「かたづの!」2017/09/03 16:59

戦国末~江戸時代初期のおんな城主、寧々様の物語。セリフの中にちょこっとだけ、直虎様のお名前も出てきます。
ですが、歴史ものというより歴史ファンタジー。語り手は一本角(片角)のカモシカだし、大蛇とか絵から出てくるペリカンとか河童とか座敷童とか、妖怪世界はさすが遠野っていうか。
しかし、とぼけたカモシカの語りによるほのぼのストーリーとは言い切れない。
けっこう、ハードな目に遭います、寧々さま。夫と嫡男を謀殺され、女の身で八戸南部家の当首になり、次から次へと難題が突きつけられます。
寧々様の基本方針は、とにかく血が流れないように死人が出ないように、戦に一番大切なことは、やらないこと!……であるので、理不尽な状況でもぐっと我慢です。
辛抱強く我慢することで、多くを守り、しかし代償として大切なものを失っていく人生、とも言えます。短気を起こさず耐えることに、鬱屈を抱える人も出てきます。孤独な戦いの中でキセルをふかすことが多くなってくる寧々様。途中で読むのがつらくなってきます。
賢く理性的な寧々様を傷つけていくのは、人の支配欲であり、狡さであり、同情心であり、自尊心であり、連帯感であり、理不尽に対する嘆きと憤りだったのでした。
戦を避けることはできても、苦しみを避けて通れない人生。
それでも、知恵を絞れば、強い思いがあれば、必ず道はある。

第十二回大阪クラシック、優雅な休日2017/09/13 00:13

 京阪で約一時間かけて終点・淀屋橋まで。引っ越してから遠くなった。でもやっぱり生演奏は癒されます。今年は前売り最終公演しか買わなかったけど、オープニングも買っときゃ良かったかなあ。
第2公演 12:30~  大阪市役所
ベートーヴェン/ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第8番ト長調
ラヴェル/ツィガーヌ
赤のドレスと薄紫のドレス。華やかにスタートした初日。学生時代からのお友達なのだそうで、明るく楽しい演奏でした。アンコールはショスタコの小品。

第3公演 14:00~  日本生命本店東館1Fホール
モーツァルト/クラリネット五重奏曲イ長調
残念ながら、座席は確保できなかったのですが。
演奏後に、日本センチュリーでは月末にクラリネットコンチェルトもやるよ、と宣伝。豊中はこれまたちょっと遠いしモーツァルトは眠くなる可能性高いけど、延原さん指揮だし行ってみようかしら……と思わせる、端正で心地よい演奏でした。

第10公演 17:30~  ANAクラウンプラザホテル
ここは初めて行く会場でしたが、音が良く響くし、なんか優雅。演奏もその場にふさわしく。
メンデルスゾーン/ピアノ三重奏曲第1番
他の公演と迷ったけど、まずハズレないだろうと思ってこちらにしたのですが、「おダンディ」織田さんは、大阪クラシックで演奏されるのは今年がラストなのだとか。だったらもっとチェロメインの曲で来てもよさそうなのに、さり気ない通奏低音でいくのだなあ。

第12公演 19:00~  大阪市役所
せっかくだから今日はもう一つピアノとクラリネットを聴いて行こうかと、中之島から市役所まで戻ってきたのですが。
メシアン/世の終わりのための四重奏曲
……タイトル通りの暗い曲だ!聖書を題材に、というのもあれですが、第二次世界大戦中、捕虜収容所で制作・初演されたっていうのが説得力あります。しかし、これ聞いた他の捕虜のみなさんは、どういう気持ちになったんだろうか。
現代曲はやっぱり小難しいです。

第十二回大阪クラシック、別世界へ2017/09/14 01:02

帰りに、特別企画のShion屋外演奏に足を止める。大阪クラシックの副題である「街にあふれる音楽」に最も的確な形。
高くそびえるオフィスビルに、川面を走る夜風、響き渡る金管五重奏の「ドラゴンクエスト」……いい意味で脱・現実感があります。

第39公演 14:30~  新ダイビル
半休取って駆け付けたのは、まだ新しいビルディング。ガラス張りの向こうは緑の木立、重厚な柱、流れる水と反射する光。あと青い空があれば完璧な、美しい舞台に。
フルート四重奏曲イ長調
と、ニ長調。
モーツァルトの四重奏は過去の大阪クラシックでも何度か聞いたことがあり、大いに期待して行きました。鉄板ってやつです。平日の昼間、座席無しの立ち見公演なのに、お客さんいっぱいさ。
野津さんのフルートを堪能。アンコールは「花は咲く」。

第44公演 17:30~  中之島ダイビル
シューマン/チェロ協奏曲イ短調  
チェロ四重奏に編曲されたもので、花崎さんがソロ・パート、他の三名がオケ・パートを演奏する形。熱演だったのですが、ちょうど仕事上がりの勤め人が退社していく時間帯でちょっとざわざわしちゃったのがもったいない。
アンコールは、織田さん希望のアイルランド民謡「ロンドンデリーの歌」。

第46公演 18:30~  大同生命大阪本社ビル
横を通り過ぎることは何度もあるけど中に入ったのは初めてな、特徴的な建物。某朝ドラヒロインのモデルになった創業者を大いに押していました。
ハープとピアノの、母娘共演。
デュセック/ハープとピアノのための二重奏曲 ……明るく親しみやすい入りで。
一柳慧/夏の花 ……現代曲、難解。
C.サルツェード/ソナタ ……ハープのいろんな奏法・音色を。
見た目がゴージャスなせいもあるかもしれませんが、ハープの音色ってどこか神秘的な感じがします。特に今日の三曲目は、なんだか異世界へ誘われるかのような不思議な感じでした。

第十二回大阪クラシック、雨の中2017/09/17 14:14

おニューの傘を差して中之島界隈を歩き回ることになった最終日。最終日のプログラム時間の限りめいっぱい回って7公演。終盤ちょっと、いやかなり疲れました。欲張らずに途中で休憩入れなきゃダメだなあ。
雨風で移動は大変でしたが、その分お客さん、ベビーカーの数は控えめ(こども向け公演もあったはずなんだけど…)だったと思います。

第70公演 11:30~ フェスティバルホールエントランスホワイエ
●ロッシーニ/チェロとコントラバスのための二重奏曲 ニ長調   他
音が似ているという。近藤さんのチェロと新さんのコンバス、同じ製作者の手によって今年制作されたのでした。そんなん偶然ちゃうでしょう、二人で相談して購入したのではないの?
そんな仲良しぶりを語ってくれたのに、なんと新さんは大フィル退団、大阪クラシックも今年が最後だなんて。大好きな楽しいデュオなのに……

第72公演 13:00~ なにわ橋駅アートエリアB1
シュトラウスとどちらにしようか迷ったけど、結果的にこちらにして良かった。やはり人数が割れたようで、楽に座れました。演奏は関西フィルで、
●シューベルト/弦楽三重奏曲 変ロ長調
演奏前に大植さんがシューベルトについて、早世したとか生粋のウィーンッ子だったとかベートーヴェンの葬列に感激していたとかいろいろ語っていたのですが、
●ドホナーニ/弦楽三重奏のためのセレナード ハ長調
メインはこの、ハンガリーの作曲家。全然知らない曲でしたが、素敵な曲。
アンコールに楽しいマーチが演奏され、楽しくも魅力的な演奏会でした。

第74公演 14:00~  京阪神御堂筋ビル
クラシックだけどタンゴ聴きに行くぞ!
こちらも弦楽三重奏ですが、チェロではなくコンバスで。最初に
●モーツァルト/ロンド 変ロ長調 K.269
●ハイドン/変奏曲 Hov.V
可愛らしい曲が二つあってから、
●ピアソラ/グラン・タンゴ
…少女から熟女へって感じ。艶と色気のある演奏。
自動ドアが開くたびに雨音がするのと、マイクがあっていないのかお話がよく聞こえないのが残念。

第77公演 15:30~ フェスティバルホールエントランスホワイエ
大急ぎでフェスティバルホールへ戻る。カーペットに直座りで。
●ウェーバー/ファゴット協奏曲 ヘ長調
久住さんのファゴットは昨年素晴らしかったので、今年も是非聞きたかった。あったかい音色です。

第78公演 16:30~  中之島ダイビル
この日二回目のチェロ・コントラバスのデュオ。低音パート好きです。大響からですが、こちらは本来この楽器用ではない曲で。
●モンティ/チャルダッシュ
ヴァイオリンの名曲をこの低音組で演奏したり。
●シュトラウス/ピチカート・ポルカ
トライアングル代わりに足でベルを鳴らすとか大谷さん器用です。
●ベートーヴェン/5番 ハ長調 「運命」
名曲はどんな編成でも短くまとめても格好良いというか。
●バリエール/二本のチェロのためのソナタ ト長調
この日二度目のバリエールさん。格好良いアレグロ。
●ルロイ・アンダーソン/ワルツィング・キャット
確かに、弦が猫の鳴き声に聞こえるアンコール曲。コンバスの大槻さんがわんと吠える。
二階通路からの立ち見鑑賞でしたが、30分まったく飽きない。
これで今年は大フィル・センチュリー・関フィル・大響・Shionと全部耳にした。こう言っちゃあれですが、中心になる大フィルよりもほか楽団の公演の方が観客に向けて趣向を凝らしプロフェッショナルなパフォーマンスを見せてくれるように思えます。

第80公演 18:00~  大阪市役所
毎度おなじみ、バッハ親子をフルート・ソロ。ギリギリ座席を確保。
●C.P.E.バッハ/ソナタ イ短調
●J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲 1番
前にも思いましたが、この超有チェロ曲、フルートでやると息継ぎが大変そうで。野津さん熱演なんですけど。
そしてアンコールで「アルルの女」

第80公演 19:15~ フェスティバルホール
半年ぶりに聴くオーケストラ演奏です。引っ越してから多忙→引きこもりの半年間だったからなあ。
●チャイコフスキー/交響曲5番 ホ長調
想像はしていたけど、重い曲!低音部大活躍。
実は私、この重苦しい曲の中でいったいどこでハープが入るのかとステージを見ていたのですが、結局この大きく美しい楽器は、アンコールの童謡と八木節のためだけに用意されていた!

そんなこんなで、今年も一週間の祭りが終わりました。ありがとうございました。大植さんも度々おっしゃっていましたが、ボランティアスタッフのみなさんもお疲れさまでした。

「崖の上のポニョ」2017/09/24 01:56

2008年、明るくカワイイ主題歌が話題を呼んだ、ジブリ版人魚姫。金曜ロードショーで久々に鑑賞です。
ポニョは可愛いのだけど、それはクラリスとかシータみたいな「清楚系」ではありません。
もっとリアルな女の子。
清らかな海からゴミだらけの海へ飛び出していったお転婆。添加物たっぷりのハムが好き。宗介君のお母さんも、同じ印象なんですね。危ないって制止されるのを振り切って車を発進させ、結構乱暴な運転でかっ飛ばして行きます。
ちっとも品行方正ではない。気に入らない相手に水をかけるポニョと、帰ってこない亭主に向かって「BAKABAKABAKA……」とモールス打ちまくるお母さんと、イメージが重なります。
力強く、時に荒ぶる「海」や「自然」のイメージでもあります。
宮崎アニメは、やっぱり女性の力強さが魅力なのです。
ラストで魔法を失ったポニョですが、人間の女の子としてもこれまで通り、自らの欲望と喜怒哀楽に忠実に突き進んでいくに違いありません。宗介くん、フォローがんばってね。

「東慶寺花だより」2017/09/30 00:37

一昨年観た映画の原作、ていうか原案小説。
井上ひさしの作品を読むのは初めてです。縁切り寺の御用宿に身を置く新人戯作者が、亭主と別れたい女たちの事情を、判じ物形式で解き明かしていきます。
でも、どっちかと言うと作中に触れられる鎌倉という土地説明(鎌倉観光を思い出す)や、江戸時代の庶民の風物(お寿司の流行はじめとか、おろし金を使い始める日!?とか)や、巻末の井上ひさしによる東慶寺と江戸時代の離婚の仕組み説明の方が興味深かったりしました。
映画の方はこの連作小説集からアイデアだけ借りてもっと色々詰め込んだ感じだったのですが、東慶寺院代の法秀尼様の貫録はそのまんまなイメージです。格好良い。
おんな、強し。