「聖の青春」2017/01/08 23:12

原作小説が大変熱いということで、期待していた一本だったのですが。
なんだか色々、ピンとこない。主人公の印象が凄く悪い。見た目はきったないお部屋で少女マンガ読んでるおデブさん。やることも言うことも結構ヒドイ。羽生さんに対する意識が強すぎてライバルっていうより熱烈なファン(しかもちょっとストーカー入ってる)みたい。そして何より解せないのが、子供のころから重い病だったっていうのに健康を保つ気遣いをする様子がまるでない。
脚本も演出も微妙。将棋シーンに大阪のスーパーやら駅ホームやらのシーンを挟み込むとかなんか古臭い。勝負の厳しさも羽生さんの凄さも伝わらない。
役者陣はみんないい味出しているのに。もったいない。
主人公が自分の短い人生をやれる限り我を張ってやりたいように突っ走ったってことは伝わりました。
体重の増加ばかりが話題にされた松山ケンイチは、毎年のように主役クラスで映画出演しているけど、「デス・ノート」以外に当たり作品が無い(大河ドラマも凄く面白かったのに視聴率は振わなかった)のがザンネンです。

「秘密」2017/01/22 15:59

作っている製品は全然違うのですが、今の私の勤め先も自動車部品作っているので、主人公の勤め先の空気がなんとなく分かります。他の小説にはあんまり出てこない単語とか。製造業、工業男子たちの世界。理系作家・東野圭吾だ。
しかしながら職場シーンはちょびっとで、ほとんどが、秘密の夫婦の物語。「君の名は。」みたいな人格入れ替わりモノだと思っていたのですが、事故死したお母ちゃんの魂が小学生の娘さんに入ってしまう、一方的な憑依状態。
はたから見たら父娘、実質は夫婦!?な奇妙な生活が始まるのですが。
つまらないわけじゃないけど、なんか読んでいてモヤモヤしてしまいます。人格憑依という状況も特殊ですが、専業主婦から若い娘に変身!な直子さんの、デキスギっぷりもまた特殊に思えて。
勘が良くて強い意志を持ち、頑張り屋さん。人生が激変した状況で、勉強を頑張り受験戦争に打ち勝ち、学生として優秀、主婦として家事もこなす。言うことも至極まっとうで、最善の結果を手に入れる。……つけいる隙がない感じが、読んでて引いちゃうんです。
こういうしっかりした人間が、稀にいるのは分かるんですが。
全部夫からの目線で語られているので、彼の目に映らない彼女自身の苦悩や苦労がしっかり描かれれば、また印象が違っているかもしれません。

「こころに剣士を」2017/01/24 09:58

The Fencer
強いて気になったところを上げるなら、「ラブシーンはもう少し削っても良かったなあ」。
中学生の見ている前で長々いちゃつく体育教師ってどうなのっていう、日本人的発想。
しかし、めっちゃこころに残る映画です。
ストーリーはシンプル。いわゆる「部活系」で、熱心な指導者、熱心な生徒たち、そして晴れの舞台で大活躍、というパターン。閉塞感漂う寂れた田舎町が舞台って意味では、「フラガール」に近い印象です。
ただ、閉塞感のレベルが違います。スターリン時代のソ連に支配されるエストニア。結構な人数の子供たちがあんまり笑わない厳しい先生の指導でフェンシングにハマるのは、単に田舎で娯楽が少ないってだけではありませんでした。
当局の顔色をうかがう大人たち、家族を強制連行される子供たち。そんな中で、「お前は、剣士だ」の一言が、少年を勇気づけるのです。
主人公の体育教師も元ナチス関係者(エストニアというのは、ナチス支配下にあったりソ連支配下にあったり、小国の悲劇の典型)で当局から隠れるために田舎にやってきて、ずっと暗い影をしょっていましたが、子供たちを指導するうちに、熱を帯びてくる。画面上には寂れた印象だったパーシバルという町の、美しい自然の姿も映されます。
最初に主人公を動かした少女・マルタが素晴らしかったです。とても可愛い娘さんですが、キャピキャピしたかわいらしさじゃなくて、強い意志・誇り・闘志を秘めた真っ直ぐな瞳。小柄な彼女が剣を手に、都会の学校の生徒に立ち向かう。