜、雨の日の鈴蘭、盆の提灯、紅瑪瑙のカメオに菊の綿、高速豆電球。
雰囲気を味わってナンボの作品。華美で、哀愁とエロチックが漂う。
大阪大会決勝、2023夏 ― 2023/07/30 16:27
よくよく確認すれば、今年は試合開始が10時から、出遅れてしまった。
毎日暑いからねえ、試合の流れは切れるけど、イニング間の給水タイムも致し方ない。
府では毎度おなじみの対戦の両チーム。
昨日の準決勝では、王者・大阪桐蔭は箕面学園相手に延長までもつれ、攻撃力の不足と土壇場の底力を見せられましたが、この試合は、主将でエースの前田が出ていなかった。この絶対エース、この夏あまり投げていないのは、温存なのか不調なのか。
しかし、甲子園のかかったマウンドには、やはり先発してきた。
履正社高校は、昨夏まったく打てなかった好投手を、打ち負かした。二回に内野ゴロで先制、四回に連打で追加点。
そして、福田投手の安定感がスバラシイ。被安打3,四死球3完封お見事。
大阪府内でライバルと言われながらも、対戦成績では大きく負け越していた履正社、3-0で甲子園の切符をもぎ取った。
おめでとうございます。
毎日暑いからねえ、試合の流れは切れるけど、イニング間の給水タイムも致し方ない。
府では毎度おなじみの対戦の両チーム。
昨日の準決勝では、王者・大阪桐蔭は箕面学園相手に延長までもつれ、攻撃力の不足と土壇場の底力を見せられましたが、この試合は、主将でエースの前田が出ていなかった。この絶対エース、この夏あまり投げていないのは、温存なのか不調なのか。
しかし、甲子園のかかったマウンドには、やはり先発してきた。
履正社高校は、昨夏まったく打てなかった好投手を、打ち負かした。二回に内野ゴロで先制、四回に連打で追加点。
そして、福田投手の安定感がスバラシイ。被安打3,四死球3完封お見事。
大阪府内でライバルと言われながらも、対戦成績では大きく負け越していた履正社、3-0で甲子園の切符をもぎ取った。
おめでとうございます。
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