「百年泥」2018/09/30 16:43

百年に一度の大洪水に見舞われて、でも全然クヨクヨしていなくてカラリとしている。そもそも、南インドで素人日本語教師をやる羽目になったのも、男に騙されて借金まみれになったからなのに、シニカルなユーモアを交えて語る。
著者略歴見れば、石井遊佳さん大阪府枚方市生まれ。……関西人かあ、mental of OOSKA-OBACHANだと思えばなんか納得。ヒロインは日本語教室で「日本ではマクドナルドのことを<マクド>と言います」と偏った知識を教えちゃう。
同時に芥川賞を受賞した「おらおらでひとりいぐも」と、形は似ている。ヒロインの現在の状況(どちらも一人暮らしで、己について他者に多くを語らないタイプ)を述べつつ、その中から、埋もれていた過去の事実が浮かび上がってくる。「おらおらで」ではそれが東北弁の内省から。「百年泥」では百年ぶりに川底から上がってきた泥の中から。
現在と過去、我と他、リアルと奇想が入り混じる。しかし「大阪人マインドだから、しかもインドだから」という謎の説得力によってナチュラルに受け入られる。
副主人公(と、言っていいと思う)のインド人生徒のエピソードがなんだかキレイすぎるのですが。でも、彼のツンデレっぷりというか授業にかこつけた遠回しな自己アピールは、可愛いと言えなくもない。

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