「乙女の密告」2010/09/01 23:20

 日中は、家事をしたり昨日買った「輝け甲子園の星」をめくったり。
 夕方から、図書館へ。雑誌コーナーで文芸春秋を。

 筆名の赤染晶子は日本詩歌文学を連想させるのですが。
 小説の舞台は京都外大のドイツ語スピーチゼミで、題材はアンネの日記、そして形式は面白おかしくデフォルメされた学園コメディ、という芥川賞受賞作。
 物語のヒロインの憧れであるスピーチクラスの先輩・麗子様。彼女が「乙女」にあるまじき行動を取ったと噂が流れ、そしてヒロインもまた、乙女たちの噂の餌食となってしまう。
 ガッカリな事実よりふわふわした便所の噂が大事な乙女たちに、真実を訴える術はあるのか。
 バラをくわえて人形に話しかけるドイツ人教師が主張する重要なこと、とは何か。
 麗子様の言う、忘れてしまってはじめて思い出せるもの、の意味するところは。
 麗子様は、尋常でなくスピーチが好きだったのにもかかわらず、沈黙することで自らの潔白を乙女たちに納得させます。
 そしてヒロインは、マイクの前に立った。忘れることの恐ろしさを胸に、思い出し、宣言(密告?)したのです。作中で言うところの、「血を吐く」。
 些細で無意味な差異によって区別(差別)したがる乙女たちを、ユダヤ人迫害になぞらえているのは分かるのですが。
 ヒロイン=乙女 と、アンネ=ユダヤ人の対比なのでしょうか?なんか、ここらへんがよく分からなくなってきます。乙女=真実ではないからです。
 もしかしたら彼女は、「乙女」などという曖昧なものから卒業して、彼女自身の真のアイデンティティを得たのかもしれません。