「カウボーイビバップ 天国の扉」2019/01/02 17:12

20周年!で、昨年放送されていたハードボイルド系?SFアニメシリーズ。
当時評判になっていたのでどんなものかと思って視聴していたのだけど、全体的な感想としては「そこまでいうほど面白いかなあ?」
音楽とかオシャレだけどお話そのものはどこか、中途半端にカッコウつけている感じで、どちらかというとエドとワンコの可愛らしさを愛でていました。
しかし、大晦日深夜に放送された映画版は、文句なしに面白かった。軍と、違法な新兵器、警察、テロリスト、テロリストと関係ある美女、夢と現を繋ぐ蝶のイメージ。そこに絡んでくる賞金稼ぎ達。私の好みだ。
記憶を失い、夢の中にいるように虚しくなっていた男が世界を壊そうとする。
折しも、新年早々暴走テロやらかした若い者がおりましたが。
夢っていうのは、オノレ一人しかいない世界だ。
現実っていうのは、自分以外がいる。自分と関係ある人も無い人も、それぞれに生きている。それに思い至ることができない人は、夢の中の人。
この映画は出来事と各人物背景との関係性がキチンと練られていて、ただのオシャレ感以上のストーリーの面白さがありました。

「ひまわり」2019/01/04 16:00

地平まで広がるひまわり畑に、哀愁のメロディ。この映画知らない人でも、この曲は聴いたことあるはず。
I Girasoli  1970年。50年近く前の名画だけどデジタル技術のおかげか、クリアな映像。
戦争に行ったきり戻らぬ夫を探しに、ソフィア・ローレン演じるヒロインがロシアの地へ。
という人探し映画と思ったら、半分くらいは過去回想で、短くも幸せな新婚の日々に、雪に覆われた戦場の行軍。緑の大地にたくさんの、たくさんの、墓標。
恋愛映画でもあり、戦争ものでもある。戦争で運命を引き裂かれた男女は多くあったのでしょう。でも「ロシア中を歩いてでも!」とヒロインが異国へ乗り込んでいくのは、少数派かな?。
パッと思い出したのが名作漫画「はいからさんが通る」で、これも紅緒さんが満州まで恋人探しに行く。作者絶対「ひまわり」見て、ジョヴァンナとアントニオの運命のすれ違いに心を痛めたことあるよ。
映画の方は、漫画のようにはいかない。戦場がロシア、というか、当時のソ連っていうのもよろしくなかった。ジョヴァンナがようやく見つけ出したのは、ロシア娘と一緒になって子供までいる、アントニオの今の生活だった。
その後、アントニオはイタリアまで会いに来るが、すでに何もかも、遅すぎた。
観終わってからもう一度、オープニングのひまわりの映像と音楽を味わう。

「私を離さないで」2019/01/05 11:48

皇后陛下ご愛読の報道でいきなり英国のユーモア・ミステリ小説重版!というのにびっくりした昨年。たいしたインフルエンサーっていうか、ロイヤリティの力凄いや。

一昨年の「いきなり重版決定!」といえば、日系英国人ノーベル文学賞受賞効果によるものでした。ビッグタイトルの影響力。
一度読んでみたいと思いながらも未読なカズオ・イシグロ。まずは2010年の映画版から。Never Let Me Go
「いつか馬を5頭飼うの」少女の夢は叶わない。なぜならその学校の生徒たちは皆、大人になったら誰かに臓器を提供して「終了」だから。
ストーリー設定がSF的なのに、時代設定は近未来ではなく90年代半ばで、むしろレトロ感のある舞台なのがまず印象的で。
外界から物理的にも情報的にも隔離され、校長先生の言葉と不確かな噂話に包まれ、体の健康維持に努める。そんな生活の中でも、イジメがあり、友情があり、三角関係も生まれ……。臓器提供者たちの隔離が医療施設ではなく学校で行われるのは、それがせめてもの、彼らに対する「人権尊重」だからだった。
提供者たちは哀しい運命に牙を剥かず、ほのかな希望にすがり、そして「終了」。
最後の美しい映像と音楽とヒロインの独白が、しん、と胸に刺さる。

「アンナチュラル」2019/01/09 22:34

このドラマの主題歌として聴くと、ちゃんとハマっている「Lemon」
annatural death
お正月の一挙放送に大ハマり。ただの科捜研の女の二番煎じじゃなかったよ。
TVドラマの三大ジャンル、サスペンスもの、医療モノ、恋愛系(ほんのり)をおさえて、それにヒネリのあるストーリー、個性的でありながら地に足付いた魅力的キャラクターに、軽妙な会話が散りばめられて。脚本素晴らしいなあ。
真面目な話、ちゃんとした死因究明の重要性は海堂尊の「バチスタ・シリーズ」でも繰り返し述べられていたけど、それを言う白鳥が漫画チックなキャラなもんだからイイこと言ってるのになんか付け足しみたいな伝わり方になりかねない。
不可解な死。シリアスな問題をシリアスにぶつけてきたって、説得力さえあれば、視聴者は真面目に受け取るものだよねえ。

「来る」2019/01/14 23:22

泥泥ホラー。スプラッタ、よりも虫が苦手な人は見ちゃイケナイヤツだ。
怖いよりむしろ、格好良い。強大な異界の存在に対し、霊能者集団が行う大規模儀式の、なんていうか、ロックバンドのライブステージかい!って感じが、感動していいのか笑っていいのか(ホラーなのに)。
エンターテイメント性強い作品ですが、
「弱いから」
人の弱くて脆いトコロに付けこんでくる。というのは魔性のモノのお約束ではありますが、怪異を描きつつ、登場人物たちのなんかイヤな面を露わにしていく。人の怖さ。
メインの5人はみんなそれぞれ印象的で役者陣の演技力も見ごたえありました。何と言ってもお気に入りが、松たか子演じる最強霊能者。美しく賢くクールな戦う女。中島哲也監督は「告白」でも彼女の迫力を描いたからなあ。
原作は15年のホラー小説大賞受賞作。霊能者姉妹のお話はシリーズものになっているそうなので、メッチャ読みたい。できれば映画の続編も作ってほしい。

「高安犬物語」2019/01/26 16:09

金の星社の日本の文学28。戸川幸夫の動物小説5編が収録される。どの作品も生き物に対する敬愛に満ちているが、その中ではやっぱり明らかに、デビュー作にして直木賞受賞の表題作が、圧倒的に面白い。
解説によると、作者の若い頃の体験が割とそのまんま描かれているらしい。滅び行く種族、高安犬。この中型日本犬にハマった犬好きたちが、何とかしてその血を残そうとするのだけれど、現実は、厳しかった。
雪国の自然と、動物と、人。その厳しくも密接した関わりを思うと、「アキタイヌ、カワイイー」がひどく軽く響く。洋犬のようなスマートさに欠けるのを逆手にとって丸っこいフォルムを愛されキャラのパーツにしてしまったけど、本来それは、ストイックな力強さを表わしていたのだ。犬って、美しく格好良い生き物なんだ!
ユルクない、可愛らしさもない、悲しい結末の動物小説。しかし、気高い精神に対する敬意と、哀愁と言う名の愛情に満ちている。

伏見稲荷2019/01/28 00:08

午後にはピカピカに晴れたので、伏見稲荷に行く。
完全に、遅かった。赤い鳥居に白い雪、の取り合わせを狙って時期を見ていたのに。思ったより気温が上がりすっかり溶けてしまった。朝一、電車に乗り込むべきだった!
雪に洗われたお山の空気と眺望と、鳥居越しの青空が美しかったことで、良しとするしかない。
何年か前に参拝した時も思ったけど、お山の中にズラリ並んだ鳥居の中を登っていくのはなかなか異界ちっくだ。熊鷹社の奉納蝋燭の炎は生物の脈動のごとく蠢き続ける。末廣大神のお狐さんは迫力あって、人の顏よりちょっと高いくらいの位置から睨みを利かせてくる。
キツネは見かけなかったけど、久しぶりに猫をなでる。猫の写真一枚百円、餌代や手術代だという。
次に伏見稲荷に行くとしたら、夕焼けとか夜間拝観。あるいは本格的に山歩き目的で東福寺の辺りまで行ってみるか。
帰りにご朱印貰おうと思っていたら、既に受付終了。ハマらない日曜日だ。

「PSYCHO-PASS SS 1、罪と罰」2019/01/31 01:04

長く使ってきてそれなりに愛着もあるけど、袖口などの傷みが気になってきた衣服を処分する。厚みのある冬服が抜けて、クローゼットにゆとりが生まれる。
モノを簡単にゴミにしてしまうのは、もったいないような、残念な気がしてしまう性分だ(古い下着なんか小さく切って汚れ物拭いたりするタイプ)。愛着があればなおさら。
手放す気持ちを多少軽くするため、リサイクルボックスに投入。お店の前のその箱から先、どんな道を行くのか。ゴミよりは有為なサイクルに入ってくれることを祈る。

TVアニメからハマったこのシリーズを今後も楽しむコツは、むやみに残酷なばかりでコジツケ臭いお話になってしまったTV第2期を、無かったものとするコトだろう。
あなたが情報漏えいしなかったら何の罪もないお年寄りが酷い目に合わないで済んだかもしれないのにね。……ということをこれっぽっちも触れてこない。サブタイトルが「罪と罰」なのに。
ストーリーの都合上ひどくネガティブな役回りになったキャラクターを、視聴者の印象的な意味で救済するためのお話なのだろうけど、簡単に正義の味方役にしちゃったなあ。彼女はけっこう闇があるのに、私が脚本書くならほんのり漂わせるくらいはするのに。
色々ツッコミどころはあるけど、面白くないわけじゃないのだ。
もともと私好みの世界観で、劇場アニメにしては約1時間で短いけど要素は詰まっている。刑事たちが連携して事件を追う中で、洗脳と集団心理、優越感と差別意識、都合の悪いことは暗闇の中で処理する未来社会(あれ、今と変わんない!?)を描き出す。
アクションシーンは、二足歩行ロボット相手にケンカしちゃうのはあまりにも生身頑丈すぎると思ったけど……
こんな感じの、本編主人公とは別のキャラに焦点を当てたサイドストーリーを、もうあと2篇劇場公開するそうなので、それも多分観に行くと思う。脚本が深見さんに戻るし。
期待半分。もう半分には、どこか、リサイクルボックスから先の古着の行方を思うのに通じるものがあるような気がする。