「天使にラブソングを…」2022/12/11 23:13

ウーピー・ゴールドバーグ、「ゴースト ニューヨークの幻」で主演の二人よりずっと印象的だった霊媒師(助演女優賞総なめってやつ)が、主演としても存在感を見せつけた。
録画していた金曜ロウドショウ、土日に二本視聴したのですが、続編の方は、第一弾と比較すると、なんか弱い。お話自体は感動的で悪くないのですが、高校生が歌って踊る画はわりと普通で、修道女(かなりお年を召した方も含む)たちがノリノリでパフォーマンスするインパクトには敵いません。映画冒頭のステージで歌うシーンよりも、尼さんたちとの聖歌のほうがずっと面白いという。メロディーは同じでも、歌詞を「GUY」から「GOD」に変えて、演出もそれぞれの個性を生かして、すごく、楽しそう。
教会に閉じこもって祈るばかりではなく、悪者に捕まった仲間を助けるために危険を顧みず行動するまでになる。尼さんたちの絆を示すと共に、コメディとしての笑いどころでもあり、うまい脚本です。
続編を続けて観たおかげで、第一弾の良さがよりくっきり見えた感じ。
勇気を出して、前へ進む。変革への第一歩を導く、パワフルな映画。

「トップガン マーヴェリック」2022/09/03 23:40

前作の内容はほとんど記憶に残っていない。そのあたりを踏まえた方が面白く見られるかもしれませんが、知らずともちゃんと楽しい映画。
とにかく格好よい。もういい年齢になってきているのにかっ飛ばしちゃうトム・クルーズが格好良い。それに負けず劣らず格好良い、戦闘機の存在感。粗野でタフで陽気で強気な若い米国軍人の世界。
無人戦闘機の性能と要望が上がっていくご時世、生身の戦闘機乗りは時代遅れになっていく。作中のミッションも、どこか辻褄が合わないような気がしないでもない(目標を守るミサイル装置を先に大軍で蹴散らしてしまうことはできなかったのだろうか?)。
でもいいんです、細かいことは。あの爽快感と緊張感、わくわくする感じ。CGはほとんど使っていないのではないでしょうか、古き良きハリウッド映画感。
生身と生身がぶつかり合う、熱い映像美を堪能できます。

「ドライブ・マイ・カー」2021/09/23 22:38

原作は、来月立派な文学館がオープンするという村上春樹。しかし脚本には表題作以外の短編のエピソードや、劇中劇のチェーホフのテキスト引用もたっぷり、いろんな要素を盛り込んで、カンヌ映画祭脚本賞。
濱口竜介監督は、昨年の「スパイの妻」の脚本も良かった。色々詰め込んで、それでいて消化不良にならずにキチンとした物語になっている。今回も、象徴的な言葉をふんだんに散りばめ、核心を突くところはそのまんまセリフで説明されていて、イマジネーションを膨らませたうえで、ちゃんと分かり易い。今風っていうか、今後もこういうスタイル流行ると思う。
 西島秀俊演じる主人公は演出家、それも多言語演劇。そういう演劇手法があるっていうのは聞いたことはあったけど、日本語や英語やハングルがチャンポンで、不思議な面白さがある。役者が台詞に感情を込めるのではなく、台詞が役者の感情を引き出す。って解釈でいいのだろうか?
言語としての言葉と、物語としての言葉、その相互作用で人々が結びつく。

「TERMINATOR DARK FATE」2019/12/21 00:00

邦題の「ニュー・フェイト」よりも原題の方がしっくりくる。「2」で運命を変えたはずなのに、彼女は結局この年齢まで孤独に戦い続けていた。
最新作にリンダ・ハミルトンが帰ってきた。サラ・コナーが還暦越えてくるとか正直抵抗もあったけど、でもやっぱり、彼女とキャメロンの復活に期待して劇場まで。……T800は、まあ、どっちでもいいかな。この人を除いて女戦士三人組にしたほうがすっきりしたような気もする。
とにかく、守護者たちの中では彼女が一番非力なはずなのに、それでもサラ・コナーの頼もしさがハンパないのでした。
時代が移り変わってアクションシーンもパワーアップしてとってもド派手。でも、なぜだろう、「2」のほうが手に汗握ったような気がする。接近戦(肉弾戦)、銃撃戦、カーチェイス、くらいのシンプルさが、アクロバティックに凝ったアクションより現実味を感じるのかもしれない。
未来の人類のリーダーが米国白人男性ではなくメキシコ人女性っていうのは、意図的なのでしょう。彼女たちを中心にして次回作も出るのだろうか。
人類の暗黒の運命。それを避ける術は?
ターミネーターは「2」でジョン少年と疑似親子的関係を築き、本作でも疑似ファミリーを作っていた。この辺が鍵じゃないかな。新たな人類のリーダーの役割は、ロボットの懐柔。
AIが本当に賢いなら、血みどろ人類殲滅作戦を仕掛けるより、適当に折り合いをつけて上手く付き合ってコントロールしていこうとするのではないでしょうか。

「たまこラブストーリー」2019/11/03 16:49

本日・文化の日、京都市内でお別れ会イベントをやっているそうだ。
先月「ジョーカー」を鑑賞して連想したコトのひとつが、京アニ放火殺人だった。犯人さんは円盤買って聖地巡礼して、京都アニメーションの愛好家だったハズなのに、何故こんな無理心中的な行動に出たのか。
別の道を選ぶ、そのためには……

かわいい、の一言だ。一枚画で見るよりも、動きとセリフがつくほうが、断然かわいい。
文博で開催の、京都ヒストリカ国際映画祭の京アニ企画。涼宮ハルヒと迷ったけど、時間の都合的にこちら。
TVシリーズの「たまこマーケット」はデラちゃんかわいいーって観ていた。
「ラブストーリー」の方では、タイトル通り恋心の恥ずかしい可愛らしさ中心だ。なんか、ニヤニヤしながら観てしまう。
登場人物全員訛りが無いので分かりにくいけど、舞台は完全に京都だった。鴨川とか駅とか見覚えあるぞ。
ヒロインは中学生くらいだと思っていたのに、高3だった。完全に優しい世界に包まれてイノセンスに生きてるもんだから幼く見えちゃうし、幼い分だけ受け止め方が不器用なたまこちゃん。
ちゃんと受け止めて投げ返せるようになるまで。相談に乗ってくれたり見守ってくれたり、やっぱりみんな、優しい。
世界の優しさを、受け止めろ。

「天気の子」2019/09/01 23:38

新海誠監督の新作アニメ映画。メガヒットの前作に比べれば、ボーイミーツガールの要素は丁寧で(「君の名は。」ですっ飛ばした過程を今回はちゃんと描いたなー)、それなのになぜかご都合主義観も強く感じたのでした。
たとえファンタジー要素であっても、それ以外でも、「ナンでドウシテこうなるの?」の部分が曖昧だともやもやするのです。
雨ばかりの東京、というのは今年の夏後半を象徴しているみたいである意味リアル。世界的に問題になっている異常気象をファンタジーで扱うのはどうかとも思う。自然科学については深く考えずに鑑賞しなければならない作品。
この監督特有のキリキリするような切なさは、薄め。リアルを極限まで神々しくする風景描写もは良かったけど、でもやっぱり「君の名は。」「言の葉の庭」ほどの感動はなかったかなあ。
ヒロインの弟君がたいへんたいへんイケメン(外も中身も)なのと、オッサンがいい味。

「誰もがそれを知っている」2019/06/22 06:47

イラン人監督が、スペインでスペイン人大物俳優を起用して撮った映画。
以前観たファルハディ監督の作品(「別離」「セールスマン」)はイランの都市を舞台にしていたのが、スペインの田舎町、それも不景気感漂う古い土地を持ってきた。
映像的には、ドローン使った結婚式の空撮が今風で、探偵マンガみたいにその映像の中に事件解決のヒントか何かあるのだろうと思っていたのだけど。
そういう、決定的なことには、ならない。
ペネロペ・クルス演じるヒロインには就学前くらいの男の子と高校生くらいの娘がいて、誘拐されるのはてっきり男児の方だと思って観ていたのに、予想に反してお転婆娘ちゃんが消えてしまった。犯人の狙いは何なのか、その秘密を知っている者が犯人だ!……でも、小さい村の中では、誰もがうすうすその秘密を知っていたのだった。
サスペンスの手法で物語を作りつつ、シェイクスピアを思わせる巧みな人物描写でゾクリとさせる。感じの良い和気藹々とした人々が、事件をきっかけにポロポロと不平不満を炙り出されてしまう、「イヤミス」の一種とも見える。
しかし、シェイクスピアほどのカタルシスはない。前に観た二作と比べても何か物足りない感じで、それは一体何なのか。
火を噴くようなバチバチの、ぶつかり合いかなあ?
ハビエル・バルデム演じるヒロインの元彼が、一方的に不条理に割を食ってしまう物語になってしまっていて、彼はもっとキレていいと思うのだけど「金より大事なことがあるさ」とでも言わんばかりに静かに受け入れてしまう。
狭い田舎社会で、大爆発は起こらず、「犯人はお前だ」と正面切って指摘されることもない。
でも、タイトル通りだとすれば、真実は「誰もがそれを知っている」ことになるのだろう。

「多十郎殉愛記」2019/05/17 23:09

主演が高良健吾くんでチャンバラメインの作品。ということで観に行った映画。
チャンバラと言っても、華麗な動きで鮮やかに切り倒す、ショーっぽいアクションではなくて、けっこう泥臭い。剣の達人設定とはいえ、ずっとニート生活で稽古もなんもやってない主人公なので、ぜいぜい息を切らしているほうがリアルではありますが。
ちょっと、盛り上げを効果音に頼りすぎる印象。
中島貞夫監督・脚本による人物描写には、何か、迫るものがありました。ある意味古い、パターン通りともいえるのだけど。
夢も希望もヤル気も無い男が絵筆をとって故郷の夏蜜柑を描いていたりしてモラトリアムな若者だ。おとよさんはしっかり者なのに情が厚すぎて惚れた男からの「頼れるのはお前だけ」という殺し文句に血迷う。多十郎の弟くんは甘ちゃん全開に都会に憧れて上京(京都)し、「お国のため」という流行にノリノリで。……時代は幕末なんだけど、容易に現代社会に変換できてしまうよ。
そして異様に雰囲気あったのが、役名も付いてないようなオッサンで。パンフレットによるとその昔「新選組血風録」で土方やってらした役者さんで、メッチャ納得。終盤にこんな渋い人登場させてしまったら若いメインキャストたちが相対的に軽くなっちゃって困るよ。

「散り椿」2018/11/10 16:44

しばらく前に見た映画。なのだけど、感想を述べにくい作品。面白い/詰らないの前に、「もったいないなあ」が出てくる。
木村大作監督は本職キャメラマンで、何気ないシーンでも完璧に美しい画に映す。雪も山も、素朴でいて静謐な日本の美。それなのに、肝心の散り椿、何故にあんな甘ったるい造花を作ったのか。文庫本やパンフレットの表紙に使われている速水雪舟の散り椿(重要文化財)はとても格好良いのに。少女マンガか結婚式場の装飾みたいな可愛らしい前で、親友同士が刃を交えるシリアス場面が、全然映えない。
この監督、変な甘さが入る。冒頭で主人公が暗い雪の中刺客を切って捨てる、そのすぐ後に奥さんとまるで新婚夫婦のようにベッタベタにイチャイチャ始めたり。
おかしい。原作が昨年逝去の葉室麟、脚本・小泉堯史、実力派俳優陣にこだわりのセット・ロケ撮影に、チャンバラもある、豪華時代劇なのに。もったいないなあ。

「時をかける少女」2018/07/22 15:15

2006年、劇場で観た時は、未来設定や何でここで時間止まるのか、とか気になったけど(あと、ボールの投げ方下手すぎ)、今にして思えば、言うだけヤボだった。
タイムリープを繰り返して都合の悪かったことを修正して新しい未来につなげる。トム・クルーズ主演のSF映画でもそんなのあったけど、男友達が告ってくるのを避けるためにタイムリープするのって斬新。
タイムリープ理由のくだらなさとか、巻き戻してやり直しても上手くいかない感じとか、いちいち「ジャンプ・突撃・転がる」しなきゃならないとか、ヒロインの頭悪い設定を存分に活かす。そしてまさかのシリアス展開。
改めて観ると、シナリオ構成上手いなあ。と思ったら、これは細田監督の脚本じゃないのですね。納得。他の作品はファミリードラマの傾向が強いのに、「時かけ」だけはファンタジー要素のあるジュブナイルだから。
片思いでも両思いでも、なんか甘酸っぱくて恥ずかしい感じ。
春から夏休み前まで。短いけど、かけがえのない、時間。