「嫌われ松子の一生」2023/07/23 21:53

読みながら、度々「だめ、そっち行っちゃアカン!!」と叫びたくなった。
かつて、若く美しい中学校教師だった川尻松子の、転落の物語。松子自身と、平成の世で松子を調べる彼女の甥の、両面からの一人称で、彼女が殺害されるに至るまでの人生の軌跡
が語られる。
松子は誰もが認める賢さと手先の器用さを持ち、基本的に真面目な努力家と言えるでしょう。それなのに、生き方が絶望的に不器用で。彼女は真剣に、切実に、だめな選択肢をとり続ける、次から次へと。彼女自身も傷つき、他者も傷つけ、何もかもを失い、誰も幸せにすることなく生きて死んだ。
愛人生活や風俗や刑務所や引き籠もり、日の当たらぬ裏路地人生の中でも、それなりの人間関係は生まれ、まっとうな道に戻る機会も、何度かあったはずなのに。差し出された手を、拒んでしまったのは、なぜだろう。
誰よりも、他者からの愛情を求めていたのに、孤独が彼女を狂わせたのだろうか。
山田宗樹がミステリ風に描く、泥の中でもがき続けた女の一生。

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