「驟雨」2010/05/07 23:13

 なんかもう、春を飛び越して夏が来てしまったような連休でしたが、灰色の平日がもどり、今日は今朝から雨で。

 ドライな関係を求めて娼婦を買ったはずなのに、いつの間にやら彼女に対してトキメキやら嫉妬心やらを持つようになってしまった男の、ちょっと妄想交じりな苦悩。
 と、しか言いようのない話。
 なんだかあんまり実のなかった、だらっとした連休中に読んでいた、吉行淳之介。
 何年か前に図書館の「もう古くなった本差し上げます会」でもらった短編集ですが、その時も思ったものですが、どこにポイントを置いて読めばいいのか、よく分かりません。今回再読しても印象変わらず。日本語で書かれた小説で、ここまで理解不能なのも珍しいです。
 この世界の何かを、丹念にすくい上げています。表現が絵画的というか(視覚的というのではなくて)、あるモノや現象をひどく印象的に抽象的に取り上げるのですが、ストーリーらしいものが乏しいせいでしょうか、やっぱり私には分かりにくい。
 いくつかの短編の中で最も掴みどころがないと思ったのが、確か芥川賞取った、「驟雨」。じりじりと娼婦にのめり込んでいく男の焦燥を、滑稽と笑えばいいのか。私が男だったら、もう少し理解できるのかなあ。

「俺様ティーチャー」2010/05/08 22:00

 たとえば。
 正直、どうかと思ってたんですよね。
 最初は私も面白い認識だと思いましたが、ネタとしても、いい加減に飽きるでしょう。
 どいつもこいつも「つんでれつんでれ」って、何もかもその一言でくくってしまうのはいかがなものかと。ボキャブラリーっていうか表現力っていうか、何かが貧しくなっていくようで。
 ところが、笑ってしまいました。こういうのもアリなのか、と。ツンデレもここまで極端にいくと二重人格だわ。

 本編もさることながら、オマケの四コマ「東西南北」が面白すぎ。
 学園コメディー。とにかく小難しくない愉快なモノを読みたくて買った漫画。不良が中心な学園モノって、「今日から俺は」がその昔好きでしたが、あれの少女マンガ版っていうか。
 どいつもこいつも愛すべきバカばっかりで、オモロイキャラクター。
少女マンガにアリガチな、主人公以外の主要登場人物みんな男の子ってパターンですが、彼らは(一応不良なのに)妙に可愛いヤツラばかりで(最近ではツンデレよりオトメンのほうが流行ってるのかなあ)、一番性格男前かつ喧嘩が強いのがヒロインの真冬だったりします。
 が、その上を行く最強キャラが、佐伯先生こと鷹臣くん。人間じゃない、という形容がぴったりのゴーイングマイウェイな先生が、学園長と交わした賭け。ヒロインたちはそれに巻き込まれ協力するする、というのがストーリーの主軸ですが。
 愉快なキャラクターたちの愉快な話が多くて、そのへんの展開は遅いです。単行本7巻の時点でまだ高1の夏休みですから(賭けの期限は三年間な設定なのに)。
 でもまあ、ゆるゆると、彼らの面白い学園生活を描いていってもらいたいもんです。

「平安妖異伝」「道長の冒険」2010/05/14 01:39

 1300年祭とやらで、奈良が注目を浴びていますが、あえて平安京を。

 藤原道長、まだ二十代半ばで、まだ摂関家の五男坊で政治の中心部に入り込む気配の無かった頃。彼が遭遇する怪異と、それを助ける少年・秦真比呂の短編連作集。
 なんか、読んでて眠くなるんですよねえ。平岩弓枝作品は、庶民の江戸情緒は凄く生き生き描いてくれるのに、京の貴族の雅やその裏の暗黒は、なんだか曖昧で。
 私が日本史に疎いせいもあるかもしれません。現代の子供の名前は読み方が分からないってよく聞きますが、昔の人の名前の方が読み方分かりません。物語の核となるのが、真比呂の操る音楽・楽器なのですが、「篳篥の音色」と書かれていても、私には想像しづらいっていうか。
 真比呂は楽器の心を解し、音楽の力を操る超能力少年で、たとえばハーメルンの笛吹きみたいな芸当も成してしまうのですが、この子があまりにも何でも知っていて何でもできてしまうのも、緊張感がなくなってしまう一因でしょう。「蛙人」なんかは、ちょっとホラーっぽくていい感じだったかなあ。

 ところが、その続編となる「道長の冒険」は、同じ小説新潮連載(前者は99年から2000年、後者は03年から04年)とは思えない、趣の違う作品で、私はこちらのほうが好みです。
 副題には「平安妖異伝」とありますが、舞台はほとんど京から離れた異国で、道長イン・ワンダーランドって感じです。ウサギならぬ猫の寅麿をお供に、根の国に捕らえられた真比呂を救出する旅に出るのです。
 道長って、「この世はわが世」っていう、ちょいと調子に乗ったこと言ったために悪いイメージを持たれがちですが、この小説の道長はすっごいいい人です。前作の中納言から大納言に出世してますが、やはり出世欲はなく権力をカサにきたところも無く、旅先で出会う困っている人たちを見捨てておけない親切な人です。
 そうやって、人助けしたり妖怪退治したり神仏精霊の加護を得たりして旅をしていきます。子供の頃に読んだ冒険ファンタジーを思い出させる懐かしさ。こういう冒険譚の発展系として、後の平岩版「西遊記」に繋がっていくのですね。
 しかし、なんていうかこう、道長さん。真比呂君のことがめちゃめちゃ大好きですよ。台詞がちょっと、恥ずかしい……

「BLACK LAGOON」2010/05/22 14:48

 鴨がネギも味噌も鍋もしょっての、ついでにコンロも抱えてきた、そんな感じじゃなァ。
 ……一見、そんな風に見える元会社員な日本人・ロックが、悪と暴力の支配する無法者の世界で仲間たちとドタバタするお話。

 もともとは、TVアニメ版がとんでもなく格好良くてハマッてしまったんですね。これぞ深夜アニメって感じの人の死にっぷり、格好いい音楽、映画のような軽妙な台詞、ど派手なアクション、メイドの不死身っぷり、芸術品かと思うほどの銃の美しさ、青い空青い海黒い硝煙赤い血飛沫。製作スタッフがこだわりぬいています。
 アニメの第一期と二期は全部録画したのを残していたんですが、残念ながらどれも、壊れたハードディスクの中です。
 漫画の第一巻は普通に買いましたが、それ以降は古本屋購入。ストーリーが分かっているので原作はあんまり焦って買ってなかったんですね。というか漫画だと動きとかカラーとか声優さんの演技力とかが差し引かれてしまうので、なんか物足りない気がしてしまって。ゆっくり堪能するにはいいんですが。

 ぜひとも、アニメ第三期も作ってもらいたいんですが、どうなんだろう。