「あちらにいる鬼」2022/12/10 21:38

あちらとはどちらなのか、鬼とは、誰を指すのか。
単純に割り切れない解析しようのない、人と人との間に発生する、心。
小説家の男と、その妻と、愛人の女流作家。そして、画面に頻繁には登場しないが、夫婦の長女がいて、彼女が長じて両親と父の愛人をモデルに執筆したのが、原作小説。子供の頃、クリスマスに父親が愛人の元にいて家庭に不在だったり、寂しい思い出もありそうなものだが、父の愛人(故瀬戸内寂聴)を恨む感じではなくて、家族ぐるみの(?)交流が続く。
男は、作家としては戦争とか差別とか硬派なテーマを扱う(映画内でも、60年代当時の社会的事件が挿入されている)が、女関係には非常にだらしない、ひどい男。にもかかわらず、彼が女性ファンにモテるのも、なんとなく納得してしまう、豊川悦司の演技。風呂でも寝床でも常に眼鏡を外さない(笑)演出は、虚をまとうのが現実と言わんばかり。
映画で描かれるのは、男の行き来する二つの世界で、一つは団地内の、妻(広末涼子)と子と暮らす普通の家庭。もう一つが、知的で華やかで生活感の薄い愛人(寺島しのぶ)宅。
苦しみもあったが、妻は守り続けた。何を?
苦しみもあったが、愛人は断ち切った。何を?
選んだ生き方は違っても、嘘でいっぱいの男に対する、それぞれの愛は真実。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://mimikaki.asablo.jp/blog/2022/12/10/9547063/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。