「一枚の葉書」2011/09/02 22:41

 葉書に書かれたのは、たったの一文。
 今日はお祭りですが、あなたがいらっしゃらないので、何の風情もありません
 新藤兼人監督、99歳。映画人生もここまで長くなってくると、渾身の力を込めて訴える、というよりも、どこか突き抜けた感じになっちゃうのかなあ。
 戦争に夫を奪われ、家庭を失った女(大竹しのぶ)はヤケッパチな感じに。
 戦争に行っている間に家庭が壊れてしまった男(豊川悦治)は外国へ逃避しようとして。
 ひどい話なんですよ、特に大竹演じる友子さんは女の人生メチャメチャにされて、でも誰を恨むこともできない。「運が悪かった」そんな諦めが彼女の感情を、殺す。
 戦争に行くか、生き残るか。それがくじ引きによって分けられてしまったっていうのは監督ご自身の実体験なんだそうです。
 なんて馬鹿馬鹿しい。でも笑うにはその結果が重過ぎる。
 おそらくは、あの時代には割りとよくあったんじゃなかろうかと思われる、気の毒な人生。
 それを描きながら、しかし随所に現れる、妙に滑稽な演出が特徴的なのです。これを真面目に「不謹慎」と捉えるか「人生なんてそんなものよね」と納得するかで好き嫌いが分かれそうな映画です。
 登場人物たちはみんなちょっとずつ、弱くて打算的な部分があるのですが(戦死した夫は除く。彼は友子さんが惚れ込むのも納得の好人物でした)、でもそれも仕方ないよね、そういうのあるよね、と思えてきます。
 仕方ないよね、そんなものなんだよね、諦めるしかないね。
 で、その先は?
 死んでいた感情が蘇り、喜怒哀楽がぶつかり合う。
 再生の物語。

高校野球スペシャル 特別な夏、僕らは2011/09/03 16:02

 AAAはボロ勝で優勝しちゃったし、今年は番組は作ってもらえないのかな?
 今朝放送していたのは、熱闘甲子園の、拡大版みたいな番組。意外だったのは、圧倒的な強さで優勝した日大三については、最後にチラッと映像が流れただけでインタビューも何もなかったことです。
 次につながる敗者をクローズアップした番組制作なのでしょう。
 あれのせいもあるのかな。準優勝した光星学院の選手の飲酒問題。あの大差のついた決勝戦を取り上げようとすると、どうしても対戦相手の不祥事も連想されちゃうよねえ。

 番組を見ていて、いろいろ思い出しました。今年は延長が多かった、致命的なエラーがゲームを盛り上げた、満塁本塁打はやっぱり燃える、終盤にゲームが動いて劇的な結果が生まれて……
いまさらながら今夏のベストゲームを振り返ると。
 ダントツに、一番印象的だったのが、二回戦・八幡商の逆転満塁ホームラン。異様に盛り上がった九回表の攻撃で「今までで一番楽しい打席だった」と後藤君。「苦しいときには、きっとこのホームランを思い出す」
 もうひとり、番組でインタビューされていたのが帝京の松本主将。そう、あの試合、先制の本塁打も打った彼の、あの失策から、ドラマは生まれたのでした。前半は、完全に帝京ペースで、名門の実力を見せていたのにね。一回戦でも、優勢に試合を進めながら花巻東に三度追いつかれる、すっきりしない勝ち方してましたが。
 ぜんぜん勝てる気配のない試合から、まさかの逆転を果たした試合としては、智弁学園ですねえ。九回に8点も取るなんて、誰が予想するよ。名門横浜高校も、今年は二年生中心のチームでしたし、脆さが出ましたが、二試合続けて好投した柳投手は来年、楽しみです。
 満塁本塁打といえば、白樺学園-智弁和歌山。怪我で投げられないエースが、バットで同点に追いつき、強豪校に食らい付く。最後には、延長サヨナラエラーで終わってしまって、それまでの緊張感がとたんにガッカリになってしまったのが残念ですが。
 あと、強力打線によるビッグイニングが目立った大会でしたが、明徳義塾-北海の投手戦とか、最後には大差がつきましたが東洋大姫路-新湊も締まった好ゲームでした。
 チームでいえば、三試合連続で延長戦を勝ち抜いた如水館。初出場ながら常連校相手に善戦した健康福祉大高崎とか。
 ベスト選手は(あえて日大三の選手は除いて)、東洋大姫路の原投手かなあ、頼れる大エースって感じ。甲子園のマウンドでハンカチで汗拭く選手って斉藤以来じゃないかな。

 たくさん試合が見られたのも、今年までかと思っています。就職もしなきゃならないしね。最後の夏を終えた高校球児に負けないように、わたしも次に進まなきゃなあ

第一回全国大会2011/09/04 23:58

 阪急宝塚線に乗って。
 空手の応援&大会のお手伝いに行って参りました。
 昨年府立体育館でやった全国大会の時みたいに前準備や後片付けが大掛かりでなく、冷房はなかったけどこんな天候のおかげで残暑も感じず、思ったより重労働ではなかったのですが。
 しかし、渋滞に引っかかってしまった広島支部の皆さんの到着が遅れたり、逆に北海道支部さんは帰りの飛行機の時間が迫っていて。
 そんなわけで試合のスケジュールをチョコチョコ変えざるを得ない。
 さらに、今大会には組み手だけでなく演舞や型の審査も加わり、さらに学年別や階級別に細かく分けてやっていてやたら種類が多くなる。最後の表彰式の際には、用意したトロフィーやメダルがドレがドノ部門のものなんだかごっちゃになってしまって。
 いろいろ段取り悪くなったわけですが、何を隠そう、私が一番ダメでした。タイマーとポイント(と注意)表示の役目を仰せつかったのですが、2分計るべきところを1分でやってしまった!試合の種類によって、時間やらポイントやらのルールが微妙に違っていて、紛らわしいんですよ!
 今回は、おなじ難波教室の人が組手に出場するのでソレは応援しなければ、と思って休日に豊中まで馳せ参じたわけですが、残念ながら一回戦で負けちゃいました。相手は帯の色もひとつ上の人でしたし、ポイントは取られずに判定まで持ち込んだのですが。たかが2分でも、組手やってると、めっちゃ長く感じるもので、バテバテでだったからなあ。

大阪クラッシック2011、難波でチェロ2011/09/06 03:54

 昨日は空手の大会のほうに行ってきたので、初日は行けなかったのですが。
 ことしも、大阪クラシック、始まってます。
 
 それどこで売ってんねん!
と突っ込みたくなる花柄スーツ蝶ネクタイで登場された庄司さん。お祭りですからねえ。
 オープニングは毎年チェロ演奏でお馴染みの「白鳥」サン=サーンス。
 続いて、庄司さんいわく「隠れた名曲」というベートーベンのチェロ・ソナタ4番。最初のゆったりしたAndanteはあんまりベートーベンっぽくないかと思っていたら、Allegroに変わってから、突然ドラマチックになる。「運命」っぽい感じで、劇的に変化していく曲でした。たっぷり感情移入できる、庄司さんっぽいよ。15分に満たない短い曲、とおっしゃっていましたが、中身は濃い。
 時間が余ったので他に2曲。ひとつはバッハで、もひとつは良くわかんないや。

中之島でサックス2011/09/07 01:01

 派遣屋さんの面談の後、淀屋橋まで行って、テクテクと中之島ダイビルへ。ビルの中はザワザワしてるし子供もむずがるしエレベータのブザーも鳴るし。
 ロビーには座席は用意されず、床に直に座るのですが、尻が冷えそうだったので、三階まで上って上から聴いていました。
 本町のヴァイオリンも魅力的でしたが、サックスのほうが珍しいんで。
ミ・ベルモサクソフォンアンサンブル。ソプラノ、アルト、テナー、バリトン、サックスってこんな種類あるんや。
 一曲目は、チャイコフスキーのアンダンテカンタービレ。もともと弦楽で演奏される曲で、これはこれで、繊細な音色が良かったんですが。
 二曲目は、ちゃんとサックス用の曲で、さすがに格好いい。長生 淳、彗星。
 それから「川の流れのように」、沖縄民謡と続き、アンコールは童謡で。
 バラエティに富んだ選曲だ。
 そして、やっぱり生演奏はいいなあ。

大阪クラシック2011、今日はマイナー曲で2011/09/10 00:46

 中に入るのは初めてで、ふらふら観察してまわりました。国の重文指定、中央公会堂は西洋建築なのに丸天井や壁の絵は日本神話がベースでなんか笑えます。
 ヴィオラの吉田さんの解説によると、ニノ・ロータさんという方は映画音楽の分野で有名な方だそうで、なるほど、そんな感じの曲でした。九重奏曲という、九種類の楽器が互いに呼びかけあうような感じ。
 しかし、マイナーな曲なもので、楽譜をわざわざイタリアから取り寄せたという……演奏者の方々の目がマジでした。譜面を繰る手つきとか必死で。

 19:00から、本町の竹中工務店いちょうホールへ。大阪クラシックは年配のお客さんが多いのですが、平日でもこの時間ですからね、珍しく中高生が前列に座り込み。
 ヴァイオリンの三瀬さん、ヴィオラの吉田さん、チェロの石田さんという「美人トリオ」による、ボッケリーニの小弦楽三重奏曲からスタート。
 続いて選手交代して、ハイドンの三重奏曲第1番。本来はチェロと2本のフルートを想定した曲だそうですが、かの時代は楽器が変わってもOKなように曲作ってあるそうです。フルートの変わりにヴァイオリンと、大森さんのオーボエ。
 3曲目が、プレイエルの弦楽三重奏曲。「くさい曲、演歌っぽい」と解説される。なるほど、ちょっとコブシの利いた部分があります。
 アンコールが、映画曲でフィギュアスケートなんかでも使われていた「ガブリエルのオーボエ」
 オーボエって、恥ずかしながら、クラリネットと区別ついてなかったんですが、じっくり聞けば優しくて深みのある音色ですね。「練習よりもリード作っている時間のほうが長い」「人生の半分の時間リード作りしてる」なんていう大森さん。
 マイナーな小曲でも、美しいメロディーと、音色を堪能。

大阪クラシック2011、最終日2011/09/11 13:48

 一週間のお祭り、大阪クラシックも昨日が最終でした。
 で、覚書。

 まずは毎年恒例、弁護士会館でのモーツァルト弦楽五重奏第5番。座席は後ろのほうだったのでほとんど奏者は見えないんですが、対面形式での演奏。座って聴いている分には涼しすぎるくらいなんですが、奏者の皆さんは、毎年暑いそうです。
 続いて、13:30から市役所正面玄関ホールで、またもモーツァルト、ピアノ三重奏曲変ロ短調。
 ……モーツァルトさんは、どれもとっても美しい曲なんですが、心地よすぎて眠たくなっちゃうんですよねえ。BGMにはいいんですが。
 それから本町へ。立ち見になるのはまあ、予想通りでしたが。スタバ店内そんなに広いもんじゃないですし。入りきれなかったちびっ子たちが外のガラスウインドウに張り付く。
 サクソフォン演奏って、音符と音符を線でつないで曲にするって言うより、オタマジャクシの間をクレヨンで塗って行くようまイメージです。まずはアメイジンググレイス。
 それから、ヤンガーマンで「ドラゴン・マン」……アメコミのテーマ曲らしい。
 次が「リードフェイズ」、なんか不思議な曲、音階はあるけどメロディーは無く。テクノ系っていうんでしょうか。
 普通のクラシック曲もあって、フォーレの「シチリアーノ」。
 はじめからサクソフォン用に書かれた曲は、やっぱりとてもしっくりくるっていうか、格好良いです。デュポワ「6つのカプリス」
 さいごに、「見上げてごらん夜空の星を」

 再び大阪市役所に戻りましたが、16:00からの合唱は立ち見どころか人が多すぎて入るのも大変そうだったので。扉が開けっ放しだったので、そこから流れてくる歌声を聴くともなしに、な感じで文庫本を開く。
 18:30から、毎年楽しみにしている野津さんのフルート。早くから並んでいたので、最前列左手の席。毎年いっぱいしゃべってくれる野津さんのトーク、テーマは「世代の格差」みたいな。140年物のフルートで「古くても良いもの」をアピール。
 で、今年もバッハの無伴奏チェロを熱演してくれたんですが。でも、私は、どちらかというとその前に演奏なさっていた息子・エマニエル・バッハのほうが野津さんには合ってる様な気がします。感情こめやすくって。
 19:30からの最終公演があるから時間厳守で、といいながら、フルート吹きながら観客の中を練り歩くのもやってくれましたし、さらに、オカシなことに、そのまんまフルート吹きつつ最終公演会場まで歩いて行っちゃうサービスに、みんな大喜び。ほとんどの観客が最終公演も聴きにいきますから、そのまま野津さんの周りに群がってカメラ構えて一緒に公道を大移動。なんかもう、ハーメルンの笛吹き状態。「車道に出ないでください」と声を上げるスタッフさん。ほんと、知らない人が見たら「何!??」って思うでしょう。怪しい集団に不信感を覚えたろ迷惑と思われた一般の皆様には申し訳ないんですが。
年に一度の、お祭りなので。

 最終公演はリストの交響詩「レ・プレリュード」でスタート。そろそろと、何かが忍び寄ってくるような感じ。
 それから、大栗裕の「大阪俗謡による幻想曲」、これが大変格好良かった。はじめに天神祭り、長唄や三味線、生國魂さん、獅子舞などが表されていると解説されていたので、「なるほどなー、こういう風にアレンジされているのか」と感動。古くからの日本的な要素をオーケストラで表現する、変換の仕方が見事で。
 CD欲しいなーって、思いましたが、でもこういう曲は録音だとなんか地味な音楽にしか聴こえないかもなあ。
 それから、今年も大植監督から平松市長へのプレゼント進呈と称したコントが繰り広げられ(今年は大阪市内を走る鉄道模型、でしたが、京阪電車が京浜電車に間違えられていたり……)、最後の曲へ。
 レスピーギ、交響詩「ローマの松」。今年は、何かが近づいてくるような、始まりを予感させるような曲が選らばれていたように感じます。
はじめは、子供たちの遊ぶ姿や夜鳴き鳥の声など、かわいらしい調子だったのですが、やがて、ひたひたと、足音が近づいてきます。鳴り響く軍靴に、吹き鳴らされるラッパ。
 今年は立見席だったので舞台のほうはほとんど見えなかったのですが、演奏途中で舞台上から観客席の後方へ移動してきたトランペットとトロンボーンは良く見えました。
 アンコールで、童謡と、八木節。

今年も楽しみました。大阪フィルのみなさんは、ノーギャラのボランティア演奏なうえに、あるブログで不審者が楽屋に押しかけてきたようなことまであったそうで、本当に大変なことだった尾と思います。ありがとうございました。

「スティル・ライフ」2011/09/21 15:12

 染色工場でアルバイトをしている主人公は、同じ工場で働く佐々井という独特な人物と近づきになり、彼を手伝って株式売買をするようになる……
 少し前に、池澤夏樹がとうとう芥川賞の選考をやめるときいて、久々に文庫本を引っ張り出しました。
 池澤の芥川賞受賞作は、のっけから、自己の内的世界と、外的世界とが並立していることと、その両者のかかわり方について述べています。読みようによっては、平易にも難解にもなる感じです。
 自己と他とのかかわり、とは、要するに主人公と佐々井との関係だったり、フリーターとしての社会での立ち位置だったり、雪が自分の上に降ってくるのではなく自分が雪で満たされた宇宙に上っていくように知覚するようなことだったり……
 それは、世界をどう知覚するか、どう解釈するか、という意味でもあります。世界のシステムの解釈の仕方によって、新しいものが見えてくる。その辺は、理系出身の作家らしい感性だと思います。たとえば、生命を創世記による解釈から、進化論による解釈で新しくとらえなおすようなコトが、科学ってやつですよね。
 既成の枠を飛び越えた、新たな解釈。それも、自分にとってより居心地のいい解釈。
 佐々井は、実は逃亡犯だったのですが、刑事的には時効になり、民事的にも横領した金を利子つけて返却してしまい、「逃亡中の横領犯」という「解釈」からも脱してしまいます。
 世界のシステムを理解して、「それはそういうもの」と理性的に受け入れることと。
 しかしそれに束縛されずに、完全に自由であること。
 それが、佐々井にとっての「世界とのかかわり方」であり、主人公も(そして作者も)そういう生き方におおいに魅力を感じるわけですが。
 なかなか、そういうわけにはいきませんよ、普通は。
 同じ文庫に収録されている「ヤー・チャイカ」という中篇でも、主人公は世界をシステムとして捉えているのですが、ひとりのロシア人と知り合って、遠くロシアの地や、「スパイやりませんか」というお誘いに心惹かれます。
 だからといって、現実に、今まで自分が組み込まれてきたシステムから脱することなんて、できないんですよね。

「朱花の月」2011/09/30 15:21

 朱花(はねづ)とは、古代の色の名前なんですが。
 染色家のヒロインが布を染めているシーン、分かっていても、血の入った洗面器で洗濯をしているようにしか見えなくって、正直気色悪い。
 けっこう前に見た映画。河瀬直美作品は初めてなんですが、なんか、難解にもほどがあるっていうか。海外での評価が高いのですが、ホンマにこれ見て、内容理解できるんですか?!
 登場人物はほとんどしゃべらず、風景映像によってイロイロ表現しようとしていて、確かに映像は意味深で印象的なんですが、やっぱり分かりにくい。いっそ、言葉を全て廃してサイレント映画のように作ったほうがスッキリしたんじゃないでしょうか。
 ストーリーは、女一人に男が二人、な三角関係が中心なんですが。男二人、がどっちもおんなじような風貌で(性格的には、昔から付き合っているほうが懐が深く優しげで、もう一人のほうが無骨で寡黙な感じですが)、ヒロインの趣味、というか、監督さんの男の趣味なんだろうなって思います。
 何が分からないって、男二人がヒロインのどの辺がそんなに好きなのか、またヒロインは、ふたりの男の間で一体何をどうしたいのか。
 それがさっぱり伝わってこなかったなあ。