「踊る彼女のシルエット」2022/08/05 23:22

原題の「デートクレンジング」の方が格好良いと思うのだけど、双葉文庫版で改題されてしまった。あんまり馴染の無い単語ですが、「あなた本当に男とデートしたいんですか、気が乗らないのに無理してない?」ということ。
妊活中のヒロインが、バリバリ仕事していた女友達が婚活にのめり込むのを面白くない、らしくないと思ってしまうお話。仕事に疲れると「結婚」が浮かんでくるのって、ありがちなのでしょうね。
主題は「結婚した女と、してない女とは、付き合いが途切れるものなのか」という、柚木麻子らしいものですが、それにもっと色々な問題を含ませてちょっと複雑になっています。
前に読んだ、腹心の友を描いた「本屋のダイアナ」では、互いの状況が変化しても変わらぬ態度でいられる相手ってステキだ、ということでした。
やることが変わっても、その人の本質、核になる部分は残っているのだから、そこを大事にすれば良いのです。それなのに、実体のあるような無いような「あるべき理想の姿」を押し付けられたり、押し付けてしまったりする。
それを洗い流してしまったら、何が見えてくるのだろう。

第104回全国高校野球選手権大会、開幕、スタイル2022/08/06 19:39

開会式の行進は主将のみ。プラカードのみのチームも。
もう3年目だというのに、未だ感染症の暗い影がぶわりと背後に張り付く。

第一試合 10-3
先に主導権を握ったのは日大三島、エースで4番の松永選手が投打に活躍。ところが、中盤からピッチングが微妙に調子に乗らない。チーム全体の歯車が狂う、失策がらみで追いつかれ攻撃も攻めきれず。
逆に、国学院栃木の二年生エースは、何かに目覚めたような投げっぷり。同点無死満塁のピンチを無失点で切り抜けた、その気迫が勝利を呼んだ!
ナマズ音頭と「新世界」のリズムに乗って、二回戦の相手は、昨夏優勝の智弁和歌山だ。

第二試合 7-3
監督さんがOBだから当然かもしれませんが、大分・明豊のチームスタイルは智弁和歌山に似ている。強力打線で攻め、複数投手継投で勝利をつかむ。
三十年ぶりに群馬大会を勝ち抜いた樹徳高校は、攻撃スタイルは送らずにバスター、応戦スタイルは合掌!!中盤に3-3に追いつき、試合を盛り上げました。

第三試合 6-5
京都国際高校、森下投手。昨年の甲子園で大きな注目を集めたものの、今春はセンバツ開幕直前に新型コロナ集団感染で辞退。その後、故障のために投げられない日々が続く。
そんな過程を経て、戻ってきた甲子園のマウンドで、彼は穏やかに微笑み、打たれ、三回で降板したのでした。
高校野球は楽しいですか?
一関学院の下投を打ちあぐね、点差を広げられ劣勢が続き、そして終盤、5-5の同点に追いついた。白熱の試合は延長戦へ。
大エースはいなくとも、投手をつなぎ、打線をつなぎ、きっと京都大会も、そうやって勝ち抜いてきたのでしょう。
延長11回、6-5サヨナラで一回戦敗退。
甲子園は楽しかったですか?

第104回全国高校野球選手権大会、二日目、大黒柱2022/08/07 23:10

第一試合 八戸学院光星7-3創志学園
継投VS大黒柱。
岡山・創志学園は終盤満塁のチャンスを活かせなかったのが痛かった。逆に、捉えられたエース・岡村に、この夏退任の長澤監督は、最後までマウンドを託しました。

第二試合 愛工大名電14-2星稜
伝統校対決。接戦が期待されましたが、二回までに10点差ついて早々に勝敗が決まってしまう。愛電がおなじみの足攻を絡めたのびのび攻めるのに対し、センバツで活躍したマーガードがピリッとしないままで。
野球は九回二死から、最後までわからない。なのですが、序盤でここまで点差が開き、この暑さを思うと、コールドゲームを考える必要も出てくるか……。

第三試合 鶴岡東12-7盈進
と、思ったら、序盤失策でグズグズだったチームが中盤立て直してちゃんとゲームを作ることもあるからなあ。広島・盈進は全員野球で序盤の劣勢を跳ね返そうとしたけど、山形・鶴岡東の3本塁打で突き放される。

第四試合 近江8-2鳴門
センバツ準優勝VS一回戦敗退。
と言うと差があるように聞こえますが、それでも楽しみな一戦だったのは、鳴門は大阪桐蔭との接戦だったから。公式戦であの打線を3点に抑えるって、間違いなく全国屈指のディフェンス力、投手力。
が、その守備力を以てしても、申告敬遠されてしまう近江・山田。四番打者としてもエースとしても、力強い存在感。高校生に対して「鉄人」なんて言うのは変な感じですが、確かに走者を負ってまともに勝負するのは怖い。
しかし、大黒柱一本で滋賀を勝ち抜いてきたはずもなく、敬遠後に2点タイムリー、逆転!
鳴門は監督不在(コロナ??)のハンデもありました。冨田投手は近江打線に球数増やされて、降板。

第104回全国高校野球選手権大会、八日目、変則2022/08/13 23:39

浜田5-3有田工
九州学院14-4帝京第五
国学院栃木5-3智弁和歌山
敦賀気比8-6市立舟橋

今年の夏の甲子園は、日程が変則的。大会開始前にコロナ感染が発覚した4チームの初戦が最後になるように。一年前だったら即出場辞退だったでしょうから、ナイス配慮。ですが、チームに感染者が出ると回復を待つまで練習ままならず。今日の第二試合は荒れたゲームで点差も開きましたが、愛媛・帝京第五高校もこれが本来の力ってことはないでしょう。
そして、満を持して、49チームの最後に登場(本当なら七日目のはずが、変則日程のため八日目に)した、昨夏優勝・智弁和歌山。
対するのが、開幕ゲーム快勝した国学院栃木で、試合前半を3投手で細かくつなぎ智和歌強力打線を抑え、六回からエース盛永(気迫!吠える!)を投入して後半勝負。このシンプルで分かり易い作戦がきれいにはまる。一回戦でも見せた積極的な走塁もあって勝ち越し、さらに主将のソロ本塁打まで出て突き放し、最後はエースが昨夏王者の反撃を封じた。
大阪桐蔭対抗馬、最有力(近畿大会で勝っているからなあ)チームが、初戦敗退。
「新世界」コクトチ、台風の目となるか。

第104回全国高校野球選手権大会、九日目、VS関東2022/08/14 16:10

日曜日、二回戦最後の三試合、東京・関東から3チーム。

朝寝坊をよそに、第一試合から好ゲーム。
前半は点を取っては取られ、また取り返す展開。後半は3-2のままで守り合いが続き、そのまま勝利した聖光学院、甲子園での対横浜戦初白星。横浜は聖光学院の攻撃をよくしのいだけど、打てなかったなあ。

地元・兵庫の公立高校登場で、第二試合は大応援。
しかし社高校、前半は防戦一方。7-0になった時はもうこれで終わったか、と思われましたが、七、八、九回でジリジリ追い上げました。ああ。序盤の失策が無ければなあ。
二松学舎大付属は、勢いに乗る大応援の後押しにも慌てず騒がず、7-5で逃げ切り。

センバツ王者が、第三試合で力を見せつける。
とにかく大阪桐蔭の攻撃時間が長いので、「鎌倉殿のテーマ曲は改めて聴くと格好良いなあ」って感じにブラバン演奏を堪能する試合になってしまった。守る方でも、一回戦では出なかった前田投手が、面白いように毎回奪三振。追い込まれると決め球のチェンジアップを打てない。この投球はもう少し見ていたかったけど、大量得点もあって五回までで引っ込みました。この試合、代打もばんばん出して、大阪桐蔭登録メンバーほぼ全員甲子園でプレイしたんじゃないの。
聖望学園だって激戦区・埼玉を勝ち上がってきたんだから、もう少し競り合うんじゃないかと思われたのですが。19-0。
三回戦で対戦する東東京・二松学舎大付属、どうする!?

第104回全国高校野球選手権大会、十一日目、八強2022/08/16 23:59

夏の甲子園も、もう終盤。
今年は横浜、智弁和歌山、天理、明徳義塾など、出場回数20を超える実績と実力がありファンにおなじみのチームが二回戦超えられず。ジャイキリの大会?それはそれで、楽しい。
八強に残ったチームは
・仙台育英:ジャイキリの傾向に飲まれることなく、充実の投手陣(失点すると惜しげも無く投手交代できる)で三回戦も初出場校を抑えて準々決勝へ。
・愛工大名電:春に強いイメージだけど。亡きチームメイトと共に。守備が堅くて捕球後のスローイングを安心して見ていられるなあ。
・高松商:主将の一番ホームランバッターくん、面構えが高校生に見えない貫禄。半世紀以上ぶりの八強の戦いを、三回戦のバントミスを修正して臨めるか。
・近江:ピンチは三振で切り抜け、満塁本塁打までやらかす主将・山田。スロースターターな彼は先制点を献上しがちで、そこから逆転で試合を盛り上げるヒーロー・システム。
・大阪桐蔭:王者の圧力は相手の失策を誘うのか、三回戦の二松学舎大付属のらしからぬミス。エースの完封もあり、万全。
・下関国際:三回戦で中国地方対決を制し、準々決勝で王者に挑む。好調な打線で、あの投手陣から点をもぎ取れるか。
・九州学院:「村神様」の弟・村上選手(顔!そっくり)の打撃がクローズアップされるけど、三回戦を完封した2年生エース・直江君もイイじゃないか。
・聖光学院:この夏は日大三、横浜、敦賀気比、と甲子園優勝経験のあるビッグネームを撃破。敦賀気比打線を1失点に抑える守備力。

去年みたいな近畿大会!?なことにはならずまずまず地域的に散っていますが、関東勢は八強に残らず。打倒・大阪桐蔭を果たすのは、どこだ!!!

第104回全国高校野球選手権大会、準々決勝、打て打て2022/08/18 21:55

平日で朝から雨にもかかわらず、けっこう外野席埋まってる。今日のお客さんはラッキーですね。トリプルプレーとか、大阪桐蔭が終盤追い越されて敗退するとか、珍しいシーンに出会えて。

仙台育英6-2愛工大名電
近江7-6高松商
下関国際5-4大阪桐蔭
聖光学院10-5九州学院

春夏連覇ならず。
山口県の高校野球ファンは大歓喜ですね。この勝ち方しかないって感じです。守り勝つのは至難なので、打ち勝つ(最低でも二桁安打打てる攻撃力)野球で、でも早い段階でリードを奪ってしまうと大阪桐蔭打線逆襲のいとまを与えてしまう。取って取られての展開の中で、最終回に初めて1点勝ち越し(4番のタイムリー!)、その裏、攻め込まれながらも守り切った。お見事。

愛工大名電は、自分たちがやりたい野球を、逆に仙台育英にやられてしまった。積極的な走塁に小技を交えて攻め込む。序盤から点差が開くと細かい野球がやりにくい。投手力ばかりが話題になるけど、宮城の名門校は攻撃も隙がありませんでした。

センバツ優勝校が敗れた一方で、準優勝校は辛勝。試合に勝って勝負に負けた感はあるかもしれません。主将対決では高松商業の浅野君が本塁打を含む3安打で圧勝。失策がらみで失点も、けっこう厳しい打球に見えました。不運。
近江の山田君も4番としては2打点だけど、投手としては四死球増えて、足つって降板。1点リードを二番手投手が死守したのは、好材料。

直江がマウンドに上がったとき、九州学院はすでに9失点。今日の大阪桐蔭もそうでしたが、前半を二番手三番手投手でしのいで後半エースを投入して終盤勝負、というパターンが増えた今大会。しかし、好調聖光学院打線を抑えきれず。二年生エースが投げてからは互角だったのになあ。

第104回全国高校野球選手権大会、決勝、悲願と躍進2022/08/23 00:00

仕事帰りの電車の中で。青いメガホンってことは、山口県出身の野球ファンかな。

8-1
仙台育英高校、悲願の初優勝おめでとうございます。
下関国際高校、躍進の準優勝おめでとうございます。
選手の疲労度から今日の決勝は育英有利かと思っていましたが、スコア見ると中盤まではいい勝負だったようです。平日お仕事で見られなかったのですが、スマホで見た優勝監督インタビューに泣きそうでしたね。
そう、彼らは、新コロのために中学の卒業式もウヤムヤのままで高校生活が始まり、制限の多い中で活動してきた世代なのだ。そんな中でも腐らず頑張ってきた君に、栄冠は輝く。

今年は準決勝を甲子園へ見に行きました。オンラインでチケット(外野)買って行きましたが、土曜なのに当日券も販売されていました。
東北初の優勝は地域を牽引してきた仙台育英だろうと思ってはいましたが、18-4で聖光学院がボロ負けするとは思わず。戦力充実と思われていたけど、投手陣調子出ず。逆に仙台育英は序盤に大量リードで選手を休ませることができました。
もう一試合は、両チーム安打数も失策数も同数で、それぞれにミスも好プレーもあった中、最終的に8-2と点差が開きました。攻撃時のもう一押し、守備時のもうひと踏ん張りの差。これまで踏ん張りどころを三振取って切り抜けてきた近江・山田の力投が効かなくなり、近江応援で震える球場で強い精神力を持ち続けた下関国際。春の一位二位を力でねじ伏せ、初の決勝進出。

「窓際のトットちゃん」2022/08/28 22:46

講談社文庫の新装版、カバーデザインが和田誠、イラストはいわさきちひろ。
「きみは、本当は、いい子なんだよ」
心が洗われる。子供たちの純粋さと、それを見守る大人たちのあたたかさが。
トットちゃんは一生懸命。手足に麻痺のある泰明ちゃんに初めての木登りを体験させてあげたくて、汗だくになって押し上げ引っ張り上げる。
不安定な脚立の上でかなり危ないことをしているのだ、安全管理の観点から見れば。でも、二人の真剣さと信頼関係がすばらしくて、それを危ないからって否定することなどとてもできない。
小説でも映画でも、「世の生き辛さ」がテーマになりがちな時代です。トットちゃんも小一で学校を退学になる、大変落ち着きのないタイプの子供で、「普通」という型にはめようとするととても「生き辛」かったことでしょう。幼いながらも漠然と疎外感を懐いていた彼女は、しかし、自分を責めない両親と、自分を受け入れて育んでくれたトモエ学園によって、皆から愛される大人に成長したのだ。環境って、大事だ。子供と接する大人たちの資質って、大事だ。
「生きづらい人」じゃなくて、「生きづらい社会」なのだということが良くわかる。
1981年刊行、ベストセラーとなってから40年以上経つのに、子供の資質を認めるトモエ学園のような初等教育は、未だ社会の主流とはならない。