「犬王」2022/06/01 18:38

文・古川日出男(原作者)、絵・松本大洋(キャラクター原案)による「犬王御伽草子」。劇場特典でこういうの配布するのがアニメ映画の定番になってきている。


TVアニメ「平家物語」が面白かったので、同じ古川日出男原作・サイエンスSARU製作の「犬王」も期待していました。また、野木亜紀子のアニメ映画初脚本っていうのも興味津々だったのですが、パンフレットのインタビューではもの凄い難しかったとのこと。理詰めで物語る脚本家と、感覚的映像表現重視の湯浅監督とのせめぎ合い……
そういうわけで、台詞よりも大胆奇抜パフォーマンスで観客を引っ張っていく作品誕生。先月観た「xxxHOLiC」と同じ系統(アニメと実写の違いはあれど)でしょうが、「犬王」のほうが登場人物の心情を言葉で表すシーンがさらに少ないのです。
盲目の琵琶法師が異形の舞手と組んでビジュアル系ロックミュージカルを三条大橋でぶちかますお話。室町時代になってもいまだ怨念の晴れない平家の亡霊たちが、語り聞かせることによって成仏していく。一番の見どころである凝った仕掛けのライブパフォーマンス、この時代にこんなんアリか!?と違和感を持ってはいけない、映像資料が残っているわけでもないしやってやれないこともないだろうと受け入れなければ面白さがずいぶん違ってくるのでしょう。
犬王という実在した人物、熱狂的に流行った一座は権力者(足利義満)によって枷をはめられ、衰退し、歴史の流れの中に消えていきます。その無念の想いが晴れるまでの物語。