「花束みたいな恋をした」2021/03/22 10:45

映画の後、飲みに行くでもお茶をするでもなく珍しくラーメン屋へ行ったのは、ヒロイン(有村架純、カワイイ)がラーメンブログをしているのがひっかかったからでしょうか。
引っかかったっていうのは、始めの人物紹介モノローグ以降、影も形も無くなってしまった設定だったから。
恋愛映画を観に行くことはあんまりないのですが、これはネームバリュー(監督、脚本家、主演俳優)と話題性に釣られた感じで。土井裕泰監督は昨年も「罪の声」で人気脚本家と組んでいた。
映画の序盤は微妙な違和感があって、自分も二十世紀の終わりごろに大学生をしていたはずなのに、十数年後の大学生たちの様子にあまり共感が持てない。個人の差なのか、時代の違いなのか、東京と地方の違いなのか。
リアリズムを追求した映画ではないのは間違いないでしょう。実在する固有名詞もたくさん出てくるのですが、時代性を含めた若者たちの状況を、象徴的パーツを積み重ねて作り上げる。その世界は、きわめて記号的です。リアリティがないのにある種の真実が浮かび上がってくるのは、記号を理論的に並べた数式をイメージしました。若い男女の出会いと別れとその後までが、カッチリと組み上げられています。
趣味の合うカルチャー系大学生が同棲を始めるも、生活のために就職してから感性にズレが生じてくる。ピタリと合っていた過去が美しかったからこそ喪失感は大きく、それを抱えたまま共にはいられなくなってしまうお話。