坂東玉三郎の残月2025/06/14 23:19

雨の京都の南座に、大正時代の長崎が。長椅子の黒猫を抱き、灯籠を流し、ステンドグラスに十字架、長いキセルで阿片の夢。
竹久夢二生誕百四十周年記念、なので、夢二の水彩画、長崎十二景を下敷きにした舞踏劇がメインの公演です。
でも、台詞のない劇よりも、その前の地唄舞の方が美しく感じました。照明で月下を表す以外に、特に凝った演出があるわけでもない。箏と三絃と唄、最小限の動きで情緒を見せる舞。坂東玉三郎の残月。
今回は歌舞伎ではなかったのですが、公開中の映画「国宝」も評判が良いし、来月あたり観に行きたいです。

モネ 睡蓮のとき2025/06/07 23:58

京都市京セラ美術館は古風な建物もお庭も美しい。
ただ、岡崎公園界隈の蒸し暑さはたまらない。

人の多い土曜日で、予約優先制となっているので入場待ちになるかと思っていましたが、すんなり当日券買って入れました。ポスターでは10:00からとなっていたのに、9:30の入場。
ゴッホのそうですが、モネの描く光の風景も、絵の近くに寄って見るとなんだか良くわからない色彩の連なりにしか見えないのに、距離をおいてちょっと振り返った瞬間、それが風景だと認識できる。そして改めて近くに寄ると、やはりなんだか分からない。白内障がひどくなる晩年のバラのお庭は、赤っぽいモヤのよう。
画家の内面からあふれた光が、現実と幻想の境界を行き来する。光を浴びる花も、水面に映る影も、等しく揺らめく。
モネは同じ題材を異なる条件で描きます。対象の多様な表情を全て捕らえようとするように。描く題材の元へ赴くのでは無く、自分の庭に作るようになったのは、目の不安のためか、欧州大戦の暗さを帯びる俗世間を厭うたためか。
ショップでは、水辺に葉を揺らす柳と、ポスターにも使用されていた睡蓮のポストカードを購入。睡蓮の紙袋が可愛かったのですが、少々大きすぎてパスしてしまいました。

すべてを描く萬絵師 暁斎2025/05/17 16:30

中之島の香雪美術館は初めて。
以前行った没後130年展のように、海外収蔵作品は無い。河鍋暁斎は明治時代に外国人を弟子にしていたくらいで、めぼしい作品の多くは異国へ持ち出されているようで、ちょっと残念。
狩野派で九年ほど絵画修行をしていたわけですが、ほんの七歳の頃に入門してすぐ辞めちゃった歌川国芳先生の自由な庶民向け作風のほうが暁斎のイメージに合う。全体的にユーモラス、かつ精緻。
帰りに購入した絵葉書は、夕涼みの女性が蛙相撲を見物する絵。暁斎と言えば蛙。墓石がガマガエルの形をしているそうで、これも一度拝みに行きたい。

春、清水寺2025/04/12 23:12

朝八時前に到着すると、さすがに空いていた清水寺。暖かい晴天で景色も美しい。広い境内をゆったりと歩く。桜は、木屋町の桜並木に比べると慎ましい。盛りを過ぎてしいましたし、ザッと見たところ、ここは秋の紅葉の方がメインだと思いました。
帰りは、人が増えてきた土産物屋で八ツ橋を試食、ぬるめの緑茶も美味しい。
そのまま円山公園の方まで足を伸ばし、春の土曜の半日を穏やかに過ごしました。

養源院の白象2025/01/13 16:09

昨日三十三間堂の通し矢を見物に行ったとき、隣接する寺院がちょっと気になって。
淀君が父親を供養するために建て、その妹の二代徳川将軍の正室が再建。伏見城の血塗られた廊下を天井にしていて、手形が普通に確認できる。四百年前の壮絶な戦いの跡。
お目当ては俵屋宗達の初期作品、杉戸に描かれた白象。これが、簡略された形でありながらどっしりと重量感があり、牙が長くて、なんだか目つきも鋭い。
戦場に散った武士たちの供養とか、参拝客のお出迎えとか説明がありましたが、力強すぎて、怨霊調伏、みたいに見えました。
帰りに、境内に丸まっていた猫をなでる。迷惑そうにされましたが。白象の迫力のあと、黒猫の柔らかさに癒やされる。

大シルクロード展2025/01/08 23:16

ラクダの剥製がお出迎え。
凍てつく京都盆地で
焼け付く大陸曠野へ
ものすごく保存状態の良い、正倉院展みたいな印象。湿気がないからでしょうか。二千年以上前の布製品や木製品の模様がはっきり確認できます。
金と赤の岩を一頭の虎が優美に登っていく。ポスターの写真ではそんな風に見えるのに、実物は掌サイズの杯で、どこかにぶつけた感じに大きくへこんでいる。ウイグルのお墓の中で眠っていた彼にも、何かしらのドラマを経てきているのでしょう。

「雪舟伝説」2024/06/02 21:43

五月最後の日曜日に、京都国立博物館の特別展へ。最終日で、混んでいました。
墨で描かれる世界は、光を切り裂く影でできている。淡いようで、鋭利。不純物を削ぎ落とした簡略。そんな雪舟の作品で国宝指定されている全6点が集結。
しかし一番人気は、ポスターにもあった伊藤若冲の鶴。格好良い。でも雪舟の花鳥画(珍しい)の影響が有るっていうのはこじつけっぽく感じました。両作品は細かいところは違うし、鶴の立ち姿なんて大まかなところは誰が描いても同じようになるでしょうし。
もう一点、雪舟以外で印象的だったのが、葛飾北斎の山水図。これは確かに雪舟作品に似ていますが、しかし、北斎の方がなぜか、抜群に格好良く見えました。こちらはポストカードを販売されていなくて、残念。

「没後100年 富岡鉄斎」2024/05/12 23:21

五月半ばで夏日の岡崎公園、国立近代美術館へ行って参りました。
書物と、美術と、現地探訪を好んだ文人画家。日本人は昔から、信仰の薄い文化的な聖地巡礼が大好きなスピリットです。
展覧会では鉄斎の作品および多岐にわたるコレクションを紹介。大量にインプットし、それをアウトプットする。趣味人の「楽しい」という思いがひしひしと伝わってきます。
今年の引っ越しの時、自分の持ち物に占める紙の小説や漫画の割合の多さを思い知りました。整理のつかない大変さと、それでも自分の空間が書に囲まれることの喜び。
自分に漢詩の素養が無く解読できないのが残念でしたが。展示替えのため、気になっていた富士の画が見られなかったことも。
その後、お昼ごはん食べて岡崎公園で開催のアースデイをちょっぴり見て回る。暑かった!

日向大神宮2024/01/03 23:34

初詣にあらず。23年はあんまり寺社参りしてないな、と思い、年の瀬に日向神社へ。奥にある天岩戸をくぐり、そのまま大文字山頂上を目指す。午後二時半頃到着し、持参した蜜柑を剥いて休憩。
それから少し下り、普段職場の窓から眺めるだけの、送り火の大の字へ至る。京都市街地一望。
この日は日暮れ前に下山するペースを考えていたのですが、下り途中に上ってくる人と多数連れ違う。今度行くときは、私も夕日の時刻を狙っていこうかしら。

ランタンと琉球太鼓2023/01/14 23:40

魂を震わせる、ずしりとした響き。時に指笛。
据え付けて連打する和太鼓とは趣が異なる。吊帯を肩から斜め掛けし、腹に抱えた太鼓を右手のバチで打ち、緩いテンポでくるくるとステップを踏む演舞。
三十名ほどのメンバーは、小中学生が多いか。幟には「琉球祭太鼓 京都支部」とありましたが、大阪や兵庫からも集まってきたという。雨が上がって本当に良かったです。

そんな奉納太鼓が行われたのは、萬福寺のランタンフェスタ。日中国交樹立50年記念で、先月から開催されている光のイベントです。中華風寺院に中国のランタン飾り。入場料が強気なお値段設定だったのですが、市民サービスデーで半額以下、甘酒無料券あり、に釣られました。
骨組みにカラフルな布やガラス小瓶を貼り付けた、鶴やお釈迦様や宝船や桃園の孫悟空などの像が、日の落ちた境内に輝く。変わったものでは、樹脂製の大きな輪が色とりどりに吊り下げられている。十年以上ぶりくらいに、ブランコを漕ぎました。それも、色の変わる光を放つやつを。
蓮池周りの、大型犬サイズの昆虫たちのランタンは印象的でした。中国では虫っておめでたいモノなのでしょうか。
イタリア由来のルミナリエほどの洗練はありませんが、愛嬌は感じます。