「ラーゲリより愛を込めて」2022/12/31 16:05

出演役者さんたちの熱演に尽きます。かつて、かわいい男の子だと思っていた二宮くんは、ボロボロになった中年の役でも上手に演じるものです。芯の強い、でも英雄とか聖人とかではない、等身大のリアルな男として。脇を固める皆さんも、それぞれシベリア抑留者の典型例として、分かり易く説得力のある存在感を発揮してくれました。
原作は30年以上前に発表された有名なノンシクション(未読)だし、戦後ロシアに連れて行かれた人々の過酷な状況については各種報道でも見聞きしている。エピソードとしてはさほど新しい感じではない。
後日談の結婚式シーンや映画版タイトルに表されるメロドラマ要素は、意味の無い要素とは思いませんが、もう少し控えめなほうが良い気もする。奥様も戦後ご苦労を重ねたことでしょうに、肌の色艶が良く美貌が際立って、作品の厳しさが削がれる。
今日、ウクライナからロシアに連れて行かれた人たちも多くいると聞きます。そういう人たちも大変な目に遭っているのでしょうか。町が攻撃を受け逃げ惑うシーンはまさに、今、現実に起こっていることかと思うと、大変恐ろしい。
最近観た「RRR」と違って、暴力を使わない戦いを描く作品ですが、一つだけ共通点がありました。苦しい場面に自分を、周囲を奮い立たせる、歌。
そう、人間としての尊厳を支えるのは、音楽であり、美しい言葉であり、言葉を超える試合(ゲーム)であり、可愛く健気なワンコなのです。
主人公の山本さんのように、魂に文学がある人は、苦境で発揮する文化の力をよく知っているのでしょう。不要不急とか言うな。しんどいときこそ、必要なのです。